グラフを利用した印象操作

 法科大学院の相次ぐ廃止で、司法制度改革の失敗は覆い隠しようがないのだが、これを失敗と受け止めず、なんとか小手先の「改革」で乗り切ろうとする動きがある。

 その中核ともいえるのが法曹養成制度改革顧問会議なのだが、最高裁判所の審議官が会議に提出した資料を見て唖然とした。

 改革論議の前提として司法修習生の声を集約しているのだが、下記の設問に対する回答のグラフが、凄いのだ【第18回 法曹養成制度改革顧問会議】。

資料3-2 導入修習の実施結果について(最高裁判所) 最終頁

   導入修習のカリキュラムのうち,必要性を感じなかったもの,内容や構成が不十分と感じたものの有無



導入修習-1

 導入修習に満足していない者(赤色)は、数字の上では、14%、つまり、約7分の1なのだが、グラフ全体に占める赤色の面積は、10分の1にも満たないように見える。

 なぜ、そうなっているかというと、二つの理由がある。

   【1】 扇形の要の部分が楕円の中心ではなく、少し、上になっていること
   【2】 円柱の側面が、導入修習に満足している者を示す色と同じく、緑色に塗られていること

 こういった「騙しのテクニック」を使わずに、単純な円グラフで表現すると、次のようになる。

導入修習-2


 かりに、導入修習に対する不満が少なく見えるようにとの意図のもとに上記の円柱グラフを作成したのであれば、改革議論の前提となる事実認識をねじ曲げるものであり、許されることではない。

 仮に、そうだとすると、「働き方改革」の法案審議において杜撰な労働実態調査が利用されたことや、森友問題の国会審議の裏側で交渉記録が改竄されていたこと等にも通じるもので、司法も、ここまで堕落したのかと驚かざるを得ない。
 
 いや、仮にも裁判官である。事実をねじ曲げてまで議論を都合よく誘導するなど、ありえないことだろう。

 だが、そうだとすると、歪んだ円柱のグラフが真実をねじ曲げるものであることに気づいてないということになる。そんな人たちが、事実を認定して判決を書いているとすれば、それは、それで、問題である。

 なお、グラフを操作して印象をねじ曲げる手法については、以前のブログ【「分かりやすさ」と情報操作】にも書いたので、参照されたい。

-- 【追記】 ----------------------------------------------------------------------

 上に掲げた円柱のグラフについては、そもそも、質問自体にも、問題がある。

 「不必要・不十分と思ったもの」の存否を尋ねているのだが、不必要と思ったものはあるが、不十分と思ったものはない、という者(下記の表の【1】)や、その逆の者(表の【3】)は、どう答えればいいのだろうか。

導入修習-3


 そもそも、「不必要」であれば、既存の内容の削除を検討すべきであり、「不十分」であれば、既存の内容の充実を検討すべきである。このように、検討すべきことが全く逆方向であるのに、それを一緒くたにして質問をすることに、どれほどの意味があるのだろうか。

 たとえば、「醤油砂糖」で味付けした料理について、醤油や砂糖を、それぞれ増減すべきか否かを検討するのに、「辛過ぎたり、甘すぎたり、しましたか」という質問をしても、何の意味もないのと同じである。醤油の増減は、「辛かったか」という質問が必要だし、砂糖の増減には、これとは別に、「甘かったか」という質問が必要なのである。


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