検察官A出席の上審理し、次のとおり判決する。

右の者に対する窃盗被告事件について、当裁判所は、検察官A出席の上審理し、次のとおり判決する。

                              【司法研修所「六訂 刑事判決起案書の手引」10頁】

 

 この文は、さほど分かりにくいものではないのだが、読んでいて若干、引っかかるのが、「出席の上審理し」の部分だ。

 なぜ気になるかの説明は後ほど行うことにして、まずは、日本語の文字について考えてみよう。

 日本語は、漢字と仮名という二系統の文字が混在しているが、この両者が適度に混在することによって、文の構成単位が明確になり、結果として、理解しやすくなっている。

 これが、仮名だけなら、こうなる。

 にほんごは、かんじとかなというにけいとうのもじがこんざいしているが・・・

 一目見ただけでは、どこまでが一つの単語なのか分からず、一文字ずつ読んでいかないと理解ができない。

 逆に漢字だけならこうなるだろう。

 日語是漢字和仮名両系統混在・・・

 平仮名ばかりの文に比べれば読みやすいが、どこまでが一つの単語なのか分かりにくい点では、変わりない。

 これが漢字と仮名が、単語ごとに交互に出てくるなら、単語の切れ目が一目瞭然で、理解もしやすい(ここで、「単語」と言ったが、厳密には、「単語」ではない。動詞や形容詞では、語幹が漢字、活用語尾が仮名となっている)。

 そこで、上記の「検察官A出席の上審理し」に戻る。

 どうしても、「上審理」が一塊に読めてしまい、ほんの一瞬ではあるが、戸惑ってしまうのである。

 これを解消する方法は、二つある。

 A 出席のうえ審理し

 B 出席の上、審理し

 Aは、「のうえ」が一体化して読めるので、Bの方が読みやすいだろう。

 実は、この話、私が司法修習生のときに、とある裁判官から伺った話である。それ以来、文を書く際には単語の切れ目に注意を払うようにしている。

 単語の切れ目を明確にする方法としては、次の3つの方法があるが、何と言っても、①が最も自然である。

①漢字と仮名を交互に使う
②読点「、」で区切る
③括弧で括る 

 さて、上記のように日本語は漢字仮名交じり文という極めて優れた特質を持っているのである。その点で、漢字ばかりの中国語より優れているし、漢字を廃止してハングルだけにした韓国語よりも優れているのである。
 
 せっかく、日本語には、このような優れた特質があるにも関わらず、漢字を使うべきところを平仮名にして、ことさら読みにくくなっている文を目にすることがある。

 覚醒剤 覚せい剤
 斡旋  あっ旋
 貼用  ちょう用

 常用漢字(昔の当用漢字)にないという理由で平仮名が用いられていたようだが、単語を構成する漢字の一部が常用漢字ではないという理由で、そこだけを平仮名にするなど、「分かりやすさ」という点では、論外である。

 なお、貼用については、近時、「貼」の字が常用漢字になったので、上記の問題は解消した。

 ちなみに、先ほどの漢字ばかりの文は、私が、適当に「中国語風」に作っただけなので、正しい中国語であるとは保証できません。
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 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

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