グラデーションのフェイント
今朝の京都新聞の記事だが、去年の国勢調査に基づく都道府県別の人口増減が地図で表示されていた。
せっかく情報を図解しているのに、分かりにくい。その原因を考えてみよう。
人口減の県を3グループにわけ、減少率の大きいものから、順に、濃い灰色、薄い灰色、白に近い灰色と、色分けされている。この流れで来ると、人口増の県は、真っ白、というのが自然であるが、予想に反して、実際は、黒になっている。
記者の頭の中では、減少率の大小と灰色の濃淡を対応させたものの、人口増は、「人が密集している」というイメージから「黒」を用いてしまったのだろう。
しかし、人口増の県に「黒」が相応しいのであれば、わずかに減少しただけの県は、「黒」より少し薄く、すなわち、「濃い灰色」にするのが自然だろう。そして、人口減が大きくなるにつれて、その灰色を薄くして行く、というのが自然の流れである。
そのように表示されていれば、地図を見たとき、増加しているのが南関東ほか数県、減少が小幅に止まっているのが瀬戸内海の北側ほか数県という、大きな傾向が、より、理解しやすいのである。
ところが、この地図ような色分けだと、南関東と瀬戸内沿岸とが人口増減に関して対称的な動きをしているかのような誤ったイメージを植え付けてしまうのである。
この図では、薄い灰色からの凡例(人口増減の区分と色分けの対応を示した表)では、人口減少が大きいものを上に、人口増のものを下に表示しており、この点でも直感的な上下関係と相反している。「増加」の方が肯定的なイメージがあるのだから、「増加」を上に持ってくるのが自然なのである。
この図で、人口増の県は「黒」と書いたが、厳密には、「黒」よりも若干薄い。分かりやすく、真っ黒を、100、真っ白を、0(ゼロ)とした場合、この図で使われている黒の濃さを数値で表せば、80、60、40、20と行ったところである。他方、両極を真っ黒と真っ白にすれば、100、67、33、0、となり、それぞれの色の数値の差は、20だったのが33となり、見た目で、容易に区別できるようになる。
特に、香川県のように面積が狭い県だと、色の濃さを的確に認識することは困難なので、40か60か、という判断は困難であるが、33か67かということであれば、面積が狭くても、識別は、さほど困難ではない。
同じく、東京都の場合も、80か60かという識別は困難だが、100か67かということは、容易に判断できる。
以上で指摘した問題点を解消したのが、次の図で、人口増加県が真っ黒で、減少率が大きくなるほど、色が薄くなり、減少率が最大の県は真っ白になっており、上の図と比べて、各段に理解しやすくなっている。
くどいようだが、元の図と改善例とを並べて表示するので、どれだけ分かりやすくなったのかを比較してみてほしい。
せっかく情報を図解しているのに、分かりにくい。その原因を考えてみよう。
【1】グラデーションのフェイント
人口減の県を3グループにわけ、減少率の大きいものから、順に、濃い灰色、薄い灰色、白に近い灰色と、色分けされている。この流れで来ると、人口増の県は、真っ白、というのが自然であるが、予想に反して、実際は、黒になっている。
記者の頭の中では、減少率の大小と灰色の濃淡を対応させたものの、人口増は、「人が密集している」というイメージから「黒」を用いてしまったのだろう。
しかし、人口増の県に「黒」が相応しいのであれば、わずかに減少しただけの県は、「黒」より少し薄く、すなわち、「濃い灰色」にするのが自然だろう。そして、人口減が大きくなるにつれて、その灰色を薄くして行く、というのが自然の流れである。
そのように表示されていれば、地図を見たとき、増加しているのが南関東ほか数県、減少が小幅に止まっているのが瀬戸内海の北側ほか数県という、大きな傾向が、より、理解しやすいのである。
ところが、この地図ような色分けだと、南関東と瀬戸内沿岸とが人口増減に関して対称的な動きをしているかのような誤ったイメージを植え付けてしまうのである。
【2】減少が大きいものが上になっている
この図では、薄い灰色からの凡例(人口増減の区分と色分けの対応を示した表)では、人口減少が大きいものを上に、人口増のものを下に表示しており、この点でも直感的な上下関係と相反している。「増加」の方が肯定的なイメージがあるのだから、「増加」を上に持ってくるのが自然なのである。
【3】グラデーションの範囲が狭い
この図で、人口増の県は「黒」と書いたが、厳密には、「黒」よりも若干薄い。分かりやすく、真っ黒を、100、真っ白を、0(ゼロ)とした場合、この図で使われている黒の濃さを数値で表せば、80、60、40、20と行ったところである。他方、両極を真っ黒と真っ白にすれば、100、67、33、0、となり、それぞれの色の数値の差は、20だったのが33となり、見た目で、容易に区別できるようになる。
特に、香川県のように面積が狭い県だと、色の濃さを的確に認識することは困難なので、40か60か、という判断は困難であるが、33か67かということであれば、面積が狭くても、識別は、さほど困難ではない。
同じく、東京都の場合も、80か60かという識別は困難だが、100か67かということは、容易に判断できる。
以上で指摘した問題点を解消したのが、次の図で、人口増加県が真っ黒で、減少率が大きくなるほど、色が薄くなり、減少率が最大の県は真っ白になっており、上の図と比べて、各段に理解しやすくなっている。
くどいようだが、元の図と改善例とを並べて表示するので、どれだけ分かりやすくなったのかを比較してみてほしい。
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