図面から現場を想像する

 昨日の【エレベーターに関する基本情報】の左側のエレベーターの図を、もう一度、見てほしい。

会館-1

 エレベーターの籠の部分をよく見てほしい。何か、おかしくないだろうか。

会館-3

 ご覧のとおり、エレベーターの出入り口の横幅が、エレベーター籠の横幅の半分にも満たないのだ。こんなエレベーターは見たことがない。

 作成者のミスとしか考えられない。それにしても、多少なりとも想像力があれば、こんな図面は描けないのではないだろうか。

 私が、この間違いに気づいたのは、昨日の記事を、もう一度、見直していたときだ。

 図面を見て、その図面が表現している現場を頭の中で具体的に描いたのだ。そうすると、何とも奇妙なエレベーターだということが実感として分かったのである。

 文字や図面を見たとき、ややもすれば、その表面だけで理解しがちであるが、文字や図面は、結局は、現実世界を表現するための手段にすぎないのである。だから、文字や図面から現実世界を頭の中で徹底的に再現することによって、初めて、本当の理解ができるのだ。

 上に書いたことは、的確に表現できているとは言いがたいので、近いうちに、改めて、丁寧に分かりやすく説明しようと思う。

 

エレベーターに関する基本情報

 下の図面は、ある施設のフロアガイドの一部だ。

会館-1   会館-2

 
 左側のエレベーターの説明で「170名」とあるのに驚いた。

 一度に大量の来場者を捌くために、こんなに大きなエレベーターを設置しているのかと思った。

 だが、普通は大きくても10数人である。その10倍というのだから、よほど大きいのだろうと、これまで体験した、あちこちのエレベーターを思い浮かべているうちに、後ろに「1150Kg」とあるのが目に入った。

 ということは、「17名」の間違いということだろう。「横95cm」とあることからも、そうとしか考えられない。

 次に、右側のエレベーターをみてほしい。「搬入口用」となっている。

 おそらく、大型の楽器や什器を搬入するのに利用されるのだろう。病院のエレベーターでも、ベッドのまま患者を運べるように、奥行きが通常の倍くらいある。

 そこで、このエレベーターの大きさを確認したのだが、「高さ2m×横95cm」としか書かれていない。

 奥行きが分からなければ、どれくらいの大きさの物を搬入できるのか分からない。「搬入口用」と書きながら、もっとも重要な情報が欠落しているのだ。

 さらに、「高さ」「横」というのも曖昧だ。エレベーターの出入り口の大きさなのか、エレベーターの箱そのものの大きさなのか判然としない。これでは、どれだけの大きさの物を搬入できるか分からない。

 利用者の便宜のために情報提供しているはずなのに、肝心な情報が抜けていたのでは、意味がない。

 定員「170名」の間違いといい、情報の欠落といい、一人の作業であれば、間違いもありうるだろう。

 けれども、作成者自身がネットにアップした後に、もう一度見るとか、あるいは、事前に別の人がチェックするなどすれば、絶対に防げる問題である。

 裏を返せば、一人の人が作成し、それっきり、ということだろう。


----- 追記 -------------------------------------------------------------------

 ここでは、「エレベーター」と書いたが、以前の【エレベータの開閉ボタン】【エレベータの階数ボタン】では、「エレベータ」と書いている。

 どちらを使うべきかについては、【NHK放送文化研究所 「エレベーター」「コンピューター」の表記】にあるとおり、かなり微妙な問題である。

 そんなこともあって、今回は、「エレベーター」と記載した。

 「不統一」ではあるが、同一記事内での不統一ではないので、特別に気にすることもないだろうと考えた次第だ。

元号と西暦の混在

 文部科学省のウェブサイトに国語審議会の頁がある【国語審議会

国語審議会

 見た瞬間、「これは何だ!」と思わず声を上げそうになった。

 元号表記と西暦表記とが混在しており、前後関係が、すぐには分からない。

 こういった不統一は、読み手にとって、はなはだ迷惑なことである。

 ----- 追記 2018.10.29 -------------------------------------------------------------------

「不統一」にも、いろいろあり、その弊害も様々だ。思いつくまま、整理してみた。

 ● 表記(表記の揺れ)

  コンピュータ、コンピューター
  プログラマ、プログラマー

  → 混在すると読みにくいし、いい加減な印象を与えるが、弊害の程度は知れている。

 ● 類義語

  書面、文書
  表示画面、画面
  ログイン、ログオン

  → 使っている本人は同じ意味で使っていても、相手は、別のものを指しているのではないかと悩むこともある。

 ● 単位

  1リットル、1000cc
  平成30年、2018年

  → 換算をすれば分かるのだが、読者に余分な負担をかけることになる。



 

