裁判所のホームページ

 裁判所に収める収入印紙の金額は、手続ごとに全国一律の基準がある。

 他方、裁判所に予納する切手代は、各地の裁判所ごとに様々である。

 だったら、裁判所のホームページに一覧表を掲載すればいいのだが、一部の裁判所を除いて、掲載されていない。

 先日、あまり行なったことがない手続の書類を提出したのだが、必要な切手については、提出先の裁判所のホームページには載っていないので、窓口で書記官に尋ねた。

 書記官は、A4大の一覧表を取り出して、当該手続の欄を見つけて、ポストイットに、必要な切手を書いてくれた。500円、252円、100円・・・2円が各3枚、52円と20円が各4枚といった具合である。

 書記官が書いている間つくづく思ったのは、全国の裁判所で毎日、同じような光景が何度となく繰り広げられているのだろうということだ。ホームページに掲載さえしていれば、いちいち裁判所に電話したり、窓口に赴く必要もないし、書記官も、その対応に追われることはない。

 せっかく、ホームページという手段があるのに、それを使わないのは、壮大な無駄というほかはない。

 そこで、その書記官に、ホームページに載せてくれたら、こんな無駄なことをしなくてもすむのにと言ったところ、そう簡単には載せられないそうである。
 
 つまり、必要な切手代は時々改定され、その変更情報をホームページに掲載するとなると、何段階もの決裁が必要なのだそうである。

 いったい、どれだけ煩瑣な手続きが必要なのかは知れないが、いちいち個別に問い合わせをすることによる労力、時間の損失と比較しても、ホームページに載せないだけの合理性があるのか、真剣に検討してもらいたいものである。

 切手代に限らず、裁判所のホームページの掲載すれば、書記官の労力(裏を返せば、書記官に尋ねる弁護士や法律事務所職員の労力)が軽減される情報は、山ほど存在する。このブログを見た書記官の方に、ぜひ、各地で声を上げて、裁判所のホームページを、より充実したものにしていただきたいものである。

兄の名前は「坂上二郎」

Xの兄を「坂上二郎」とする。

 これは、要件事実マニュアルで有名な岡口基一判事の「要件事実入門」の中の説例の一節(同書101頁)である。

 同判事の年齢からして、コント55号の全盛時代に幼稚園児だったことから、「坂上二郎」という名前が刷り込まれているのかもしれないが、兄を「二郎」とするのは、いただけない。

 「二郎」という名前は、どうしても「兄」ではなく、「弟」と結びつく。もちろん、三人兄弟のこともあるのだから、Xが一番下の弟であれば、「二郎」は「兄」には違いないのだが、「二郎」と言われると、上に「一郎」がいるのが自然だし、「二郎」には、どうしても、「弟」という属性の方がなじむのである。

 だから、男二人の兄弟なら、「太郎」「次郎」あるいは、「一郎」「二郎」とするのが、直感になじむし、混乱することもない。

 仮に、兄を「薫」、弟を「忍」としたら、年齢の上下関係どころか、性別まで判然としなくなる。

 法律問題の解説で、登場人物を指すのにX,Yといった無機質な記号を用いず、具体的な人名を用いるのは、よりリアルに事実関係を思い浮かべてもらいたいからである。だとすれば、平凡極まりなくても、名前そのものが、その人の属性を語っているような付け方が好ましい。

 私が中学生のころに、父親が買ってきた一般向けに書かれた法律雑学知識の本があった。中身は、「隣から越境してきた柿の木の実はとってはいけないが、地中を伸びてきて地面から顔を出したタケノコはとってもいい」とか「飲み屋のつけは、一年で時効になる」といった類のものだった。

 その本の説例の登場人物は、鈴木さん、田中さん、といった名前ではなく、説例に則した、それっぽい名前をしていた。たとえば、お金を貸したのは樫田さんで、借りたのは苅田さん、平社員は平野さんで、部長は上野さんである。こんな名前なら、解説を読んでいるうちに途中で誰が誰だか分からなくなって混乱するということもないのである。

 混乱を避ける、という点では、人の名前だけでなく、具体例として数字を挙げる場合にも、注意が必要である。

 たとえば、金銭貸借に関する説例の場合、1000万円借りて500万円を返した、というと、その後に、500万という数字が出てきたとき、それが、残債務の500万円を指すのか、弁済額の500万円を指しているのか、混乱しがちである。

 こういう場合は、1000万円借りて300万円を返した、という説例にしておけば、700万は残債務、300万円は弁済額だから、数字を見て、それを取り違えることも少なくなるはずである。

 他にも混乱を避けるための工夫はいろいろある。

 たとえば、登場人物の居住地でも、一人は島根県、もう一人は鳥取県としたら、混乱するのは目に見えている。一人は東京、一人は北海道というふうにした方が混乱を招かないのは明らかだろう。

切り取らないのに、「切取線」

 弁護士会からは、様々な文書が送られてくるが、なかでも、研修会の案内などの比重が多い。そういった案内文は、たいてい、A4用紙の上の方80%くらいが案内文、下の方20%くらいが出席か否かの回答欄になっている。

 以前は回答欄を切り離して提出するようになっているものも見かけたが、最近では、ファックスでの回答を求めることが多くなったせいか、切り離さず、A4のままで回答するように求めるものばかりである。この場合、案内文の部分と回答欄の部分の仕切りが、以下のようになっているものが多い。
 
 切り取り-1

 「切り取らないで下さい」と書いてあるものの、切り取って提出してもらっていた時代の名残か知らないが、「切取線」らしきものが記載されている。これでは、つい、直感的に、「切り取らなければ」という気になってしまう。

 また、文字で「切り取らないで下さい」と書いてあっても、漢字の部分「切り取」に目が言ってしまう。他方、否定を意味する「ない」は、平仮名であり、インパクトが弱い。その結果、文字部分を読んでも、一瞬、「切り取らなければ」という気になってしまうのである。

 私は弁護士会の法律相談センター運営委員会に所属しているのだが、以前、「法律相談の技法」に関する研修会を行ったことがある。そのとき、委員会のメーリングリストで流れてきた案内文の原稿が、やはり、上記のようなものだった。

 そこで、メーリングリストで提案して、以下のようなものに変えてもらった。

切り取り-2
 

 案内部分と回答部分を区分けするために、一応の仕切りらしきものは入れておく必要があるので、「♪♪」で区切ることにした。これなら、どう見ても、ここで切り取ろうなどという気は起きないはずである。
 
 なぜ、「♪♪」にしたかというと、なんとなく、「楽しそうな」雰囲気が伝わってくるからである。私の発想ではなく、知り合いの税理士さんがメールの署名欄に使っているのを見て、何となく軽快な雰囲気を感じられたので、まねをしたものである。
 
 ところで、今日、裁判所で残郵券(注)の受取をしたのだが、このとき書記官から受け取った文書も、研修会の案内文のように、上の方が残郵券返還の通知書、下の方が残郵券の受領書になっており、やはり、「切取線」が書かれ、そこに、「切り取らないでください」と記されていた。

 そこで、書記官に、切取線は誤解を招きかねないという話をしたところ、多いに共感してもらって、「工夫してみます」という返事をいただいた。今後、どうなるか楽しみである。



【残郵券】 訴訟提起にあたって、裁判所に、収入印紙とは別に、裁判所からの書類の送付に充てるための切手を予め、概算で納付するが、裁判が終わって、未使用の切手が戻ってくることがあり、これを「残郵券」という。「郵券」という言葉は一般には馴染みのない言葉であり、残切手と呼べばいいのにと思うのだが、長年の慣習で、こう呼ばれている。

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 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

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 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

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