直感に頼らない説明

 野球の中継は滅多に見ないのだが、たまに見ると、解説者が 「いい球は見逃してはいけません」「悪い球は、絶対、打ってはいけません」などと言っている。

 間違ってはいないが、全く無内容である。どうすれば、いい球を見分けることができるのか、それを語らなければ意味がない。

 似たような話だが、今日、詰将棋の解説で、こんな説明を目にした【実戦型詰め将棋三手五手七手詰め 中原 誠/著   日東書院本社】。
 
中原

 要するに、5手詰めでは1手目と3手目が急所で、それが分かれば、解けたも同然、ということらしい。けれども、そのことを教えてもらったからと言って、どれだけ、詰将棋が強くなると言うのだろう。

 「急所」とされる、1手目をどうやって見つけるのか、その方法についての説明がなければ、何の力にもならない。

 中原永世名人のような人になれば、直感的に急所の1手目が見えてしまうために、素人が、どうやって1手目を見つけるのか、ということが説明できないのかも知れない。

 そういう点では、解説者、指導者としては、天才的な棋士は不向きなのかも知れない。

 もちろん、人間が解く以上、ある程度の直感に頼らざるを得ないのは確かであるが、その直感は、素人レベルでも働くような直感でなければならず、天才レベルの直感を前提にされても、素人には、まねのしようがないのである。

 この問題に即して言えば、私のような素人(多分、2、3級)でも持てる直感としては、「4一」から玉が逃げ出しそうなので、それを止めなければならない、という程度の直感である。

 その直感を前提に解き方を解説すると、次のようになる。

 ① 「4一」からの脱出を防ぐ攻め方の手は、「4一」に効き、かつ、王手になる手でなければならない。

 ② 玉は、「3二」にいるので、結局、「4一」と「3二」の両方に効く手でなければならない。

 ③ 「4一」と「3二」のような斜め2箇所に同時に効く駒は、金と角しかない。

 ④ すると、結局、「3一金」「2三角」「1四角」の3とおりしかない。

 ⑤ 「3一金」の場合、玉方の手は、「2三玉」しかない。

 この先は、延々と場合分けをして、玉を詰ますことが出来る手順を見つけるしかなく、解説としては、結構、長くなってしまう。

 もちろん、⑤から先でも、直感により検討するまでもない手もでてくるだろうが、それは、人それぞれである。

 人それぞれである以上、解説者が直感を前提とした「解説」をしてしまったら、置いてけぼりを食わされる読者も出てくるはずである。

 とは言っても、まったくの初心者を想定した解説だと、ある程度の棋力の読者にとっては、冗長に過ぎるという不満も出てくるのは確かであり、どこかで、「直感」に頼った解説をせざるを得ないのも事実であり、解説者も悩むところであろう。

 けれども、冒頭の中原永世名人の解説では、誰に役にも立たないことは間違いない。

医院の診療時間は、こう書く

 街で見かける医院の前には、診療時間を表す次のようなプレートがある。

模範

 一目瞭然で、これ以上、分かりやすくは、しようがない。

 ところが、中には、一目見ただけでは分からない、次のようなものもある。

医院


 休診日の欄に「水曜・土曜午後、日曜・祝日」とあるのだが、果たして、水曜は終日休診なのか、あるいは、午後だけ休診なのか、すぐには、分からない。

 曜日の区切りに、「・」と「、」の二種類を使っていることから、仮に水曜が終日休診だとすると、「水曜、土曜午後、日曜・祝日」と書くのが自然なように思われ、そうすると、「水曜・土曜午後」となっているのは、水曜は土曜と同じく午後休診だ、ということのようにも考えられる。

 一応、こんなふうに考えられるものの、絶対そうだ、とは言い切れないだろう。

 次は、同じビルにある薬局なのだが、これも分かりにくい。 

薬局

 終了時刻について、12:30の右に18:30を配置しているのは、終了時刻が水・土は早く月・火・木・金は遅いことが直感的に理解できるので、この工夫は結構である。

 ところが、開始時刻は、どの日も、9:30であるにも関わらず、水・土は、少し右に配置している。その結果、直感的には、水・土は、開始時刻が遅いように思えてしまうのだが、数字を読めば、開始時刻は同じことが分かる。
 
 なぜ、こんなふうに、ことさら誤解を招きそうな表現をするのか、私には理解できない。


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 昨日、冒頭で、「一目瞭然で、これ以上、分かりやすくは、しようがない。」ご書いたのだが、もう一工夫の余地があった。

