駐車場から事務所まで、58メートルです

駐車場から事務所まで、58メートルです。


 とある事務所のホームページの記載だが、「分かりやすさ」と言う点では、何の問題もないような一文である。

 だが、どこか、引っかかる。引っかかるのは、「58メートル」という数字である。かりに、これが、「58.37メートル」なら、誰でも、おかしいと思うだろう。

 要するに、駐車場と事務所の距離を表示するのは、来訪者に、およその目処をつけてもらうためである。その目的からすれば、「60メートル」で十分である。それ以上に細かい数字は、意味がない。意味がない以上、ないほうがよい。

 多重債務の相談を受けるときに、真っ先に聞くのは、借金の額である。これなども、相談者によっては、1円単位まで細かく答える人がいるが、これも無駄な情報である。聞く側からすれば、10万単位くらいの大まかな数字で十分である。最初の相談の段階では、これ以上の細かい数字を聞いたところで、余り意味がない。でも、相談者は、「少しでも正確に」と言う意識が働くため、必要以上に細かな数字を答えるのだ。

 いつ頃からの借金か、ということも、平成何年の何月何日というところまで、答える人もいるが、これも、聞く側からすれば、無用に詳しい情報である。せいぜい、2,3年前、4,5年前、あるいは、10年くらい前、という情報で十分である。

 要するに、最初の段階で弁護士が尋ねるのは、ざっくり、任意整理できそうか、あるいは、破産しか選択の余地がなさそうか、という判断をするためである。もちろん、最終的な判断は、債権者からの取引履歴の開示を受けて利息制限法計算をしてからということになる。だから、相談の段階で相談者からいくら詳しい数字を聞いたところで、それをそのまま前提とするわけにはいかないのであり、いずれにせよ、無駄な情報ということになる。

 とはいえ、無駄な情報だからといって、相談者が話そうとしているの遮ってしまうのは禁物である。そんなことをしたら、相談者には、弁護士が話を聞いてくれないという不満が鬱積するだけである。それだけではない。当面は「無駄」であっても、将来的には「必要」な情報になる可能性も否定はできない。

 このように当面は不要な情報を相談者が伝えようとしたときは、「よく細かい数字まで整理されていますね」と敬意を払った上で、微妙なバランスを取りながら、真に必要な情報を依頼者から聞き出すことが求められるのである。

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 弁護士として、どうすれば、効率よく、的確に、情報を取得・提供できるか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

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