ファイル名の付け方 その2

 前回のブログ【ファイル名の付け方】では、受け取った側が別のファイルと混同しないように、送る側で受け取る側のことを想定してファイル名を付けるべきだということを論じた。

 では、「会報原稿(鈴木イチロー:自己紹介)」という名前のファイルを送った後に、改めて、原稿を訂正して送る場合には、どんな名前を付ければいいだろうか。

① 会報原稿(鈴木イチロー:自己紹介)
② 会報原稿(鈴木イチロー:自己紹介)改訂版
③ 会報原稿(鈴木イチロー:自己紹介)第2版
④ 会報原稿(鈴木イチロー:自己紹介)2015.2.3版
⑤ 会報原稿(鈴木イチロー:自己紹介)2015.02.03版



 受け取った側からすると、①では、最初の原稿との区別がつかなくて困る。

 ②だと、もう一度訂正した場合は、どうするのだろうか。改訂第2版、とかつけるのだろうか。

 ③だと、改訂の度に、第3版、第4版と数字を増やしていけばいいのだから、問題なさそうである。

 ③も④も⑤も、複数のファイルの名前を見たとき、一目で、どれが直近のものかが、すぐ分かる。

 ただ、④と⑤を比較すると、⑤の方が優れている。

 というのは、たとえば、月日の部分が、「2.3」「2.7」「2.10」という3つのファイルがあったとして、エクスプローラでファイルを表示して、「名前」でソートしたとすると、「2.10」「2.3」「2.7」となって、意図したようには並んでくれないのである。つまり、コンピュータは、「2.」の次の数字(「2.10」では「1」、「2.3」では「3」)を比較するので、「10」の方が、「3」よりも、あたかも小さな数字のように解釈されて、先に表示されるのである。

 これに対して、⑤の方法だと、、「02.03」「02.07」「02.10」と意図したとおりに並べることができるのである。数字の頭の「0」が若干うるさく感じられるが、「分かりやすさ」という点からは、「0」を入れておく方がいい。

ゼロ追加

 さらに、何度も訂正をしていると、これで最後だという決意を込めて「最終版」などと付けたくなるものだが、これだけはやめておいた方がいい。「最終版」になるという保証などないのである。「最終版」の後に訂正したものは、「本当の最終版」「究極の最終版」とでも名付けるほかなくなってしまう。

ファイル名の付け方

 弁護士会の広報委員をしていることから、会報の原稿集めをすることがある。

 原稿は、紙ベースではなく、ワード、一太郎などのファイルをメールで送ってもらうという形で集めるのだが、その原稿の名前の付け方が、実に様々である。たとえば、こんな具合である。

① 原稿
② 会報原稿
③ 会報原稿(自己紹介)
④ 会報原稿(鈴木イチロー:自己紹介)


 どれがいいか、今さら、言うまでもないことである。

 会報の原稿など書いたことのない人にとってみれば、②の「会報原稿」であっても、自分のパソコンの中では識別できる訳だし、ファイルが、その人のパソコンの中に止まる限り、「会報原稿」という名称でも、何ら問題はない。

 しかし、「会報原稿」という名称のファイルを受け取った人の立場を考えれば、不親切極まりない名称である。

 要するに、「分かりやすさ」ということは、どれだけ、相手の立場に配慮できるか、に係ってくることである。このブログでは、技術的なことを色々と書いているものの、結局は、相手の立場に配慮するという、社会生活の基本にかかわることなのであり、その姿勢を失わず、あとは、徹底して考えれば、自ずと「分かりやすい」文章が書けるはずである。

 もちろん、「考える」といっても、一から考えるのではなく、先人の考えたことを、「技術」として学んだ上で、具体的場面に即して「考える」のが効率的であることは、いうまでもない。

 そういう訳で、このブログの読者の皆さんは、読みっぱなしにせず、ここに書かれていることを我がものとし、さらに、周囲の人に、このブログを読むことを奨めてほしい。

 回り回って、私の所に届く文章も、「分かりやすい」ものとなれば、私が他人の文章を読む際のストレスも軽減されるというものである。「情けは人のためならず」というのは、こういうことを言うのかも知れない。

政府は日本の原子力発電所の段階的廃止を予定している

 

政府は日本の原子力発電所の段階的廃止を予定している。


  政府が段階的廃止を予定しているのは、次のどちらだろうか。
 

① 現に存在する原発の全て
② 現に存在する原発のうちの幾つか


 何となく①の意味のようにとってしまいそうだが、①ではなく②である可能性も否定できない。

 これが英語だと、次のようになる。
 

① The government plans to phase out the nuclear power plants in Japan
② The government plans to phase out nuclear power plants in Japan.