模範-2

 背景色を変えることによって、休みがいつか、ということが、瞬間的に脳裏に焼きつけられる【2018.3.15 追記】。



色使いに要注意

 街に出ると、ブログの素材に事欠かない。

 次に掲げるのは、御所の散歩の帰りに見かけた小学校の掲示板のポスターだ。
 
挨拶

 ぱっと見には、「から元気に    しよう」としか読めない。

 近づいて見ると、なんとか、「自分から元気にあいさつしよう」と読むことができる。「自分」と「あいさつ」を強調しようとして、文字の色を「赤」にしたのだろうが、褪色してしまい、意図とは逆に、強調したかった部分が読めなくなっているのである。

 あと数年もすれば、「青」の「元気」の部分も褪色が進み、「から  に     しよう」となってしまうのは間違いなさそうだ。

 次に掲げるのは、大阪の地下鉄堺筋線の車内のドアの上の案内板だ。

ドア


 南森町の下に、 左 とあるのは、同駅では、左側のドアが開くことを示している。他方、天神橋筋六丁目の下の  は、「右」と書いてあるのだが、非常に読みくい。 

 文字の背景を黄色と青色に分けるのは、違いを際立たせるという点では大変結構なのだが、濃い青色だと、文字の黒と明るさに差がないため、文字が読みにくくなっているのだ。こんなときは、文字の色を白にして、  とすれば、ずっと読みやすくなる。




借りている資料=貸出状況 ?

 私が利用している図書館では、ネットで本を検索・予約して近くの分館まで本を取り寄せ、分館で本を受け取ることができる。大変、便利で、日常的に利用している。

 また、自分の借りている本の返却期限や、予約した本の取り寄せ状況も、下記の図のように、ネット上に「Myライブラリ」というのがあって、それを見れば、いつでも自分で確認できるようになっている。
 
ライブラリ


 一番上の[A]が、「Myライブラリ」のメニュー画面で、「借りている資料」をクリックすれば[B]の画面が出てきて、「予約した資料」をクリックすれば[C]の画面が出てくるようになっている。

 問題は、「借りている資料」をクリックしたのに、出てくる画面の表題は、「貸出状況一覧」となっている点だ。

 どちらも、「意味としては同じ」なのだが、「外見も同じ」でなければ、利用者は戸惑ってしまう。

 図書館のシステムの作成者は、[A]のメニューでは、「利用者の視点」から、「借りている」という表現をしたのだが、[B]では、「図書館の視点」から、「貸出」という表現になったのである。

 これに加えて、[A]では、「資料」、[B]では「状況」と異なる表現を用いている。実質的には同じことなのだが、「資料」と「状況」は明らかに異なる概念であり、状況によっては使い分けが必要なこともあるが、ここで使い分けるのは、混乱の元である。

 上記で指摘した「不統一」による「分かりにくさ」は、ちょっと気を緩めると、誰でも冒してしまい勝ちなものである。

 振り返って見れば、依頼者の方に、あるときは「裁判」、別のときは「訴訟」と言ったり、「口頭弁論」とか「期日」とかを無頓着に使うことがあり、依頼者の方を混乱させているのかも知れない。
 
 使う側は、「同じもの」として使っていても、部外者にとっては、「同じ概念」のような気もするが、ひょっとすると「別の概念」ではないか、という思いをすることがあるのだから、いくら注意してもし過ぎることはない。

 ところで、「貸出状況一覧」の画面の右上には、「予約状況一覧」とあり、ここをクリックすれば、「予約状況一覧」の画面に飛べる。逆に「予約状況一覧」の画面から「貸出状況」の画面にも飛べるのだが、クリックするのは、画面の右上ではなく、中央下部の「貸出状況一覧」の文字の部分である。

ライブラリー・2

 何も考えずに普通にやれば、同じような仕様になるはずなのだが、あえて異なる仕様にしているのは、私には理解できない深い事情があるのかも知れない。






弁護士の取扱業務

 各地の弁護士会では、市民が弁護士を利用しやすいように、所属会員のプロフィールをネットで公開している。中でも重要なのが、個々の弁護士の取扱業務である。

 取扱業務の表示方法は各弁護士会で様々なのだが、次に掲げる二つの弁護士会の表示方法を見比べて、どちらが分かりやすいか考えてほしい。

 ただ「考えてほしい」と言われても戸惑う人もいるかも知れないので、たとえば、次のような問題を相談できる弁護士を弁護士会のウェブサイトで調べる場合を想定してほしい。

  ① 夫のDVに悩まされており、弁護士に頼んで離婚をしたい。
  ② 交通事故で保険会社が提示した賠償額で示談をすべきか否かを相談したい。

 
業務

 
 まず、①のDVを理由に離婚したいという場合、A弁護士会の甲弁護士のプロフィールを見ると、取扱業務として「離婚・家族関係」と記されていたとする。早速、電話で予約をして甲弁護士のもとを訪ねた場合、こんなことも想定される。

