夫婦同姓の強制を続けますか

【1】 夫婦同姓の強制を継続するのか

 民法の規定では、法律上の結婚(法律用語としては「婚姻」)をする際、夫か妻のいずれかは、相手方の姓に変更しなければならない。

 確かに、一方では、結婚して夫の姓を名乗ることによって、結婚したんだということを実感し、幸せを感じる人々も多数いることだろうし、そういった人々にとっては、この民法の規定は、全く自然なことである。

 けれども、誰にとっても自然なことである、とは言いがたい。

 結婚で名前が変わると、パスポートや運転免許証の書き換えをはじめとして、社会生活を継続する上で多大な負担が生じることになる。

 また、一人っ子同士が結婚する場合は、姓を変更した一方の配偶者の姓はなくなるのであるから、代々続いた家の名前は、それで途絶えてしまうわけであり、「家」に愛着を持つ人にとっては耐えがたいことだろう。

 また、何年にもわたって●●さんと呼ばれて来たのが、別の名前になることによって、アイデンティティーが喪失したように感じる人々もいる。

 そんなことから、選択的夫婦別姓制度の導入を求める声が強くなり、20数年前には、法制化の一歩手前まで行ったのだが、結局、実現しないまま、四半世紀が経過しようとしている。

 「夫婦別姓」といっても、別姓を強制するわけではなく、あくまでも、「選択的」「夫婦別姓」なのであるが、同姓が好いと思っている人には、自分たちの考え方が否定されるような印象があるため、「選択的」と言われても、抵抗があるようだ。

 そうであれば、この際、呼び名を変えてみるのも一法である。
 
 「夫婦同姓強制制度の廃止」

 「強制」を「廃止」するのである。異論のあろうはずはない。

 選択的夫婦別姓推進派は、今日限り、これまでの「夫婦別姓」という用語を捨て、「夫婦同姓強制の廃止」をスローガンに掲げるべきである。


【2】 ねじれの解消

 2013年の参院選挙のときの話である。

 2012年末に自民党が衆議院で過半数を制し、政権を奪還した。

 ところが、参議院では自民公明の与党は少数派であり、そのため法案がスムーズに通らないといった事態が生じていた。

 そこで、参院選挙の時に与党が提起した争点が「衆参ねじれの解消」である。

 「ねじれ」と言われると、誰でも、いい印象は持たないであろう。それを「解消」するというのであるから、賛成と言いたくなってしまうのだろう。

 けれども、衆議院のほかに参議院があるのは、民主主義が万全でないという歴史的経験を踏まえて、衆議院の暴走を参議院が阻止することが期待されているのである。だからこそ、民主主義国家では広く二院制が採用され、一院制を採用しているのは、中国のような一握りの国家に過ぎないのである。

 そう考えると、「ねじれ」こそ、本来の姿であるといえるのである。野党は、「与党の暴走の防波堤をなくしてよいのか」という問題提起をしなければならなかったのである。


【3】 直間比率の是正

 30年近く前の話である。

 消費税の導入が争点となっていたが、その当時、盛んに聞かされたのが、「直間比率の是正」である。

 所得税は、所得が高額になるに従って税率が高くなる、という、累進税率が常識だが、累進税率は、以下の点で優れていることは疑いようがない。

 ① 能力に応じた税負担という税制の基本原理に合致している。
 ② 低所得者の税負担を緩和することにより、格差が是正され、安定した社会が維持される。
 ③ 低所得者ほど、収入を消費に振り向ける割合が高いことから、低所得者の税負担の軽減は、消費の拡大に直結し、経済成長が見込まれる。

 他方、消費税の税率は、高額所得者も低所得者も同じで、一律(当時、検討されていたのは、3%)である。

 表面上は「一律」とは言っても、実際は、そうではない。低所得者は、収入が全て消費に回るとして、収入の3%の税負担となるが、高所得者は、例えば収入の8割しか消費に回らないとすると、税負担は収入の2.4%となり、「逆累進課税」となる。

 上記①②③の利点を投げ捨てて消費税を導入するのであるから、「大義名分」が必要だった。

 それが、「直間比率の是正」である。

 要するに、我が国の税金は、所得税などの直接税が圧倒的な割合を占め、直接税と間接税の割合が「不均衡」であるから、間接税である消費税を導入することにより、その「不均衡」を是正しなければならない、というものである。

 だれでも、「不均衡」と言われれば、反射的に「是正しなければならない」と思うだろう。

 かくして、消費税が導入され、今日に至っているのである。


【4】 まとめ

 これまで見てきたように、人々は、多くの場合、物事の本質を見て判断するのではなく、表面的な言葉の持つ印象に基づいて判断しているのである。

 だからこそ、言葉の選択は、社会を動かす上で、死活的に重要な事柄なのである。

 反面、安易に世の風潮に流されないためには、用いられた言葉の背後に潜む、実質的な内容に目を向けなければならないのである。このブログは、そのための、訓練の素材である。


 このブログを書いたのは、井戸まさえ氏の【山尾志桜里と高市早苗から考える、実は深い「夫婦別氏」問題】で、「夫婦同氏」問題という表現が用いられていたことが、きっかけである。

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