消費者庁がインスタグラムで注意喚起

 先ほど、テレビとパソコンの両方でニュースを流しながら、タブレットで調べ物をしていた。

 ふと、パソコンの画面を見上げると、こんな見出しが目に入って来た。

インスタ-1

 見出しを一瞬、見ただけで、すぐにタブレットに目を移したのだが、次から次へと新手の詐欺まがい商法が出てくる中で、消費者庁も、迅速、かつ、若者受けするようにと、インスタグラムを使って注意を喚起するようになったのかと考えた。

 同時に、立憲民主党が立党から僅か2日で、フォロワー数で、希望の党はおろか、自民党をも凌駕した、というニュース【東京新聞 2017.10.5】を思い出して、SNSを利用した情報発信が、どんどん進んで行くのだな、などと一人、納得していたのだが、もう一度、パソコンの画面を見上げると、小さな文字で「写真アップするだけで簡単にもうかる」と書かれているのに気がついた。

インスタ-2

 「写真アップするだけで簡単にもうかる」ということは、写真をアップする先がインスタグラムと言うことで、注意を喚起する手段がインスタグラムということではなさそうだ。

 そのまま、見ていると、「インスタグラムに写真をアップするだけで、200万円も稼いだ人もいる」という甘い話で多額の金銭を支払わせるという手口の商法で被害が続出している、という話だった【ホウドウキョク】。

 「インスタグラムで」の「で」は、非常に多義的であり、使う側にとっては便利なのだが、反面、誤解を招きやすい。

 とはいえ、「で」のように多義的な助詞でも、長い文章の中で出てきたのなら、文脈から、意味が特定できる場合が多い。反面、記事の見出しのように、それ以前の話題とは無関係に登場する場合は、文脈による特定が困難である。

 だとすれば、見出しにこそ、細心の注意を払わなければならない、ということになる。

 冒頭の例の場合、次のようにしておけば、誤解を招くことはなかっただろう。

消費者庁がインスタグラムに関して注意喚起


  本日の要点  

 見出し、文頭では、「で」「の」などの多義的な助詞は、用いない。

髪染め強要訴訟を巡る、場外乱闘?(松井大阪府知事×米山新潟県知事)

 少し、込み入った話だが、まずは、次の記事を読んでほしい。

生まれつき頭髪が茶色いのに、学校から黒く染めるよう強要され不登校になったとして、大阪府羽曳野(はびきの)市の府立懐風館(かいふうかん)高校3年の女子生徒(18)が約220万円の損害賠償を府に求めた訴訟は27日、大阪地裁で第1回口頭弁論が開かれた。生徒側は「黒染めの強要は、生まれつきの身体的特徴を否定し、人格権を侵害する」と主張。府側は「適法だ」と反論しており、生徒指導としてどこまで許されるかが争点になりそうだ。
                                          【毎日新聞 髪染め強要訴訟 2017.10.28


 この件に関し、大阪府の松井知事と新潟県の米山知事の間でツイッター上で論争があり、そこで、米山知事が、こう述べていた。

 私が引っかかったのは、生徒に髪染めを求めた行為が「違法である」と松井知事が考えるのなら、「請求を認諾」すればよい、という「論理」である。

 まず、予備知識として、説明すると、「請求の認諾」とは、裁判で請求された内容(例えば「金220万円を支払え」など)を認めて争わないという意思表示である。

 髪染めを求めた府立高校の教師の行為が、「違法である」と考えたとしても、「原告の主張する損害額は大きすぎる」と考えた場合は、「請求の認諾」をするのではなく、「損害額」のみを争い、その点に関する裁判所の判断を求めるのが、被告として取るべき態度である。

認諾-2

 米山知事は、「違法である」と考えたのなら、「請求の認諾」をすべきである、との主張をしているのだが、「論理の飛躍」としか言いようがない。

 AとBという2つの命題が肯定されて、初めて、Xという命題が肯定される場合、ともすれば、Aが肯定されただけでXという命題を肯定してしまうという誤りは、よく見かける。

 米山知事は、東大医学部を卒業し医師資格を有し、かつ、司法試験にも合格し弁護士資格も有している【Wikipedia】のだから、「論理的な思考」の訓練は人並み以上に積んでおり、実際、論理的思考力も一定の水準以上であることは、誰も否定できないだろう。