 相談者:実は、夫のDVが酷くて、離婚をしたいんですけど。
 弁護士:申し訳ありませんが、私は、DV事件はしていないんです。
 相談者:ネットで見たプロフィールには離婚事件をやっていると書いてあったんですけど。
 弁護士:一般の離婚事件はやってますけど、DVに絡んだ事件はしていないんです。
 相談者:だったら、離婚事件とだけ書のじゃなくて「DVは除く」と書いくれていれば、無駄足を運ばずにすんだじゃないですか。
 弁護士:でも、DV事件をする人は「DV関係」と載せていて、私は「DV関係」と載せていないんですから、分かるはずじゃないですか。
 相談者:ほかの人のも見比べれば、分かるかも知れませんが、それって、不親切なんじゃないですか。

 これに対して、B弁護士会のような記載法であれば、「DV関係」には●が付いていないのだから、DV事件をやらないことは、誤解の余地なく、分かることである。

 次は、②の交通事故の相談をする場合である。

 A弁護士会の方は、ずらっと並んでいる取扱業務を最後まで一つずつ確認して、「交通事故」という記載がないことを確かめないと、その弁護士が交通事故を取り扱っていないことは分からない。

 他方、B弁護士会の方は、「交通事故」の欄に●が付いていないのを見れば、交通事故を扱っていないことが分かる。

 一般に何かが「ない」ということを確認するのは、大変である。

 例えば、試験の合格発表でも、ぱっと見て自分の番号が見つからなかったとしても、何度も見なければ不合格だということに確信が持てず、見落としではないかと気になってしまう。

 もし、番号の前に〇や×の記号をつけるという方法で発表してくれれば、一度見ただけで、納得できるだろう(「分かりやすさ」の点では、そのとおりなのだが、実際に、こんな方式がとられていないのは、不合格という事実をあからさまに突きつけるのは気の毒だ、という配慮かも知れない)。

 さらに、こんなことも考えられる。

 19歳の息子が逮捕されたので弁護士に相談しようと考えた人は、A弁護士会の記載例だと、取扱業務に「刑事事件」とあれば、当然、その弁護士に相談にのってもらえると思うだろう。

 刑事事件と少年事件を分けて、単に刑事事件という場合は少年事件は除くのだ、というのは、弁護士側の論理であって、一般の人に、それを押しつけても始まらない。

 B弁護士会のように、「刑事事件」のすぐ下に「少年事件」とあれば、「刑事事件」というのは、成人の刑事事件に限るということを理解してもらえるだろう。より明確にするには、「刑事事件(成人)」「刑事事件(少年)」という記載がいい。

 以上の三つの例を見れば、B弁護士会の方が市民に優しい弁護士会と言えるのは明らかだろう。

永世名人、永世竜王の条件は?

 藤井六段の活躍が多くの人の関心を呼び、各地の将棋教室で生徒が急増しているそうだ。

 かくいう私も、日本将棋連盟のウェブサイトを見て、詰め将棋を解いたり、棋戦の勝敗を確認するようになった。

 今回の将棋ブームは、もちろん、藤井六段の活躍が最大の要因であるが、羽生竜王の永世七冠達成も寄与していることは間違いない。

 そこで、この「永世」の称号なのだが、これを得るための条件は、こうなっている(【日本将棋連盟】 王座だけは、「永世」ではなく「名誉」)。
 
永世-1

 念のため補足すると、例えば、永世竜王になるには、連続して5期竜王になるか、あるいは、通算で7期竜王になればいい、ということである。

 表のとおり、各タイトルで条件が異なるのだが、この表を睨んでいても、どのタイトルが「永世」の条件が緩やかなのか厳しいのかは、なかなか分からない。

 分かりにくさの原因は、条件が、「連続」「通算」と二系統出てくるためだ。さらに、この両者が、まったく独立の条件ではなく、例えば、「5期連続」だと当然に「5期通算」になるように、部分的に従属関係にあることも、分かりにくさの原因だ。

