情報の「説得力」

 今回も、先日のブログ【伝達力と説得力】に関連した話である。

 その中に、以下の記述がある。
 

③も④も一票の価値を数字の大きさで表現した点では同じだが、鳥取県の1票の価値が高すぎる(③)、と訴えるよりも、神奈川県の1票の価値が低過ぎる(④)、と訴える方が、何となく説得力がある


 私は、「何となく説得力がある」としか書かなかったのだが、一人一票運動国民会議の発起人・事務局長である伊藤真弁護士が、その「何となく」の部分を、具体的に説明してくれている。少し長くなるが、以下に引用する。
 

 升永先生、久保利先生たちとお話をするなかで強く感じたのは、一人一票実現国民会議の活動のなかから今までの法律の世界では想像もできなかった「発明」がいくつも生まれているなということでした。

 その一つが、従来の「5倍の格差」ではなくて「0.2票しかない」という表現に置き換えながら、広く国民の皆さんにアピールしていることです。

 前者の表現ですと、「神奈川の有権者が1票なのに対して、鳥取の有権者は5票持っているのか。鳥取の人は得しているな」と、どこか他人事として捉えがちです。しかし、「鳥取の有権者は1票、神奈川の有権者は0.2票。」となると、「えっ、1票と思っていたものが、0.2票だなんておかいじゃないか。ところで自分の選挙区の票はどうなっているのか……」と、我が事として認識するようになります。

 数学的には同じことなのですが、全国民の意識をこの問題に向けさせる「大発明」だと、目から鱗が落ちる思いでした。

 実はその大発明は、私自身の誤りを気づかせるきっかけにもなしました。それまで私は「2倍未満の格差なら許される」という憲法学の通説を講義で当たり前のように教えていました。しかし、これは「2倍未満、つまり0.51票なら認めましょう」ということと同じです。人間誰しも人格価値は平等であるということに異論を持つ人はいないでしょう。それなら一人ひとりの投票価値も平等でなくてはなりません。
            【一人一票実現国民会議×弁護士ドットコム


 伊藤弁護士は、「大発明」と称賛しているが、その発明が生まれた経緯について、発起人・共同代表の升永英俊弁護士が、こう語っている。

 私は昨年まで、自分が「清き一票」を持っていると信じていました。20歳から66歳までだから46年間ずっとです。
もちろん、「一票の格差」があることは知っていました。しかし、それはそれとして、自分は「清き一票」を持っていると思い込んでいた。

 ところが、昨年5月に友人と話している時、彼が「『2倍』では素人には分からない。『0.5票』と言ってもらえれば分かる」と言った。
「そんなの、同じことだろう。1を2で割れば0.5だ。自分で割り算をやればいいだけじゃないか」と私は友人に言ったのですが、その話が妙に頭に残りましてね。2日間、考えました。考えた末に、これは大変なことだと思った。

 「そうか、自分は1票を持っていないのだ。0.5票しか持っていないのか」って。

 たとえば、衆院選(小選挙区)で、高知3区を1票とした場合、東京1区は「0.47票」、参院選(選挙区)で、鳥取県を1票とした場合、「0.23票」です。
                     【一人一票実現国民会議×弁護士ドットコム


 友人に指摘された時、升永弁護士は、 「そんなの、同じことだろう。1を2で割れば0.5だ。自分で割り算をやればいいだけじゃないか」と言ったそうだが、私自身も、何かを説明する文章を書くとき、つい、同じような思いになることがある。

 だが、「数学的に同じ」「計算すれば分かる」「考えれば分かる」という態度では、現実的な力は乏しいのである。

 単に情報を伝達するだけでなく、情報を相手の脳裏に深く刻みつけようと考えるなら、そのための工夫を惜しんではならないのである。

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