A氏にお支払いいただくことになります
依頼者に対して先方から支払をすると言う損害賠償額の明細の下の方に、相手方(A氏)に生じた物損について、次のような記載があった。
A氏にお支払いいただくことになります
一瞬の疑問というのは、A氏が支払ってくれるというのか、というものだった。
物損がどちらに生じたのか、ということについて、あまり意識していなかったために、この一文を読んだときに、A氏の任意保険が人損のみで物損をカバーしていないので、人損については保険会社から支払うが、物損については、加害者であるA氏から支払ってもらう、という意味かと思った。
だが、よく見ると、物損は、A氏の車に生じた物損である。だったら、支払をするのは、依頼者の側である。
であれば、次のように書けば誤解の隙はなくなる。
●●様からA氏に対してお支払いいただくことになります
結局、助詞の「に」が多義的なことによる誤解だったのだが、「の」や「へ」や「が」という助詞は、便利ではあるが、多義的なので、つい無頓着に使ってしまい勝ちである。
助詞が多義的であることは、【東京外大 文法モジュール 格助詞】を見ればよく分かる。
「に」だけでも、実に多様な意味がある。だからこそ、無頓着に使うと思わぬ誤解を生むのである。
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