夫は妻のように歌が上手でない・・・括弧をつけても解消できない曖昧さ
朝日新聞に「言葉の食感」というに連載があるが、そこに掲載されていた文例だ。
筆者は、この文は3とおりに理解できるとして、意味を明確にするには、次のようにすればいいと解説している。
数式の場合、計算順序を一義的に明確にするため、括弧が用いられるが、文の場合も、修飾、被修飾の関係を一義的に明確にするために、括弧をつけることも考えられる。上記の【1】~【3】の意味になるように括弧をつけると、次のようになる。
括弧をつけて修飾・被修飾の関係が明確になると【3】の意味は明確になるのだが、【1】【2】は、修飾・被修飾の同関係では区別できない。
つまり、この文が多義的なのは、修飾・被修飾といった文の構造の問題だけではないということだ。
この文では、「のように」の意味が多義的なことに原因がある。
否定の【ない】を除いた【妻のように歌が上手】の部分は、次の二とおりに意味がとれる。
【A】においては、「のように」というのは、「上手か下手か」の二者択一において、妻と同じ、と言っているのに対し、【B】においては、「上手」にも何段階かあり、その「上手」さの「程度」において、妻と同じ、と言っているのである。
夫は妻のように歌が上手でない
【言葉の食感 誤解の「予防注射」 2015.8.1】
筆者は、この文は3とおりに理解できるとして、意味を明確にするには、次のようにすればいいと解説している。
【1】 夫は妻と違って歌が下手だ。
【2】 夫は妻ほど歌が上手ではない
【3】 夫は妻と同じで歌が上手でない
数式の場合、計算順序を一義的に明確にするため、括弧が用いられるが、文の場合も、修飾、被修飾の関係を一義的に明確にするために、括弧をつけることも考えられる。上記の【1】~【3】の意味になるように括弧をつけると、次のようになる。
【1】 夫は【妻のように歌が上手】でない
【2】 夫は【妻のように歌が上手】でない
【3】 夫は【妻のように】歌が上手でない
括弧をつけて修飾・被修飾の関係が明確になると【3】の意味は明確になるのだが、【1】【2】は、修飾・被修飾の同関係では区別できない。
つまり、この文が多義的なのは、修飾・被修飾といった文の構造の問題だけではないということだ。
この文では、「のように」の意味が多義的なことに原因がある。
否定の【ない】を除いた【妻のように歌が上手】の部分は、次の二とおりに意味がとれる。
【A】 妻と同じく、歌が上手
【B】 妻と同じ程度、歌が上手
【A】においては、「のように」というのは、「上手か下手か」の二者択一において、妻と同じ、と言っているのに対し、【B】においては、「上手」にも何段階かあり、その「上手」さの「程度」において、妻と同じ、と言っているのである。