解説図(徘徊事故 最高裁判決)を比較する

 昨日、最高裁判決が出た事件だが、認知症の老人が線路内に侵入して電車にはねられ、事故対応に要した費用の賠償を鉄道会社が老人の妻と長男に求めたという訴訟の件である。

 京都新聞、朝日新聞、それぞれが朝刊の一面で、関係者の親族関係や各裁判所の判断を図解していたので、「分かりやすさ」という観点から、両紙の図を比較検討してみた。

徘徊事故


 まず、【表の有無】である。

 地裁、高裁、最高裁という系列と、妻、長男という系列の情報があり、その組合せとしての二次元情報を伝えるのであるから、京都新聞のように、二次元の図表で表現する方が、各段に分かりやすい。この点は、以前のブログ【証拠説明書は、表に限る】でも説明したとおりである。

 次に、【色分け】である。

 京都新聞の場合、人を表す図の女性は赤、男性は青となっており、また、責任の有無については、「有」が赤、「無」が青となっており、感覚的にも理解しやすい。

 性による固定的な区別を助長すべきでないという「ジェンダーフリー」の観点から、女性は赤と決めつけるのはよくないとの意見もあるかも知れないが、「分かりやすさ」には、替えられない。

 固定観念が「分かりやすさ」に繋がるのであり、たとえば、女性用トイレは、スカートを穿いた人を赤で表示するというように、まさに固定観念に依存しているのだが、この固定観念を利用しなければ、図で表示することは不可能になる。

 次は、【夫婦の位置】である。

 一般的な家系図では、夫が右、妻が左に書かれているので、朝日のように左右が逆に書かれていると、ごくわずかではあるが、読み手のストレスになり、勘違いを誘発する可能性がある。

 その次は、【JR東海の図】である。
 
 京都の場合は、単に角が丸くなった長方形の背景に文字が書かれているに過ぎないが、朝日の場合、オフィスビルの図が描かれている。

 この図によって、社会的弱者である認知症の夫を抱えた妻に損害賠償を求めたのが、名だたる大企業であるという構図が、鮮明に印象づけられるという効果がある。

 ただ、たまたま、今回の場合、原告が大企業だったのであるが、認知症の老人が第三者に損害を与えた場合の家族の責任というのは、こういう場合に限らない。

 仮に、今回の事故が、認知症の男性が単独で線路に入ったのではなく、たまたま近くにいた幼児の手を引いて線路に入り、幼児も一緒に電車にはねられて、幼児の遺族が老人の妻や長男に対して損害賠償請求訴訟を提起した、という場合だったら、どうであろうか。

 今回の最高裁の判決には、多くの人が賛同するであろうが、最高裁の理論では、原告が幼児の遺族であっても同じ結論になるのであり、その場合でも、世論は支持するだろうか。

 そういうことを考えると、本件で、原告が大企業であると言うことを、ことさら印象づけるのは、問題があるのではないだろうか。

 次は、【長男の妻の表示】である。

 京都は、単に「妻」、朝日は、「長男の妻」と表示している。

 確かに「長男」からすれば、「妻」であるが、死亡した男性からすると、「長男の妻」である。本件のように関係者が複数出てくるときは、親族関係については、「誰から見るのか」という視点を固定しておかないと、混乱を招くことになる。その点で、死亡した男性の視点で統一して、「長男の妻」とするのが優れている。

 次は、【居住地の記載】である。

 長男が事件当時に横浜に居住していたことは両紙とも書いてあるが、亡くなった男性が愛知県在住だったということは、京都新聞には書かれていない。しかし、これでは、長男が遠隔地に住んでいたということは分からない。

 最後に、【長男の妻が誰の介護のために転居したかの記載】である。

 朝日は、亡くなった男性の介護のためと明示しているのだが、京都は、単に「介護のため」としか書かれていない。記事には、亡くなった男性の妻も要介護1の状態であったことが書かれているため、長男の妻は、亡くなった男性の妻を介護するため転居したという誤解を与えかねない。

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