「電波OFFモード」なのに電波は通じる?

 病院の中など、携帯電話の使用が禁じられている場所がある。だからといって、電源を切ってしまうと、時計、電卓、カメラ、万歩計など、他の機能も使えなくなり不便である。携帯電話禁止というのは、医療機器が電波で誤作動するのを防ぐためのものだから、電波の受発信さえできないようにしておけば足りるはずである。
 
 こういった目的のために、多くの携帯電話には、「電波OFFモート」というのが用意されている。

 私が使っている携帯電話は、電源ボタンを長押しすると、次の①、②いずれかの表示が出てくる。そこで、この表示を押す(タップする)毎に①②が切り替わるようになっている。
 電源オフ

 ここで混乱を招くのが、「電波OFFモード」という表示である。

 初めて①を目にしたときは、その時点で「電波OFF」の状態になっているのかと思ってしまった。ところが、切り替えると②の表示が出てきて、こちらも、「電波OFFモード」という表示があった。結局、「電波OFFモード」という表示は、現在の状態が、「電波OFF」の状態であるということを示すものではなくて、ここをタップすることによって「電波OFF」にしたり、しなかったり、切り替えられますよ、といった意味を有するに過ぎないことが分かった。

 要するに、この「電波OFF」モード」という表示は、現在、電波が通じるのか否かについては、何も語っていないのである。

 そこで、①の二行目をみると、「ワイヤレス接続をすべて無効にする」と書いてあるので、ここをタップすれば「ワイヤレス接続を無効にする」すなわち、「電波OFF」になるということが分かり、裏を返せば、現時点では「電波OFF」にはなっていないということが分かるのである。

 次に②の二行目の記載であるが、「電波OFFモードを解除します」となっているのだが、要するに「電波ON」の状態にするということである。ところが、「電波」に対して、「OFF」と「解除」の二重否定の形の文になっているため、意味をとるのに一瞬、戸惑うのである。

 では、どのように表示すればいいのか。

 たとえば、次のようにすれば、戸惑うことはない。
電波オン

 もともとの表示との違いは、次の3点である。

 【1】現在、どの状態になっているのかが一目で分かる。
 【2】二行目の説明が、「現在の状態」を示すものではなく、「押した場合にどう変化するか」という説明であることが一目で分かる。
 【3】二重否定を使っていないので、一読して理解できる。

 パソコンや携帯電話の説明には、ここに掲げたように分かりにくい表現が満ち溢れている。なくてもいいような機能は次々と付加されているが、そんなことよりも、ストレスを感じることなく使用できるように表示にも気を配ってほしいものである。

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 最後に、「ワイヤレス接続」という言葉も戸惑いの原因の一つである。要するに「電波による接続」ということで、携帯電話なら当たり前の接続であり、それ以外の接続方法などないのであるが、改まって、「ワイヤレス接続」などという表現を用いられると、何か特別な接続手段のように思えてしまうのである。

 なお、「分かりやすさ」と直結する問題ではないが、①は「無効にする」、②は「解除します」となっている。このように、「である」調と、「です、ます」調が混在していると、「いい加減」な感じがするので、注意しなければならない。もちろん、これは一般論であって、全体として「である」調の文章の中に、一定の効果を狙って「です、ます」調を用いる場合もないではない。


 

6階の第1待合室で・・・ 絶対指定と相対指定と

 先日、とある裁判所の調停に行った際、5階だったか6階だったかにある受付で、こう言われた。
 

6階の第1待合室で、お待ち下さい。


 今いる階が6階のような気もしたのだが、わざわざ「6階の」というのだから、ここは6階ではなく5階かも知れないと思った。念のため、エレベーターホールまで戻って、自分が何階にいるのか確認したところ、6階にいることがわかった。「なんだ、ここが6階じゃないか、だったら、『この階の第1待合室』と言ってくれたよかったのに」と思った。

 外部から初めて、その裁判所に来て、玄関ロビーの案内を見てエレベータで上層階に上がって受付をした人は、一々自分が何階にいるかなど意識はしていない。なんとなく、5、6階、あるいは、10階くらい、といった、ぼんやりとした認識しかないのが普通だろう。

 そんな人に案内をするのだから、「5階」とか「6階」といった数字で階を指示するのではなく、次のように言ったほうが遙かに分かりやすい。

この階の第1待合室
一つ上の階の第1待合室
一つ下の階の第1待合室


 応対した職員にしてみれば、自分のいる階が6階であることは、あまりにも明白なことだから、「6階」といえば、「この階」ということは分かって当然、ということだったのだろう。だから、「この階」ではなく、「6階」という表現になったのだろう。
 
 他方、電話で問い合わせをしたときに、「この階」などと答えられたら、質問をした側は戸惑ってしまう。その場合は、「6階」と答えるのが正しい答え方である。

 これまでも、何度も言って来たことではあるが、相手の知識、関心がどのようなものかを考えれば、自ずと、「分かりやすい」表現ができるはずなのである。裏を返せば、「分かりにくい」表現しかできない人は、相手の立場に思いが至らないということなのである。

 上記のような相対指定(「この階」「一つ上の階」)と絶対指定(「5階」「6階」)の使い分けは、場所の場合に限らず、日時の場合にも必要となってくる。

 たとえば、今日が「3月9日(月曜)」だとして、打ち合わせの期日を約束するとしよう。10日に打ち合わせするのであれば、「10日」とは言わないで、「明日」と相対指定をするのが普通である。「10日」などと言われると、明日よりも、もっと先の日のように錯覚しかねない。逆に、3月20日を指定するするのに、「11日後」と言われると、これも戸惑ってしまう。

 さらに、注意が必要なのは、メールで日時を決める時の場合だ。自分は、「10日」のつもりで「明日」とメールに書いても、相手は、「10日」にメールを見るかも知れず、そうすると、「明日」というのは、「11日」と受け取られてしまいかねない。

 そのようなことにないよう、メールでは、「明日・10日(火曜)」のように、念を入れるのが望ましいと言えるだろう。

 【まとめ】
 以上をまとめると、「起点」ないし「基点」について、両者に共通認識があり、かつ、目的の場所、日時が、起点からあまり離れていない場合は、「相対指定」、そうでない場合は、「絶対指定」がいいと言うことになる。

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■相対指定、絶対指定という用語■

 表計算ソフトのエクセルでは、「相対参照」「絶対参照」という用語が使われている【相対参照と絶対参照の違い】が、これと似たようなものである。ただ、エクセルの場合とは微妙に異なるので、あえて、「相対指定」「絶対指定」という、エクセルで使われているのとは異なる用語を用いた。

 「エクセルの場合とは微妙に異なる」と書いたものの、実は、結構、異なる。
 
 というのは、エクセルの場合、「相対参照」といっても、見かけ上は、初期設定では、「絶対参照」のように見える表現形式をとっているため、非常に分かりにくいからである。

 ネット上で分かりやすい解説を探したのだが、見つからず、上記の【相対参照と絶対参照の違い】が比較的分かりやすいものであったが、これでも、「分かりやすい」とは言えない。

 
 マイクロソフト自体が、「分かりにくい」仕様にしているのが原因なのだが、それを言っても仕方がないので、近いうちに、私が何とか工夫して、「分かりやすい」「エクセルの相対参照と絶対参照」の解説を書こうと思う。
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 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

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