割合の単純比較は、危険

 今朝のテレビで、また、「論理の飛躍」としか言いようのない番組があった。

 どの局の何という番組かも覚えていないのだが、シートベルト着用を呼びかける番組だった。

 その中で、こんな円グラフが出ていた(一瞬の記憶に基づく再現なので、数字は、若干、不正確である。また、デザインも若干、変更している。)

 交通事故の死亡者の中で、シートベルトを着用していた人と、着用していなかった人の割合を円グラフで表現したものである。

ベルト-1


 このグラフを見て、着用・25%、不着用・70%という数字から、シートベルトを着けないと、3倍も危険なのだ、と思った人は、番組の狙い通りである。

 でも、その判断は、正しいのだろうか。

 検証のため、こんな例を想定してみよう。

 ① 事故に遭った人が、全部で、100人
 そのうち、
   ② 着用者が、10人
   ③ 不着用者が、85人
   ④ 不明が、5人

 ⑤ 事故で亡くなった人が、全部で、20人
 そのうち、
   ⑥ 着用者が、5人
   ⑦ 不着用者が、14人
   ⑧ 不明が、1人

 そこで、①~⑧の情報の全てを図にすると、以下の図になり、⑤~⑧の情報だけを円グラフにすると、冒頭の円グラフとなる。


(小さい正方形1個が、1人である)
ベルト-3


 亡くなった人の中での着用者、不着用者の割合を比較したのが、冒頭の円グラフであり、また、百個の正方形からなる上の図の下2段の部分である。

 けれども、亡くなった人の中での着用者、不着用者の割合を比較しても何の意味もない。

 日本国内の全犯罪者に占める暴力団員と一般人の割合を比べると、一般人の割合の方が大きいのは常識で分かることである。けれども、一般人は暴力団員よりも犯罪を起こしやすい、という結論にはならない。

 比較すべきは、暴力団員のうちの犯罪者の割合と、一般人のうちの犯罪者の割合なのである。

 シートベルト着用の安全性の問題も同じであり、意味のあるのは、下記の数字である。

 ⑨ 着用者のうち、亡くなった人の割合は、50% 【 5÷10×100 】 
 ⑩ 不着用者のうち、亡くなった人の割合は、16.5% 【 14÷85×100 】

 結局、 着用者、不着用者、それぞれの死亡率を比べると、着用者は不着用者の3倍ということになる。
       【 ⑨÷⑩ = 50÷16.5 = 3.04 】 

 そもそも、最初のグラフの情報だけで、シートベルトの不着用が危険だという結論を下すことは、「論理的に不可能」なのである。

 にもかかわらず、死亡者に関する情報(上の大きな正方形の下2行)だけを根拠に、シートベルト不着用が危険だという判断を示したのが、この番組である。

 番組製作者は、こんなことも分からないほど、論理的思考力がないのだろうか。

 あるいは、そんなことは十分承知の上で、視聴者に、シートベルトを着用しないと危険だと感じてもらうために、あえて、このグラフを掲載したのだろうか。だとすれば、視聴者もバカにされたものだが、残念ながら、視聴者のレベルは、その程度なのかもしれない。

 ところで、上のグラフは、エクセルで作成したものだが、エクセルのグラフ機能で単に円グラフを選択した場合、自動生成されたのは、次のグラフだった。

ベルト-2

 このグラフを自分で加工したのが最初のグラフである。

 作成にあたって、次のことに留意したので、その意味をかみしてめてほしい。

 ● 「凡例」をグラフと重ねて、一々、グラフと凡例の間を視線が行き来しなくてもすむようにする。
 ● 数字を記載する。
 ● グラフの色を鮮明なものにし、「不着用」を赤にして、危険を強調する。


  
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