 英語の定冠詞「the」については、たんに「決まったもの」に付けると思いがちだが、「決まったものの全ての」という意味を含んでいる。だから、英語だと①(全て)か②(幾つか)か誤魔化しが効かないのである。

 この例は、マーク・ピーターセン氏の「実践 日本人の英語」の35,36頁に載っている例である。

 同書は、豊富な具体例を挙げて、日本人が書くおかしな英文を、どうすれば正しい英文にできるかということを懇切丁寧に解説している本であるが、単に「英訳」のためにだけ利用するのではもったいない。

 英語を通して、日本語の持つ特質を浮かび上がらせてくれるのである。

 上の例では、日本語だからこそ、「原子力発電所の段階的廃止」という表現で、全ての原発を廃止すると思わせておいて(①)、実は、あとから、「『全ての原発』とは言ってません。幾つかの原発を廃止するという趣旨でした」(②)という逃げが可能になるのである。

 振り返って見れば、菅内閣のときには、「脱原発」と言っていたのが、野田内閣になった頃から、「脱原発依存」と表現がが変わったように思う。

 どちらも、①全ての原発をやめるのか、②一部の原発をやめるだけなのか、必ずしも鮮明でないが、「脱原発」は、どちらかと言えば①、「脱原発依存」は、どちらかと言えば②のように受け取られるだろう。

 そういう意味では、野田総理の方が、「正直」だったのかも知れない。いや、菅総理は、その後の言動を見ると、本当に①と考えていたのかも知れないが、真意は神のみぞ知るところである。なお、当時の菅総理の言動がどのようにうけとられていたかについては、次のブログを参照されたい。【白い菅でも、黒い菅でも・・・

 今日は、だいぶ「分かりやすさが第一」から脱線してしまったようだが、「分かりやすい日本語」を書く上で、英語の勉強が非常に役に立つということを理解してほしかったのである。

 もちろん、ここでいう「英語の勉強」とは、上に挙げたような「英作文」だけでなく、日本語への「翻訳」の勉強も含むものである。

 以前、【「分かりやすさ」を追究するための必読文献】で、3冊の本を紹介したが、これに加えて、次の2冊を紹介する。

【和文英訳】
 マーク・ピーターセン 「実践 日本人の英語」【岩波新書

【英文和訳】
 安西徹雄 英文翻訳術 【ちくま学芸文庫

罰金陛下

懲役だけでなく罰金を併科される場合もあります。


 今朝のテレビで詐欺商法の解説をしていた弁護士の説明だが、「へいか」というのが少し気になった。

 直前に、「懲役だけでなく罰金を」とあるのだがから、「へいか」と言われたからといって、「陛下」や「平価」や「兵火」とは取り違えようのない話である。

 それでも、「併科」という単語は、弁護士には馴染み深い言葉であるものの、一般の人には疎遠な言葉である。この番組の直前に皇室の話題があったら、一瞬であっても「陛下」を思い浮かべる人もいるだろうし、通貨問題の話題だったら「平価」、イスラム国の話題だったら「兵火」を思い浮かべても不思議ではない。

 日本語は同音異義語が多いと言われており、それが誤解の原因ともなるのだが、同音異義語は、日本古来の「やまと言葉」には少なく、中国由来の漢語に殊のほか多い。日本人からすれば、同音異義語であっても、中国人にとっては、「四声」で区別されるから問題は少ないのだろうが、日本語の場合は、話し言葉で漢語を多用すると、一瞬であっても、取り違えたり、意味をつかむまでに時間がかかってしまうことがある。

 従って、話し言葉に限っての話ではあるが、できるだけ、やまと言葉を使うのが望ましいということになる。たとえば、こんな具合である。

併科される → 併せて払わされる
換価する → お金に換える
看過する → 見過ごす
感化する → よい影響を与える
精査する → 詳しく調査する


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「時間泥棒」仕置人 (改称予定)

Author:「時間泥棒」仕置人 (改称予定)
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 玉石混淆の情報が溢れる社会の中で、効率よく、的確に、情報を取得し、提供するには、どうすればいいのか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

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