「分かりにくさ」による損害

 総務省・経済産業省から、「平成28年経済センサス‐活動調査」の調査票が届いた。ネットでも回答できるということなので、早速、【経済センサス オンライン調査】にアクセスした。

 国勢調査と同程度の質問数のようなので15分程度でできると思ったのだが、これが大きな間違いだった。なんと、1時間半もかかかってしまった。

 原因の第一は、アクセスの集中である。入力ボタンを押してから、ページが切り替わるまでに、ときには5分も待たされるのである。

 しかも、単に待たされるだけではない。ログイン段階では、せっかく入力した調査対象者IDの「RSSf8Ui」といった呪文のような文字列が消えてしまって、その都度、同じ文字列を入力しなければならない。その結果、ログインをするだけで、20分を要してしまった。

 原因の第二は、記載方法の説明の「分かりにくさ」である。

 特に分かりにくかったのが、事業の種類を4桁のコードで入力するところだ。

 事業の分類とコードの対応の頁があるのだが、大分類、中分類、小分類の、それぞれの配列が雑然としており、そもそも法律事務所が、どの大分類になるのか見当がつかない。大分類の全体を1頁で閲覧できず、画面をスクロールしなければ、大分類の数が幾つあるのかさえ、分からないのである。

 そのうち面倒になって、コールセンターに電話をして、「法律事務所」のコードは何番なのか尋ねた。すぐに回答があると思ったのだが、「しばらくお待ち下さい」と言われてしまった。

 こんなところで、また待たされるのか、と思いつつ、「こっちで先に見つけてやる」と多少、意地になって考えて、ふと、ある方法が閃いた。

 その方法というのは、ブラウザにもよるだろうが、IEなら「編集」ボタンを押すと、「このページの検索」というのが出てくるので、そこに、「法律」と入力することによて、該当箇所を見つけるという方法である。やってみると、こんなふうに、一瞬で、法律事務所のコードが分かった。

統計

 この方法を思いついてみれば、どうして、こんな簡単な方法を思いつかなかったんだろうという思いで、それを思いつかずにコールセンターに電話までしてしまった自分の不明に腹立たしさを覚えた。

 けれども、各地からの質問に対応するコールセンターの人でさえ、事業のコードを回答するのに何分もかかることを考えると、全国で、どれだけの人が、事業コードを捜すのに悪戦苦闘しているか計り知れない。

 全国で600万の事業所に回答を求めているそうだが、「分かりにくさ」が原因で、各事業所で、仮に「1分」の時間が失われたとしても、合計で、600万÷60=10万時間が失われたことになる。時給1000円としても、1億円である。実際は、1分どころではないだろうから、数億円の損失である。

 これまで私が書いてきた「分かりやすさ」というのも、その一つ一つは、重箱の隅をつつくようなこともあり、そこで発生する一人のストレス、失われる時間も、微々たるものかもしれない。けれども、社会全体でみると、このような巨額の経済的損失となるのである。

 だからこそ、多数に向けて情報を発信する人々(多くは、官庁、大企業であろう)にこそ、「分かりやすさが第一」ということを心がけてほしいのである。

リスクの向上は、是か非か?

 ブログにSNS、ネット通販、ネットバンキング等、幾つものネットサービスに加入していると、パスワードを使い分けるのは大変だ。

 このため、少なからぬ人が各サービスで同じパスワードを使用しているという。だが、そんなことをしていると、一つのパスワードを知られてしまったら、他のサービスすべてで、情報を盗まれたり、「なりすまし」をされて大変な被害に遭うことになる。

 昨日の京都新聞が、そういったパスワードの使い回しに警告を発する記事を載せていたのだが、その見出しが首を傾げるようなものだった。
 
リスク向上

 「向上」というのは、単に何かが「上昇する」ということを示すのものではなく、そのことに対する肯定的評価を含んだ、いわば「価値に満ちた言葉」である。リスクが増えるのは、間違いなく、「否定」されるべきことであるから、ここで「向上」という言葉を使うのは、「誤り」である。

 リスクは、増えるのは常に悪であるが、人口、物価となると、微妙である。

 デフレからの脱却が必要と言われる時代であればこそ、「物価が低迷」という表現も成り立つが、1970年代の「狂乱物価」の時代であれば、同じ現象でも、「物価が沈静」という表現が相応しいということになる。

 いずれにせよ、「向上」「低迷」といった「価値に満ちた言葉」を用いる場合は、本当に、その言葉が、そこに相応しいのか、十分に考える必要がある。単純に、上がる、下がる、といった表面的なことだけで言葉を選んでしまうと、趣旨不明の文章になりかねない。

