実務に理解の深い教員の養成は急務なのだが・・・

 法科大学院制度ができて、実務にも詳しい研究者教員の養成が叫ばれているが、なかなか、うまくいっていないそうである。このため、これまでも多くの研究者教員を輩出してきた大学院では、実務にも詳しい研究者教員の養成について、真剣に検討が行われている。

 ウェブサイトを見ると、現状分析と今後の展望に関し、プレゼン用ソフトで作成したと思しき9頁の資料が掲載されている。

 ところが、残念なことに、この資料が、これまで、このブログで取り上げてきた問題点を総取りしたような、突っ込みどころ満載の代物なのである。まずは、説明の前に、実際の資料を見ていただこう。

京大養成-1


【1】 総天然色

 これを目にしたとき、頭がくらくらした。と同時に、モノクロ映画がカラーに切り替わった昭和30年代の映画のポスターに誇らしげに記されていた「総天然色」という言葉を、何十年かぶりに思い出した。

 確かに、プレゼンソフトであれ、ワープロソフトであれ、ありとあらゆる種類の色を表現することは可能である。けれども、「可能である」からと言って、それを実際に行う必要はない。

 これでは、まるで、24色のクレパスを買ってもらって、嬉しくて仕方なく、24本、全部を使って大はしゃぎで絵を描く幼稚園児と同じではないか。

【2】 雲形、ウニ形、人の顔

 1枚の資料の、あちこちに書かれた説明文を際立たせるために長方形などで囲むのは、効果的である。

 けれども、雲形、ウニ形で囲むのは、いかがなものか。

 ことさら奇抜な図形を用いても、図形の印象は残るかも知れないが、図形の印象が強い分だけ、内容の理解、記憶の妨げになり、逆効果である。 

 作者は、おそらく、プレゼンソフトが用意した図形の中から目立ちそうなものを選んで使ったのだろう。

 けれども、そんなことをするのは、たとえば、長距離ミサイルを手にしたら発射して自慢したくなるのと精神構造は同じである、と言ったら、言い過ぎか?

 あと、左下のスマイルマークのような人の顔の図形も、有害無益である。

 もう一つ、別の頁を見ていただこう。

京大養成-2


【3】 日本地図

 中央に黄緑色の日本列島の地図が描かれている。

 その地図の沿岸部を囲うように、深緑色の図形が描かれている。東日本大震災のときの、津波予報の図を思い出したのだが、さすがに、それはないだろう。

 しばらく目を凝らしているうちに、深緑色の図も、やはり日本列島の地図であり、それが背景に配置されている結果、手前の地図で分断されて、日本列島だと分かりにくいのだと気がついた。

 けれども、背景に日本列島の地図を重ねる必然性など、どこにもない。かえって混乱するだけである。


【4】 今の頁は、何頁?

 資料は全部で9頁あり、下の方には、「1 2 3 ・・・ 9」と数字が並んおり、数字をクリックして、その頁に飛べるようになっている。

 けれども、その数字は、全部、同じ色、同じ大きさ、同じ背景であり、いま見ている頁が何頁なのかは分からない。

 よく見ると、右下に(赤い矢印の先)、数字の「5」のようなものが見える。けれども、こんな小さな文字では、そこに文字が書かれていることさえ、気がつかれない。

 せっかく、下に、数字の1から9までを並べているのだから、今の頁の番号の色や大きさ、背景を変えるなどすれば、それだけで、いま何頁なのか分かるのである。

【5】 資料を作成した大学は?

 どこの大学が資料を作成したのかは、資料の冒頭に記載しておけば十分であり、各頁に記載するまでもない。

 とはいえ、中身の各頁に大学名を記載してアピールしたい、というのであれば、それも一つの考え方であろうし、はたから、とやかく言うまでもない。

 資料の右上の、赤い点線の長方形の所には、別の頁では大学名が入っているのだが、この頁だけ、大学名が入っていないのである。別に大学名はなくても困らないのであるが、他の頁には皆、大学名が入っていることから、一瞬、なぜだろうという疑問が生じるのである。

 別に、どっちでもいい話なのだが、こういった不統一感は、資料の読み手に、僅かではあるが、ストレスを感じさせるものである。

 また、それだけでなく、こういった不統一感があると、作成者の注意力、思考の厳密性などにも若干の疑念をもたれ、内容の信頼性にも不安を覚えさせることにもなる。

 なお、「不統一」という点では、実は、一つ前の【4】の最終段落に、次のような「不統一」な表現がある。
  ・ 今の頁の番号の色
  ・ いま何頁なのか

 同じ対象を、漢字、ひらがな、と異なった表現をしているのである。
 
 だが、これは、無頓着に「不統一」にしているのではない。例えば、漢字、ひらがなを逆にするとどうなるか?
  ・ いまの頁の番号の色
  ・ 今何頁なのか

 つまり、ひらがなが続いたり、漢字が続いたりすると、単語の切れ目が分かりにくくなるため、そうならないように、あるときは、漢字、あるときは、ひらがな、と表現して、「結果的」に「不統一」になっているのである。

 要するに、「不統一を避ける」というのも、絶対的なものではなく、それよりも、読みやすさを優先すべきだということである。


 今回の様々な指摘に関連したことは、これまでも書いているので、それらの記事も参照されたい。
 ● フォントの話
 ● 現在の頁は?
 ● 表記のゆらぎ 
 ● あざいお市マラソン

 このブログの素材となったのは、以下のウェブサイトである。
 ● 法科大学院制度下における教員養成

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 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

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