「(スカイダイビングで)墜落。病院に搬送されたが、約1時間後に全身を強く打って死亡した。」

 ある事故の記事である。

8日午後2時ごろ、和歌山県白浜町でスカイダイビングをしていた和歌山市の会社役員の男性(48)が同町日置の道の駅「志原海岸」の駐車場に墜落。病院に搬送されたが、約1時間後に全身を強く打って死亡した。


「約1時間後に全身を強く打って死亡した」の部分が引っかかる。

「全身を強く打った」のは、いつ、どこでか。

 まさか、病院に搬送されて1時間後に大地震が起き、病院が倒壊して、その下敷きになり、「全身を強く打って」死亡した、という訳では、あるまい。

 「全身を強く打った」原因としては、通常、「墜落」である。ということは、「墜落の時点」「墜落の現場」で「全身を強く打った」のであろう。そして、病院に搬送され、約1時間が経過し、1時間前の全身打撲が原因で死亡したのであろう。決して「1時間後」「病院」で「全身を打った」わけではなかろう。
 
とすると、本来の時系列では、こうなる。
  墜落
  全身打撲
  搬送
  1時間経過
  死亡

ところが、上記の記事は、「全身打撲」の位置を「死亡」の直前に変更した。
  墜落
  搬送
  1時間経過
  全身打撲
  死亡

 その心理も分からなくはない。

 「死亡」の原因は「全身打撲」であるから、この二つを直結させる方が死因が明確になり、より「分かりやすい」と考えたのだろう。

けれども、事実は、時の経過に沿って記すのが大原則である。

 そもそも、人が文章を読むという作業を行うとき、文章に書かれている内容を具体的にイメージしながら追体験をしているのである。事実は、時の経過に応じて生起するのであるから、追体験すべき事実が、現実に生じたとの違う順番で記載されていたら、混乱するのは、目に見えている。

 では、どう書けばいいのか。以下の4つの文章を見比べてほしい。

【1】 ・・・墜落。病院に搬送されたが、約1時間後に全身を強く打って死亡した。
【2】 ・・・墜落。病院に搬送されたが、全身を強く打って約1時間後に死亡した。
【3】 ・・・墜落。病院に搬送されたが、全身を強く打っており約1時間後に死亡した。
【4】 ・・・墜落。全身を強く打って病院に搬送されたが、約1時間後に死亡した。


 【1】は、冒頭の記事【「まとめるのん」 2018/04/08(日) 22:10:46.53】であり、上記に述べたとおりの問題がある。

 【2】は、【1】の記事からリンクされている産経の記事【産経 2018.4.8 21:28】である。全身打撲が、「1時間後」よりも前になって、その限りでは時系列の逆転は部分的に解消されているが、「搬送」の後に「全身打撲」が来て、この点での時系列の逆転は解消されていない。

 【3】は、「打って」を「打っており」と、病院に搬送される前に全身を打っていたことを明示している点で、文法上は時系列の逆転はない。

 けれども、「打って」まで読んだ時点では、「搬送→全身打撲」と思い込み、直後に、「おり」を読むことによって初めて「全身打撲→搬送」の順であることが理解できるのであるから、「分かりにくい」ことに変わりない。

 【4】は、時系列に沿って事実を記載したので、一番自然で、分かりやすい。


-- 【追記】 ----------------------------------------------------------------------

 不思議なのは、上記の【1】の記事中では、【2】の産経の記事にリンクが貼られていることから、【1】は【2】を引き写したものと考えられるにもかかわらず、「全身打撲」「1時間経過」の順番が両者で異なる点である。)

 【1】の時刻は、「22:10」で、【2】の時刻は、「21:18」であることからも、【1】が【2】を引き写したものと考えるのが自然である。

 とすると、両者の違いが生じた原因は、次の二つが考えられる。

  ・【2】をコピーして貼り付けたのではなく、自分でタイプしたので、間違った。
  ・【1】の筆者が、意図的に、順番をかえた。

 さらに穿った見方をすると、次のような可能性もある。

 もともとは、産経の記事も、【1】と同じだった。
 【1】の筆者は、その産経の記事をコピーをした上で、記事を書いていた。
 ところが、記事を書いている最中に、何らかの事情で、産経が記事の内容を書き換え、改めて、【2】を、ウェブサイトにアップした。
 その後、そのようなことはさ知らない【1】の筆者が、元の産経の記事の内容のまま、自分の記事をアップした。

 ここまで読まれた読者の方の中には、「よく、こんな、どうでもいいことを、あれこれと考えるな」という感想を持たれた方もいるかも知れない。

 確かに、上記の記事だけに限定して言えば、「どうでもいい」と言えるかもしれない。

 でも、「どうでもいい」と思われることでも、疑問に思ったことは徹底的に考えておくことが、将来、似たような状況で、「重大な問題」に直面したときに、何らかの役に立つかも知れないのである。

 SNS の発達で、ネット上で、孫引き、ひ孫引きの情報が飛び交う中で、情報の真偽、情報の意味を正確に把握することは、困難ではあるが、必要不可欠となっている。その際に、上記のような、「どうでもいい」ことを徹底して探求しておくことにより培われた「情報基礎体力」とでも言うべき能力が、役に立つはずである。






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 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

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