只野はヤクザに絡まれた紀子をさっそうと助ける一人の男を目撃する。

 テレビ番組の解説【特命係長 只野仁(2003) 第7話「会長の秘密」 AbemaTV】に、次のような一節があった。

そんなある日、只野はヤクザに絡まれた紀子をさっそうと助ける一人の男を目撃する。


「絡まれ」まで読めば、只野がヤクザに絡まれたのかと思う。だが、直後の「た紀子」まで読むと、そうではないことが分かる。

次に、「助ける」まで読めば、只野が紀子を助けるのかと思うが、直後の「一人の男」まで読むと、そうではないことが分かる。

そうして、最後に、只野は「目撃」したことが分かる。

そんなある日、只野はヤクザに絡まれた紀子をさっそうと助ける一人の男を目撃する


 二回も誤読しかけたのは、「只野は」に対応する可能性のある動詞が、このように、3つ出てくるからだ。

 これに対して、「只野は」を「目撃する」の直前に持ってくれば、絶対に誤読のしようがない。

そんなある日、ヤクザに絡まれた紀子をさっそうと助ける一人の男を只野は目撃する


 要するに、主語に対応する述語は必ず後ろに来るのだから、主語の後ろに述語となる動詞が一つしかなければ、その動詞にしか対応しようがないため、絶対に誤読しないのである。

 なお、主語と述語動詞の関係が曖昧なことによる分かりにくさについては、これまでも、何度も記事を書いている。

 【目を覚ましたメリーは・・・
 【本人が弁護士とともに・・・
 【東京地裁で一人の男性が自殺
 

医大入試の男女差別の「救済策」

 東京医科大学の不正入試を巡って女性差別被害弁護団が結成されたという【東京医科大 女子55人不合格 弁護団「言葉がない」 テレ朝news 2018.10.24

 「女子55人不合格」というのが、どのような意味なのかが気になった。

 検討のため、以下のような説例を想定する。

 合格定員100名のところ、合格ラインを70点とすると、男子60人、女子40人が合格したはずだが、大学側は、男女比を7:3にしようと考え、男子の合格ラインを60点、女子の合格ラインを75点としたとする。

不合格-2

 上の図で、「B」の10人は、合格ラインの操作がなければ合格できたのであり、操作の被害者である。

 では、「C」の5人は、どうか。

 同じ、60~70点でも、男子なら合格したのに、女子であるがゆえに不合格になったのだから、男女差別の被害者とは言える。

 けれども、「C」の5人は、合格ラインの操作がなかったとしても、本来の合格ライン70点に届いておらず、合格はできなかったのだから、合格ラインの操作によって不合格になった、という訳ではない。

 冒頭の「女子不合格55人」というのは、本来の合格ラインに達していたのに不合格になった者(図の「B」に相当する)が55人という意味なのか、操作後の男子の合格ラインに達していたのに不合格になった者(図の「B」+「C」に相当する)が55人なのか、記事を読んでも、どちらか分からない。

 男女差別の救済策として、「B」の10人に追加合格を出すのは当然だが、「C」の5人に追加合格を出すのは、疑問が残る。

 とはいえ、男子は60点~70点で10人が合格しているのだから、その合格を取り消さない限り、「C」の5人に追加合格を出さなければ、男女差別ということになる。

 かといって、追加合格を出したら、本来、合格できなかったのに、大学が男女差別をしていたため、思いがけずも追加合格の恩恵にあずかれるわけで、割り切れないものがある。

 被害弁護団は、どのように考えているのだろうか?

----- 追記 2018.10.25 -------------------------------------------------------------------

 もう一度、得点分布表の数字に注目してほしい。

不合格-2

 出てくる数字は、40,30,20,10,5,100,60 と、全て異なった数字だ(10 だけは、男子の合格者を増やした分と同じだけ女子の合格者を減らすのだから、必然的に、同じ数字にせざるを得なかった)。

 同じ数字を複数箇所で使ったら、読者が混同しかねないからだ。

 この点については、以前の記事【兄の名前は「坂上二郎」】を参照されたい。

 なお、「D」は、元々は、50人だった。「C」の5人と合わせると、55人になる。そうすると、冒頭の見出しの「55人」と同じ数字となり、混同しかねない。そこで、50人を60人に変えた。こうすれば、混同のしようがない。