 「価値に満ちた言葉」は、論者の立場を明確に示す点でも、有益である。たとえば、1960年の安保条約を巡る一連のできごとを「60年安保」というのは、価値中立的な表現だが、「安保闘争」「安保紛争」「安保騒動」となると、その言葉を使う者の基本的な立場が自ずと分かるはずである。

何のための数字の区切りか -カンマ-

 今朝のテレビで、画面に数字が出ていたのだが、一部が隠れていた。こんな感じだ。

数字-1


てっきり、360万円くらいだと思ったら、数字が全部現れると、そうではなかった。

数字-2


 こういった、数字を3桁毎に区切る「カンマ」【 , 】は、「万」とか「億」といった漢字と一緒に用いられているのを時折り見かけるのだが、こういうのを見る度に、こういった表現をする人は、何も考えていないのではないかと、思ってしまう。

 数字の3桁区切りは、英語の、「thousand」「million」に対応しているのだから、英語を母国語とする人には極めて自然である。

 日本語は、数字は、本来であれば、「万」「億」と、4桁区切りが分かりやすいはずなのだが、実際は、3桁区切りが普及しているため、それに慣らされているので、一々、右から、「いち、じゅう、ひゃく・・・」と数えなくても、右から二つ目のカンマの左は、百万、三つめのカンマの左は十億と読むことができる。

 その結果、冒頭の例では、「3,6・・」となっていることから、360万と読んでしまったのである。

 そもそも、「万」とか「億」を用いる場合は、連続した数字の並びは、最高で4個なのだから、分かりやすくするために、殊更カンマを書く必要はなく、かえって、私がしたような誤読を誘発するのである。

 このような有害無益としかいいようのない、カンマと「万」などの混在であるが、結構、幅を効かしているようである。

工事開始は、PM22時

郵便受けに入っていた電気工事のお知らせのチラシに、こう書かれていた。 

工事開始は、PM22時


理解できないことはないが、一瞬、?と思ってしまう。

では、こんなのは、どうだろう。

午後12時


よく見かけるのだが、昼なのか晩なのか、どちらを指すのだろう。
「正午」「晩12時」であれば、迷うことはない。

あるタクシー会社に予約の電話をすると、こんなふうに確認される。

では、今から約1時間後の、4時30分ですね。


 以前、絶対指定と相対指定について記事【6階の第一待合室で・・】を書いたが、両方で指定することによって、間違いを極力少なくすることができるのであり、こちらも安心である。

 裁判所で次回期日を指定するときも、裁判官によって色々である。

① 次回は、5月27日、午前10時
② 次回は、5月27日、金曜日、午前10時


 聞く側としては、曜日まで言ってくれる方が、安心だ。

写真の解説は、こうする

 次に掲げるのは、数学者・岡潔の著作を整理、解説した「数学する人生」【新潮社】の中の掲載写真の解説である。
 
岡潔

 問題点を、いくつか列挙する。

【1】 対象と解説は同じ頁に


 上記のように、実際の写真の場所と写真の解説が別の頁になっていると、写真を見る度に、解説頁を開かなければならず、面倒なこと、この上ない。写真の下に、1行の解説を付加することに何の不都合もないと思われる。なぜ、写真とは別に1頁を費やすのだろうか。

【2】 複数人の場合は、特定が必要


 「中央が著者・岡潔」というのもあるが、単に「著者と中谷治宇二郎」とあるだけで、どちらが著者なのか分からないものもある。筆者にすれば、他の写真からの類推で「いちいち書かなくても、分かるだろう」ということかもしれないが、だれもが分かるとは限らないのだから、明記すべきだろう。

 

【3】 年齢か、年代か、いずれかに統一


 「65歳の頃」というのと「昭和41年頃」という表現が混在している。これでは、前後関係は、すぐには分からない。岡潔は、1901年生(明治34年)生まれなので、結局、「65歳の頃」と「昭和41年頃」とは同じなのだが、そんなことは、誕生日を確認の上で一々計算をしないと分からない。
 

【4】 情報を漏らさず記載


 写真の解説に最低限、必要な情報としては、【場面】、【年代か年齢】、【複数人の写真の内のどれか】の3点である。冒頭の例は、これが欠けていため、解説を読んでも、中途半端にしか情報を与えられていないという点でストレスを感じるのである。

 編者は、書籍の中身に神経を集中しているだろうから、そこまでの配慮は期待できないかも知れないが、少なくとも、出版社の担当者くらいは、こういうところにも配慮してほしいものである。

------------------------------------------------------------------------
 なお、その後、この記事を見直した際にも、色々と考えることがあったので、【続編】を書いた【2017.9.14追記】
検索フォーム
プロフィール

「時間泥棒」仕置人

Author:「時間泥棒」仕置人
.

 玉石混淆の情報が溢れる社会の中で、効率よく、的確に、情報を取得し、提供するには、どうすればいいのか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QR