弁護士の取扱業務

 各地の弁護士会では、市民が弁護士を利用しやすいように、所属会員のプロフィールをネットで公開している。中でも重要なのが、個々の弁護士の取扱業務である。

 取扱業務の表示方法は各弁護士会で様々なのだが、次に掲げる二つの弁護士会の表示方法を見比べて、どちらが分かりやすいか考えてほしい。

 ただ「考えてほしい」と言われても戸惑う人もいるかも知れないので、たとえば、次のような問題を相談できる弁護士を弁護士会のウェブサイトで調べる場合を想定してほしい。

  ① 夫のDVに悩まされており、弁護士に頼んで離婚をしたい。
  ② 交通事故で保険会社が提示した賠償額で示談をすべきか否かを相談したい。

 
業務

 
 まず、①のDVを理由に離婚したいという場合、A弁護士会の甲弁護士のプロフィールを見ると、取扱業務として「離婚・家族関係」と記されていたとする。早速、電話で予約をして甲弁護士のもとを訪ねた場合、こんなことも想定される。

 相談者:実は、夫のDVが酷くて、離婚をしたいんですけど。
 弁護士:申し訳ありませんが、私は、DV事件はしていないんです。
 相談者:ネットで見たプロフィールには離婚事件をやっていると書いてあったんですけど。
 弁護士:一般の離婚事件はやってますけど、DVに絡んだ事件はしていないんです。
 相談者:だったら、離婚事件とだけ書のじゃなくて「DVは除く」と書いくれていれば、無駄足を運ばずにすんだじゃないですか。
 弁護士:でも、DV事件をする人は「DV関係」と載せていて、私は「DV関係」と載せていないんですから、分かるはずじゃないですか。
 相談者:ほかの人のも見比べれば、分かるかも知れませんが、それって、不親切なんじゃないですか。

 これに対して、B弁護士会のような記載法であれば、「DV関係」には●が付いていないのだから、DV事件をやらないことは、誤解の余地なく、分かることである。

 次は、②の交通事故の相談をする場合である。

 A弁護士会の方は、ずらっと並んでいる取扱業務を最後まで一つずつ確認して、「交通事故」という記載がないことを確かめないと、その弁護士が交通事故を取り扱っていないことは分からない。

 他方、B弁護士会の方は、「交通事故」の欄に●が付いていないのを見れば、交通事故を扱っていないことが分かる。

 一般に何かが「ない」ということを確認するのは、大変である。

 例えば、試験の合格発表でも、ぱっと見て自分の番号が見つからなかったとしても、何度も見なければ不合格だということに確信が持てず、見落としではないかと気になってしまう。

 もし、番号の前に〇や×の記号をつけるという方法で発表してくれれば、一度見ただけで、納得できるだろう(「分かりやすさ」の点では、そのとおりなのだが、実際に、こんな方式がとられていないのは、不合格という事実をあからさまに突きつけるのは気の毒だ、という配慮かも知れない)。

 さらに、こんなことも考えられる。

 19歳の息子が逮捕されたので弁護士に相談しようと考えた人は、A弁護士会の記載例だと、取扱業務に「刑事事件」とあれば、当然、その弁護士に相談にのってもらえると思うだろう。

 刑事事件と少年事件を分けて、単に刑事事件という場合は少年事件は除くのだ、というのは、弁護士側の論理であって、一般の人に、それを押しつけても始まらない。

 B弁護士会のように、「刑事事件」のすぐ下に「少年事件」とあれば、「刑事事件」というのは、成人の刑事事件に限るということを理解してもらえるだろう。より明確にするには、「刑事事件(成人)」「刑事事件(少年)」という記載がいい。

 以上の三つの例を見れば、B弁護士会の方が市民に優しい弁護士会と言えるのは明らかだろう。

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