 自分で、こういった配慮をしながら、おそらく、ここまで配慮をして文章を書いている人は極めて希だろうと思う。けれども、決して難しいことをしているのではない。その気になれば、誰でもできるはずだ。

 要は、自分の文章を、他人に、迅速、的確に理解してほしい、という思いを、実行に移すか否かである。

 読者の皆さんは、自ら実践するのはもちろんのこと、可能な限り、このブログの存在を周囲の人に伝えて、広めてほしい。

 

切手の枚数は、こう説明する

 先ほど、大津家裁の家事受付係に電話して、申立に必要な郵便切手の種類と枚数を尋ねた。そのときの回答が、これだ。

全部で725円で、内訳は、それぞれ5枚ずつなんですが、82円、50円、10円、2円、1円です。


 大変分かりやすい。
 
 それが、実際よくあるのだが、こんなふうに言われたら、どうだろう。

82円切手が5枚で、50円切手が5枚で、10円切手が5枚で、2円切手が5枚で、1円切手が5枚です。


 ●  「切手」について尋ねているのだから、「切手」という言葉を5回も繰り返す必要はない。

 ● 全部、同じ枚数なのだから、最初に、そのことを言えば足りる。

 本件と同じ話題は、以前の記事【5円が5枚、100円が5枚・・・】にも書いた。

 さらに、冒頭の回答は、最初に総額まで言ってくれている。

 別に総額を言われなくても、個々の切手の枚数さえ言ってくれれば、それで用は足りるのだが、最初に、総額を聞いた方が、何となく、落ち着いて聞けるのである。しかも、電話を切った後で、自分で計算をして、最初に聞いた総額と一致すれば、間違いなく聞き取ったと安心できるのである。

  

 
 

辛味順位表

 ハウスの「こくまろカレー(甘口)」の箱に、辛味順位表が載っていて、同じハウスのバーモントカレーやジャワカレーとの辛さの比較ができるようになっている。
 
辛さ-1


 バーモント、こくまろ、ジャワと、段々辛くなり、それぞれに、甘口、中辛、辛口の3段階があることが分かるのだが、そう分かるまでには、じっくり、この表を眺めなければならない。

 けれども、もっとすっきりした表にすれば、そんなことは、一瞬で分かる。

辛さ-2


 ● 分かりきった「カレー」という記載は省略した。

 ● 同じ種類のカレーは、同じ行に並べた。

 ● カレーの種類は、左端に記載し、表の中には書かなかった。

 ● 上から下へ順に辛くなるように、こくまろとジャワを入れ替えた。

------ 追記 2018.10.23 ------------------------------------------------------------------

 右上に行くほど辛くするほうが、感覚的には馴染むような気がする。

 
辛さ-3



左下から右上へ その2  医学部入試での男女差別

 医学部入試での男女差別が話題になっているが、東京医大だけでなく他の医大でも広く男女差別が行われていることが明らかになりつつある。その記事の中で、次のような図表が使われていた【合格基準に男女差、疑い 他の医学部、一部受験生優遇も 文科省調査 朝日 2018.10.17】。

合格判定-1


 どうも、見にくい。一般的には、左下から右上に行くほど数値が高くなるというのが常識だが、上の表では、そうなっていないのが原因だ。

 そこで、作り替えたのが、下の表だ。

合格判定-2


 【左下から右上へ】にも書いた。

 ところで、表の中に、「男女ともに合格」「男女とも不合格」となっている点で、何か感じるところはないだろうか。

 合格の場合は「ともに」、不合格の場合は「とも」となっているのだ。

 無頓着に不統一な表現になっているような気もしたのだが、考えているうちに、それなりに合理性があるような気がしてきた。

 合格は嬉しいことなので、喜びを分かち合うという点で「ともに」が馴染むし、他方、不合格は、そっけなく「とも」という方が馴染むような気がする。

 どっちにせよ、大差ないのであるが、日頃から、こういった微妙な違いについて自分なりに考える訓練をしておくことによって、より的確な文章が書けるようになるはずだ。


--- 追記 ---------------------------------------------------------------------

 素材にした表は、新聞の紙面に掲載されていたもので、ネットには載っていなかった。


都道府県の比較は、こうする

弁護士ドットコム37号(2018.10.1)27頁に掲載された都道府県別の法律事務所のホームページ所持率を表した図表だ。
ホームページ-1


 とにかく、分かりにくい。問題点を列挙する。

● 日本地図上の各県に一本の「針」を根元から突き差し、その「針」の長さで所持率を表現してるが、

  ・ どの「針」が、どの県に対応しているのかを識別しにくい。
  ・ 「針」の根元の高さが様々なので、「針」の長短を比較しにくい。
  ・ 「針」の色分けに統一感がなく、所持率の高低と色の対応関係が直感的に分かりにくい。
  ・ 黄色の「針」は背景に溶け込み、見つけにくい(特に、栃木)。