 そんな人でも、こういった「論理の飛躍」を起こしてしまうのである。

 だからこそ、自らの論理を常に検証する努力が必要なのである。

 なお、断っておくが、ここで述べたことは、松井知事の肩を持ちたいからでは、決してない。あくまでも、論理の問題としての指摘である。

  本日の要点  

  A + B → X    のとき
  A → X      とする誤りに、気をつける。

「食間」とは

 専門用語は誤解されやすいので発信する側も、受け止める側も注意が必要だということを先日のブログ【相続開始時期はいつですか】で書いた。

 そこで、例として、「座薬」を取り上げたが、同じく医療関係で誤解されやすい用語が「食間」である。

 私自身も、ある程度の年齢まで、「食間」というのは「食事をしている間」のことだと思い込んでいて、「食事と食事の間」という正しい意味は知らなかった。

 「食間」の「間」には、「●●の最中」という意味と「●●と●●の間」という意味がある。たとえば、「夏休みの間」「夏休みと冬休みの間」のように使われる。「食間」と言われても、初めて聞いた人は、どちらの意味かは分からなくて当然である。

 英語なら、「間」に相当する単語が「during」「between」と分けられているので、誤解のしようがないのだが、多義的な「間」を用いる以上は、誤解されてもしようがない。

 この誤解は結構、多いようで、製薬会社のウェブサイトにも次のように記されている。

食間とは、食事の最中だと思われている方も多いようですが、食事と食事の間という意味で、食事を終えてから約2時間後が目安です  
                           【中外製薬 食前・食間・食後について


 製薬会社が「結構、多い」と言っているのだから、少なくとも、1%は誤解しているのではないか。とすると、日本で100万人である。

 薬の服用時間は、その薬が最も効果を発揮できる時間、あるいは、胃の粘膜に無用な刺激を与えないような時間、等々の配慮に基づいて決められているのである。誤解をする人が100万人もいるのであれば、服用時間を誤ったために、症状が改善しなかったり、あるいは悪化したり、中には、それが原因で死亡する人も、一人や二人いるかも知れない。

 服用時間を誤ったことによる死者は、一人二人どころか、、実際は、何百人もいるかもしれない。そもそも、性質上、服用時間を誤ったのが原因かどうかなど、担当医であっても分からないだろうから、表には現れにくいことである。

 このように何百人もの死の原因となっているかも知れない「食間」という表現は直ちに改めるべきだろう。

 「食間」という表現でも誤解されるのに、ネットで検索した薬袋の中には、「食事の  前 後 間」と印刷してあって、そこに丸印を付けるようになっているものがあった。「食事の間」だと、まさに、食事をしている最中に飲むのだという誤解を誘発するようなものである。

 誤解をしないように、例えば、「食事と食事の間」とか、「食事の2時間後」などの表現がいいのではないか。

 「食間」に比べると長ったらしくて、「食前」「食後」という短い表現との対比で、なんとなく、避けたくなる気持ちも分からないではないが、「分かりやすさが第一」である。「洗練された表現」よりも「分かりやすい表現」である【「分かりにくさ」の原因は、これだ】。

------ 【2019.2.25 追記】 ------------------------------------------------------------------

 西成活裕氏の「誤解学」36頁には、自身も「食間」を誤解していたということが書かれている。また、同書では、誤解のない表現として、「食食間」という表現が提案されている。
 

立憲民主党が自民党に議席を譲る!

 次ぎに掲げるのは、【日経新聞 衆院選2017】の見出しである。
比例候補

 記事を読むと、立憲民主党が、衆院選の比例東海ブロックで、得票数から計算すると5議席を獲得できたにもかかわらず、比例名簿に登載された6名のうち2名が小選挙区で当選したため、比例区では4議席しか獲得できず、本来なら立憲民主党に行くはずの1議席が、自民党に回った、というものである。

 これは、公職選挙法の規定上、そうなっているからであり、立憲民主党に行くべきだった1議席が同党の意思に基づいて自民党に回された、というわけではない。

 とするなら、「譲る」というのは、不正確な表現であり、本来なら、「回る」という表現が適切である。

 おそらく、見出しを付けた記者は、そんなことは承知の上で、「譲る」のほうがインパクトがあると考え、「譲る」にしたのだろうが、比例代表の議席の割り当て方法を知らない読者の中には、立憲民主党が、党の意思で自民党に1議席を譲ったのだと勘違いする人もいるかも知れない。