● 特定の県(50%以上の全県、40%台の東京、10%台の山梨)は、地図に所持率を記載し、他の県は、表に記載しているが、

  ・どの県が地図上にあるのか表にあるのか、すぐには分からない。
  ・地図上の県名がローマ字になっており、ぱっと見には分からない。

 そこで、この図表を大幅に手直ししてみた。

ホームページ-4

 変更点は、下記のとおりである。

● 「針」の使用をやめて、都道府県の色分けにより、所持率の違いを表現した。

● 色分けに使う色は、所持率の高い県を濃い青とし、一番低い白まで、同系色の5段階とした。

● 凡例の並びについて、所持率の高いものを上にした。

● 各県の所持率は、全ての県について、左上の一つの表にまとめた。

● 都道府県名については、末尾の文字の都、府、県を省略した(道は省略していない)。

● 都道府県名の順番は、一般に使用されているJISコードの順にした。

● 所持率が50%以上の県については、県名の前に青色の印 を付けた。
  東京、山梨も、元の図表では、50%以上の県と同じく地図に記されていたが、特に印は付けていない。

------ 追記 2018.10.23 ------------------------------------------------------------------

 表の中での都道府県の配置を地図上の配置に近づけるため、北海道から始まる列と滋賀県から始まる列を入れ替え、北海道の方を少し上に配置した。

ホームページ-5




施設の説明は、こうする

 下の図は、ある自治体の科学館の説明の一部だ。

名古屋科学館-1

 これを見ても、施設の概要は、なかなかイメージできない。

 そこで、改善案を作ってみた。

名古屋科学館-2


 ● 上層階を上に、地階を下に
     説明図上での配置と現実世界での配置を一致すべきことは、以前にも書いた。
        【前列右から・・・
        【市ヶ谷キャンパス・・・

 ● データバーの使用
     数値の大小を図形(データバー)の大小として表現すれば直感的に理解できる。
        【「データバー」の活用

米南部や中部にまたがる米国でも信仰心があつい住民の多い地域 バイブルベルト

 【(トランプの時代 2018中間選挙)「神の国」復興、トランプ氏に託す 支持する理由、福音派は 朝日 2018.10.14】という記事があり、トランプの支持者の多い「バイブルベルト」という地域の解説が載っていた。

バイブルベルト

 下の二行が少し見にくいが、書き出すと、こうなる。

  米南部や中部にまたがる米国でも信仰心があつい住民の多い地域。
    福音派などキリスト教保守派が社会や政治に強い影響力を持つ


 冒頭の「米南部」というのは、後ろに「米国」と出てくるのだから、単に「南部」でいいはずだ。

 また、「南部や中部にまたがる」というのは、直後の「米国」ではなく、もっと後ろの「地域」を修飾しているのだから、「米国」を修飾していると誤読されないよう、「、」を入れるべきである。このように、直後ではなく、離れた場所にある文節を修飾する場合に読点を用いるべきであることは、以前の記事【東京地裁で・・・】にも書いたとおりである。

 更に、なお、「信仰心があつい」というのは「信仰心が篤い」と書けは゛いいのにと思ったのだが、常用漢字表には「篤」について、「トク」の読みはあるが、「あつ(い)」の読みはなかった【文化庁 常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)】。

 けれども、常用漢字表は「現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安」に過ぎない。

 実際、同じ記事の中には「トランプ氏自身は敬虔(けいけん)ではない」という表現があり、そこでは常用漢字表に載っていない「虔」を使用しており、常用漢字表を「逸脱」しているのである。

 他方、[篤」は、漢字自体は常用漢字表に載っており、「あつ(い)」という読みが載っていないに過ぎないのだから、「虔」を用いるより、「逸脱の程度」は低いと言える。

 なお、常用漢字については、以前の記事【検察官・・・】でも触れている。また、ある漢字が常用漢字か否かを調べるには、【常用漢字チェッカー】という便利なサイトがある。

 結局、こう書くべきことになる。

南部や中部にまたがる、米国でも信仰心が篤い住民の多い地域



--- 追記 ---------------------------------------------------------------------
 上の文章の中に「書けは゛いいのに」という記載があるが、何か間延びした感じがしないだろうか。

 書いたときは気づかなかったのだが、見返してみて、何か変な感じがした。よく見ると、「ば」が「は」+「゛」の2文字になっていたのだ。ローマ字入力をしているので、こういったことは起こりようがないと思うのだが、現実に起きた以上、何か原因があるはずである。
 

地図の描き方

 最高裁判所のウェブサイトに司法研修所の地図が載っている【最高裁判所 司法研修所について】。

研修所-1


 ぱっと見て、目的の司法研修所が地図の上のどこにあるのか、すぐには分からない。

 なぜ分かりにくいかというと、青緑、薄緑、黄色と目を引く色が、あちこちに使われているからだ。加えて、司法研修所の文字の背景は明度の低い臙脂色であり、文字の黒とのコントラストが弱いことも分かりにくい原因だ。

 また、施設を表す図形を立体化して影を付けている点も、目障りだ。しかも、駅を表す青緑の図形、研修所を表す臙脂色の図形、それ以外の灰色の図形、それぞれで影の付け方が不統一であり、ばらばらな感じがする。

 そこで、そういった点に配慮して作り直したのが、下の地図だ。

研修所-2


 違いを見比べることができるように、すこし小さくなるが、横に並べてみた。

研修所-1 研修所-2





100万平方キロメートルの巨大な実験都市

 トヨタとソフトバンクが車の自動運転で提携するとのニュースが流れたが【東洋経済 「トヨタ×ソフトバンク」誕生の大きな意味】、中国では自動運転の実用化に向けて、上海近郊に実験都市を作って、実験を繰り返しているという。

 今朝のテレビ(羽鳥慎一モーニングショー)では、その実験都市「自動運転シティ」について次のようなボードで解説していた。

 
山手線内側


 よく、面積を表すのに、○○平方キローメートルと言われてもピンと来ないため、「東京ドーム○個分」などと説明されることがあるが、ここでも、そのような説明がなされていた。

約100万平方キロメートル
(山手線内側の1.5倍)


 山手線の内側が、何平方キロメートルか知らないが、100万平方キロメートルと言えば、日本の面積37万平方キロメートルの3倍弱である。明らかに誤りとしか考えられない。

 調べてみると、山手線の内側は、63平方キロメートルであり【Wikipedia 面積の比較】、自動運転シティの面積は「100万」ではなく、「100」平方キロメートルだということが分かった。

 日本の面積が37万平方キロメートルというのは、小学生レベルの知識であり、スタジオのアナウンサー、コメンテーターも知らないはずはない。

 けれども、誰一人、この「100万平方キロメートル」の異様さに気づかないのだ。
 
 仮に、日本の面積を知らなくても、「100万平方キロメートル」といえば、縦横1000キロメートル四方であり、本州がすっぽり収まるほどの広さであることは分かるはずである。

 こんなことは、東京大阪間が約500キロメートルだという知識があれば、すぐに計算して分かるはずである。

 結局、彼らは、知識があっても、その知識に即して情報を自ら吟味することなく、そのまま受け入れているのだということを、鮮明に示している。

 先日の【1m×1m×2cmは、何リットル?】といい、【マグネシウムは、41ミリグラム】といい【何が起きても納得できる人】といい、マスコミの検証能力には眼を覆いたくなる。


霧の中

 東京電力は福島第一原発の敷地に流れ込む地下水が事故を起こした原発に汚染されることなく海へと排出されるよう、地下水バイパスを設けているそうなのだが、その説明図の一部が、これである【東京電量ホールディングス 地下水パイパスの概要】。

東電-地下水


 見た瞬間、コンタクトレンズが曇っているのかと思った。いや、さっきまで、ちゃんと見えていたのだから、そんなはずはない。では、私の眼に何か異常が発生したのか。思わず、モニターから眼を離して周囲を見渡したが、部屋の中は鮮明に見えている。

 原因は、こちら側にはない。どうやら、福島原発周辺に濃い霧が立ち込めているらしい。

 「分かりにくさが第一」のためのテクニックについては、以前の記事【分かりにくさが第一】に書いた。


宿泊施設なのに”泊まり放題”?