 ひょっとしたら、立憲民主党に電話をして、「選挙協力した共産党や社民党に譲らないで自民党に譲るとは何事だ」と抗議する人が出るかもしれない。

 他方、【朝日新聞 2017衆院選】の見出しは、こうなっている。
比例候補-2

 単なる 譲渡 ではなく、 「譲渡」 としている。もちろん、これでも誤解する人はするだろうが、日経よりは、適切と言えよう。

 さらに誤解の余地のないのが、次の【NHK 衆院選2017】の見出しである。
 
比例候補-3


 このブログを読まれた方の中には、「そんな誤解をする人がいるのか?」と疑問に思う人もいるだろう。

 けれども、人の知識のレベルは様々であり、情報を発信する側では当然わかっていると思っていても、ときに、そうでない場合もある。これまでのブログ【相続開始時期は、いつですか】【「件名」って何ですか?】などに書いたとおりである。

 ただ、上記のブログで取り上げた、「件名」「ボーナス」すら分からない人を相手にしていると、文章がやたら長くなり、分かっている人にとっては、迷惑な話かも知れない。

 そう考えると、日本を代表するクオリティーペーパーである【日経新聞】が、上記の見出しを用いたのも、それはそれで一つの判断かもしれない。

 なお、公選法の規定を掲げておく。

(衆議院比例代表選出議員の選挙における当選人の数及び当選人)
第九五条の二
5 第一項、第二項及び前項の場合において、当該選挙と同時に行われた衆議院(小選挙区選出)議員の選挙の当選人とされた衆議院名簿登載者があるときは、当該衆議院名簿登載者は、衆議院名簿に記載されていないものとみなして、これらの規定を適用する。




比喩は適切な比喩でなければならない

 以下のツイッターを読んでほしい。

 ただ、あくまでも、この見解の適否の問題ではなく、「分かりやすさが第一」という点から、ここで用いられた「比喩」が適切かどうか、考えてほしい。
    
 私が違和感を持ったのは、「火災保険がもらえたからと言って火事を起こした事が良かったと思うのは何かずれている」という比喩の点である。

 松尾氏が「彼の行動を評価する人」というのは、「前原誠司は民進党を潰したけれども、その結果として、立憲民主党が立ち上がり一定の成功を収めたわけであり、結果的ではあるが、前原は、その功労者である」という人々と解される。

 そもそも、松尾氏が比喩としてあげた「火災保険」は、予測できたことであるのに対して、立憲民主党の立ち上げは、前原小池会談で民進党から希望の党への合流を「約束」した段階では、予測できなかったことである。

 比喩としてあげるなら、同じく、「予測できなかった」ことでなければならない。例えば、こんな具合である。
 

放火されて家が全焼したが、義捐金がたくさん集まり、小さいけれども前よりも堅固な家を再建築することができたからと言って放火した事が良かったと思うのは、何かずれている。



 くどいようだが、表に整理すると、次のようになる。
比喩-1


相続開始時期はいつですか

【1】 相続開始時期

 離婚、相続、交通事故、借地借家、借金問題、といえば、多くの弁護士にとって日常的にありふれた事件である。

 その中で、相続問題は、多くの場合、不動産の登記、相続税の問題も付随しており、司法書士、税理士といった専門家を紹介することも多い。

 先日、一人暮らしの父親が亡くなり自宅の名義変更が必要と言うことで、司法書士を紹介した。

 その後、今度は、相続税のことで税理士さんを紹介することになった。

 紹介しようとした税理士さんは、超多忙のため、相続税の申告期限(相続開始から10か月)を心配して、私に、「相続開始時期はいつですか」とメールで尋ねて来た。

 私は、メールを見て反射的に相談者に同じく「相続開始時期はいつですか」というメールを送った。

 それから数分して、はっと気づいた。

 相続開始時期は、被相続人が亡くなった時点だということは、民法に記載されており、弁護士、税理士にとっては、当然の常識である。

 けれども、専門家の常識が世間の人の常識と考えたら大変である。

 民法の規定を知らない相談者にとっては、司法書士に相続登記の依頼をした時点が「相続開始時期」かも知れない。

 むしろ、そう考える方が自然かも知れない。

 相談者にしてみれば、父親が亡くなったといっても、父の遺した財産に何も手を付けていない段階では、まだ、相続はしていない。名義変更の手続に着手して初めて相続を「開始」したと考えるのが自然ではないか。