 こんな見出しの記事を見た。

宿泊施設なのに”泊まり放題”


 「なのに」というのは、「逆接」の言葉である。

 たとえば、「飲食施設なのに泊まり放題」とか「競技場なのに泊まり放題」とか、本来、宿泊を予定していない施設であれば、「・・・なのに泊まり放題」という表現も納得できる。だが、宿泊施設に泊まれるのは当たり前ではないか。

 では、筆者は、なぜ、ここで「なのに」という「逆接」の言葉を用いたのだろうか。

 記事を読んでいくと、「日曜日から木曜日に泊まり放題」のパスを販売したとある。

 USJや、ディズニーランドといったテーマパークが、年間パスポートを発行していることは、よく知られているが、ホテルや旅館では、これまで、そのような仕組みはなかった。

 筆者は、宿泊施設で泊まり「放題」というのはなかったところに、泊まり「放題」という仕組みが導入されたということで、「逆接」の「なのに」を用いたのである。

 筆者にとっては、年間パスの発行はホテル業界では画期的であるが故に、「なのに」としたかったのである。

 けれども、一般の読者から見ると、「泊まり放題」と書かれても、「放題」に着目するよりも、「泊まり」に目が行く。そうすると、宿泊施設に泊まれるのは当然ではないかと思えるので、なぜ、「なのに」か、不思議に感じるのである。

 冒頭に引用したのは、【民泊大学】というサイトの記事である。



オーケストラは理系のサークル活動?

 ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏が学生時代に京大オーケストラでフルートを演奏していたことが話題となっているが、これに関連して、指揮者の篠崎靖男氏が、こんな一文を書いている【Business Journal オーケストラは理系出身者が多い?】。

 今回、本庶氏のノーベル賞受賞の報に接して、3年前に同楽団の指揮をした際のプログラムを引っ張り出してきてメンバー表を見てみると、驚くことに気付きました。なんと、100名くらいいるメンバーの3分の2が、理系なんです。そのなかで医・薬学部は10名くらいいます。特になぜか管楽器パートは理系の占める割合が高く、楽器によってはほぼ理系で占められています。オーケストラは理系のサークル活動と言えることは確かです。 


 篠崎氏が自ら指揮をしたことのある京大オーケストラのメンバー表を根拠に、「オーケストラは理系のサークル活動」という結論を述べているのだが、何とも牽強付会な理論である。どこが変なのか、根拠としてあげられている個々の事実を順に見て行こう。

【1】 100名くらいいるメンバーの3分の2が、理系

 そもそも、京大の学部学生の中で理系の割合が、どれくらいなのかを示さなければ、意味がない。

 仮に、学生の9割が理系だったとしたら、1割の文系の学生が、オーケストラの3分の1を占めているのだから、むしろ、「オーケストラは文系のサークル活動」ということになるだろう。

 実際に京大のウェブサイト【データで見る京都大学 学部学生数】で調べてみると、こうなっていた。なお、「メンバーの3分の2が、理系」というのは、「3年前」のメンバー表が根拠となっているので、学生数は、2015年度の数字である。

理系i-2-barchart-2

 真ん中あたりの「総合人間」学部は、文系と理系とに分かれるのだが、統計表には各区分の人数が載っていなかったので、理系には入れていない。

 このように少なめに見ても、理系が、65.9%、概ね3分の2である。

 学生数に占める理系の割合も、オーケストラメンバーに占める理系の割合も、ともに3分の2なのだから、オーケストラは、理系文系、いずれか一方に親和的なサークルとは言えない。

【2】 医・薬学部は10名くらい

 医・薬学部の学生は、以下のとおり、全体の12.9%である。 

医薬系-2-2

 これに対して、オーケストラ100人中10人くらいが医・薬学部と言うのである。学生全体に占める医・薬学部生の割合より、若干、少ないのであり、どちらかと言えば、オーケストラは、医・薬学部生には「非親和的」という、筆者の主張と反対の結論が導かれる。

【3】 管楽器パートは理系の占める割合が高い

 管楽器パートは理系の占める割合が高いというのなら、当然のことながら、その反面、打楽器、弦楽器など他のパートでの理系の占める割合が低くなっているはずである。管楽器パートの話だけで、オーケストラは理系サークルというのは、とんでもない飛躍である。

【4】 楽器によってはほぼ理系で占められている

 特定の楽器の担当が全員理系だとしても、オーケストラは理系サークルという結論が出るはずもない。

---- 追記 2018.10.8 --------------------------------------------------------------------

 そもそも、篠崎氏の主張の前提となったのは、京大オーケストラのメンバー表である。

 仮に、京大オーケストラについて「理系のサークル活動」という結論が導かれたとしても、全国の大学のオーケストラ一般が「理系のサークル活動」と言える訳ではない。

---- 追記 2018.10.9 --------------------------------------------------------------------

 仮に筆者が一橋大学(商、経済、法、社会の文系学部のみ)のオーケストラのメンバー表を見たら、全員が文系であり、「オーケストラは文系のサークル活動」ということになるのだろうか。

---- 追記 2018.12.5 --------------------------------------------------------------------

 読者からの指摘により、学生数の表を入れ替えた。変更箇所が一目で分かるように、新旧の表を並べてみた。

理系-2  理系i-2-barchart-2
 
 蛇足になるが、一応、変更箇所と変更理由を記載する。

 ● 表題を加えた。 (表の前の文章を読めば何のグラフか分かるのだが、表を見ただけでも分かるようにした)
 ● バーチャートを加えた。 (数字だけの場合と比べて、格段に分かりやすくなる)
 ● 数字を3桁区切りにした。
 ● 結論として主張したい箇所を赤い太文字で強調した。 (とにかく、結論を見てもらうことが大事)


 

日本列島の色分けは、こうする!

 日弁連のサイトでは、全国の弁護士会の相談センターの案内があり、そのトップ頁に日本地図があり、そこから地域を選べるようになっている【全国の日本弁護士連合会 弁護士会の法律相談センター】。
 
日弁連-地図

 これを見て、少し嬉しくなった。

 というのも、寒冷な地域から温暖な地域へと、寒色から暖色へと順に並んでおり、以前に私が書いた記事【色使いは、こうする】の内容を、実践しているからである。

 しかも、私が前の記事で書いたのと比べると、色相の幅が狭く、ずっと落ち着いた感じになっている。色相の幅は各サイト全体の雰囲気に適合するか否かの問題もあるので、どの幅が最善とは言えないが、これは、これで丁度よい幅になっている。

 私の個人的な感覚としては、西日本は、黄色、橙色などを使った方が、よりしっくり来るのだが、このあたりに来ると、「趣味の問題」であり、こうすべきだと、と言えるものではない。

 ただ、色使いとは別に、少し気になることがある。

 北方四島が記載されているのに、多数の日本国民が居住し、裁判所の支部もある、伊豆諸島、淡路島、隠岐の島、壱岐、対馬、五島列島、薩南諸島が抜け落ちている点だ。

 作成者は、おそらく、両端の北方四島と沖縄を入れなければ、という意識が強く、そこにのみ気をとられていたため、上記の島々を落としてしまったのだろう。

 それにしても、淡路島が抜けているのは理解しがたい。というのも、他の島々は、紙幅の都合上、落としてしまった、ということも考えられないではないのだが、淡路島に関する限り、そんなことは考えられないからである。
 
 





関電高浜原発の油漏れ事故の真相?

 8月19日の関電高浜原発の油漏れ事故についての虚偽報道に関して、8月26日に、【1m×1m×2cmは、何リットル?】という記事を書いた。その続報である。

 未読の方は、まず、この【1m×1m×2cmは、何リットル?】を読まれた上で、以下を読んでほしい。

 その後、上記の記事が守田敏也氏のブログ【明日に向けて(1580)高浜4号機が8月故障の発表の間違いを放置したまま再稼働!杜撰な再稼働にジャーナリストはもっと真剣に目を光らせるべきだ!】で紹介されたのだが、その記事の中で、8月30日付の関電の発表【高浜発電所4号機の原子炉起動予定および調整運転の開始予定について 2018.8.30】の中にある【図-4 タービン動補助給水ポンプの運動場の制限の逸脱】が紹介されていた。

 その図の中の油漏れの状況に関する説明部分を示す。

高浜-発表

 私が書いた記事は、【関西電力からのお知らせ 2018.8.19】を前提としたものなのだが、8月30日の関電の発表は、19日の発表とは微妙に異なっている。油の量に関する記述を抜き出すと、こうなる。

8.19  約1m×約1m×約2cmの油(約2リットル)
8.30  約2リットル(約1m×約1m×約2cm(最深部))