 そう考えて、すぐに、相談者にメールをして、改めて、「お父様が亡くなったのはいつですか」という質問をした。

 仮に、亡くなったのが9か月前なのに、名義変更に着手したのが1月前だったとして、初めの質問だと「1月前」という返事が返ってきて、それを前提に税理士さんが業務を進めていたら、申告期限を徒過してしまうといった可能性もあったのである。

【2】 相続放棄

 こんなケースもある。

 亡父が遺した借金に関して銀行から督促を受けたという話だった。

 相談者は、「相続放棄」をして、長兄が全部相続したので、自分は関係ないはずだと話した。

 そこで、相続放棄の受理証明書があるのか尋ね、手元になければ、家庭裁判所に発行してもらって、それを銀行に提示すれば大丈夫だと説明をした。

 ところが、相談者は、裁判所と聞いて、驚いたように、そもそも裁判所には行っていないという。では、「相続放棄」の手続はどこでやったのかと尋ねたところ、税理士事務所で行ったと言い、遺産分割協議書の写しを取りだした。

 確かに、亡父の遺産は、不動産、預金だけでなく、借金も含めて、全て、長兄が相続するという内容になっている。

 相談者にとっては、「遺産分割協議」で財産を放棄したことが、「相続放棄」だったのである。しかも、このケースの場合、それなりに法的知識のあるはずの税理士さんでさえ、勘違いをしていたのである。

 「生兵法は怪我の元」というが、なまじ相続関係の知識があるばっかりに、こういった中途半端な処理をしてしまったのである。

 もちろん、弁護士も他人ごとではない。世間一般の人からすれば、多少は税金の知識があるといっても、専門家ではない。税金が絡みそうだと思ったら、自分で判断せず、税理士さんに相談するのが賢明である。

【3】 認知

 この話は、以前も書いたような気がするが、改めて、紹介する。

 相談者には、「認知」をした子がいる。
 
 延々と、その子がどんな生活をしてきたか、その子の借金の尻ぬぐいのために自分だどれだけ財産を注ぎ込んだかなど説明をした上で、もう親子の縁を切りたいという。

 私は、「認知」した以上、親子関係を切ることはできないが、「推定相続人廃除」という手続があると説明をしたのだが、相談者は納得が行かないようであり、また、先ほどの説明を繰り返す。

 話を聞いているうちに、私も、「どうも変だ」という感じがしてきた。

 改めて確認してみると、相談者が「認知」と言っていたのは、「養子縁組」のことだった。

 弁護士にしてみれば、「認知」と「養子縁組」は全然、別物である。

 もちろん、どちらも、子どもが生まれることによって当然に親子関係が生じるのではなく、法的な手続を経て親子関係を生じるという点では同じであり、相談者は、その共通点にだけ着目して、その範疇のものは、全て「認知」と考えていたのである。

【4】 まとめ

 上記3例のように、専門家にとっては、一義的に明確な概念であっても、専門外の人にとっては、そうとは限らない。

 専門家として話をする場合には、相手が誤解することないよう、法的概念を日常の言葉にかみ砕いて説明する必要があるし、話を聞く場合には、相手が法的概念を誤って理解していないか注意する必要がある。

 また、専門家から話を聞く場合には、専門家の発する専門用語について、素人判断で理解したつもりになるのではなく、日常用語に置き換えて自分の理解が正しいのか専門家に確かめる必要がある。

 知ったかぶりをせずに、とにかく尋ねることである。そうしないと、医師に「座薬です」と言われて、家に帰って「座って薬を飲む」といった笑い話のようなことになってしまうのである。


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Author:「時間泥棒」仕置人 (改称予定)
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 玉石混淆の情報が溢れる社会の中で、効率よく、的確に、情報を取得し、提供するには、どうすればいいのか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

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