 19日の発表と異なり、30日の発表では、「最深部」という限定が付されている。
 
 仮に、約2cmというのが、「最深部」に限定した数字だとしたら、総量で「約2リットル」というのも、虚偽とは断定できなくなる。

 たとえば、約1m×約1mに広がった油の大部分が厚さ1mmで、一部だけ2cmだったとすれば、総量で「約2リットル」ということもあるのだ。下記の図は、その仮定のもとに現場を模式的に平面図にしたものだが、この図を見て、じっくり考えてほしい。
高浜-検討

 この仮定のとおりだとすると、関電が意図的に虚偽の発表を行ったとは言い切れない。

 結局、真相は、次のいずれかだろう。

 【1】 実際の油漏れが、約2リットルだった場合
    19日の発表では、ミスで「最深部」の記載が漏れていた。
    30日の発表では、正しく「最深部」と記載された。

 【2】 実際の油漏れが、約20リットルだった場合
    19日の発表では、計算ミスが原因で、あるいは、意図的に、約2リットルと発表した。
    30日の発表では、辻褄合わせのため、「最深部」という虚偽の限定を加えた。   
 
 いずれにせよ、19日の発表に誤りがあったのは明らかであり、関電は、事実関係を説明すべきである。

 なお、NHKや福井新聞などの報道機関は、「約1m×約1m×約2cm」という計算式は記事には記載せず、「約2リットル」という結論だけを記載していた。そうすると、仮に【1】だとすると、報道機関は、30日の関電の発表の前に、「約2cm」が「最深部」という情報を掴んでいて、「約2リットル」でも誤りではない、と判断していたのかもしれない。

 そうだとすると、私の前回の記事の指摘「検証不足」は、適切な指摘ではなかった、ということになる。

 けれども、それなら、なぜ、報道機関は、関電の発表前に「最深部」という情報を掴んでいたのかが謎であるし、19日の関電の発表の段階で「最深部」という限定が抜けていることを関電に対して指摘しなかったのはなぜか、という疑問が生じることになる。

○○みたいに▲▲しない

 癌の免疫療法薬オプジーボの開発につながる研究で本庶佑氏がノーベル医学生理学賞を受賞することになったが、高須クリニックの高須克弥院長が、自身が“全身がん”であることを公表し、次のように発言したとのことだ【スポーツ報知 2018.10.2 “全身がん”公表の高須院長、ノーベル賞・本庶氏開発の新薬は「選択肢の一つ」も副作用を指摘】。

 「僕は樹木希林さんみたいに放射線治療は選択してないけど癌はタイプにより治療法を選択するのが賢いんだぜ」


 「樹木希林さんみたいに放射線治療は選択してない」の部分が、分かりにくい。

 樹木希林は、放射線治療は選択したのか、していないのか。

 「○○みたいに▲▲でない」 「○○のように▲▲でない」 といった表現は、○○が▲▲なのか否か、分からない。

 冒頭の例は、次のように書けば、どちらの意味か明確になる。

   樹木希林さんと違って放射線治療は選択してない

   樹木希林さんと同じで放射線治療は選択してない

「共同で授与することが決まりました」

 今年のノーベル医学生理学賞が本庶氏と米国の研究者に授与されることが発表された。

 今朝のテレビでは、こう画面に出ていた。

ノーベル医学生理学賞をジェームス・アリソン氏と本庶佑氏に共同で授与することが決まりました


ノーベル賞

 授与したのは、ノーベル財団だから、「共同で授与する」ではなく、「単独で授与する」ではないのか?

 おそらく、ノーベル財団の発表を、翻訳したのだろう。

The Nobel Assembly at Karolinska Institutet has today decided to award the 2018 Nobel Prize in Physiology or Medicine jointly to James P. Allison and Tasuku Honjo


 つまり、「jointly」は「to」を修飾しているのに、「award」を修飾するように訳してしまった「誤訳」ということだ。

「共同で授与」というと、授与の主体が複数だということになってしまう。授与の相手方が複数の場合に使うべき言葉ではない。ここは、「共同で」ではなく、「両者に」とすべきだろう。どうしても「共同で」にしたければ、「授与される」と受け身にすべきだろう。

 A、B → C  AとBが共同でCに授与する

 A → B、C  AがBとCの両者に授与する
 A → B、C  AによってBとCが共同で授与される

 と書いたものの、「共同で」というのは、主体的な行為について言われるのが普通であって、受動的な場合に使うのは不自然な感じがする。




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 玉石混淆の情報が溢れる社会の中で、効率よく、的確に、情報を取得し、提供するには、どうすればいいのか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

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