 そこで、「永世」の条件を、二次元の図で表現してみた。
永世-2


 図にすると、各タイトルで「永世」の称号を得られるのが、どのような場合かが視覚化される。視覚化されると、条件の緩やかなものから厳しいものへと、順に、名人=棋聖 < 竜王 < 王位=王座 < 王将・棋王 となっていること、また、王将と棋王は、どちらが厳しいとは一概に言えないことが、よく分かる。



 

毎月、第1土曜と日曜はポイント5倍セール実施中

 地元の生協のウェブサイトに、こんな記載がある。

毎月、第1土曜と日曜はポイント5倍セール実施中


 「日曜」というのは、第1日曜に限るのか、限らないのか、これだけでは、分からない。次の、いずれかにすべきである。

① 第1土曜と第1日曜は、ポイント5倍セール実施中

② 日曜と第1土曜は、ポイント5倍セール実施中


ここまで書いて、ふと思った。あるいは、上の①②のいずれでもなく、こういうことかも知れない。

③ 第1土曜と、その翌日の日曜は、ポイント5倍セール実施中


 第1土曜の翌日の日曜は、第1日曜であることが多い。けれど、日曜で始まる月の場合は、第2日曜になる。だからこそ、ウェブサイトには、日曜の前には「第1」と付けなかったかも知れない。

 どちらにせよ、ポイントが特別に加算されるか否かの問題なのだから、こんな曖昧な記載を放置していると、ウェブサイトを見て本来の趣旨と異なる理解をした買い物客との間でトラブルにもなりかねない。

ところで、上記①~③の例には、「日曜」を明確にした点以外にも、2点ほど、元の文と違うところがある。

 まず、「毎月」というのを削除した点である。特に何も書かなければ、「毎月」であるのは当たり前のことであり、ことさら書く必要はない。必要のないことは書かない方がいい。

 次に、「日曜」の後に読点「、」を入れた点である。いわば「要件」の部分と「効果」の部分とを明確に分けることによって、読者の頭に内容を刻みつけようとしたものである。


「のご案内」

 最近、駐車場の案内に関する記事を結構、書いているが、また、駐車場の案内が目に入ってしまった。

第2駐車場


 「進行方向へ60m」となっており、初めて見る人でも間違いようがない【駐車場入口は蛤御門へ】。

 さらに、「60m」というのも、いい。正確に計ったら、本当は、58メートルかも知れないが、これでいいのだ【駐車場から事務所まで、58メートルです】。

 あえて、問題点を指摘すると、「第二駐車場のご案内」の部分であり、二行に分かれて、二行目が、「のご案内」となっている点である。

 一瞬ではあるが、「のご」という二文字が目に入ってきて、つい意味を考えてしまう。うしろに「案内」とあるのだから、先頭の「の」は助詞の「の」であり、「ご」は「御」の意味だということは、すぐに分かるのだが、一瞬でも惑わせることのないよう、一工夫ほしいところである。

 「の」を「第二駐車場」の末尾に付け加えるとか、「の、ご案内」とするか、あるいは、「ご」を「御」にするとかすれば、「のご」で迷うこともない。

 このことを抽象化すると、意味の切れ目を、視覚的な切れ目一致させる、ということになる。

 そして、視覚的な切れ目というのは、こういうことである。
    文字と文字を離す 
    区切り(区切り文字、罫線、スペース)を入れる
         【「長田近年」裁判官】 【スペースの効用
    文字そのもの(種類、大きさ、色、等)を変える



表が嫌だとは言わせない

 以前、遺産分割調停で相手方代理人から提出された書面を見て頭がクラクラした。不動産の評価の仕方で、妻の相続分が、どう変わるかをシミュレーションしているのだが、こんな感じだった。

 【1】A不動産の評価を、1500万円とした場合(固定資産産評価額)
   預金 1000万円
   相続財産合計 2500万円
   妻の相続分  1250万円
 
 【2】A不動産の評価を、2000万円とした場合(甲不動産(株)査定額)
   預金 1000万円
   相続財産合計 3000万円
   妻の相続分  1500万円
 
 【3】A不動産の価格を、1800万円とした場合(乙不動産(株)査定額)
   預金 1000万円
   相続財産合計 2800万円
   妻の相続分  1400万円 


 上の例は、提出された書面を単純化したものだが、実際は、他にも相続財産がいくつかある上に、「特別受益」「遺留分」なども登場して、それらが、3頁にわたって延々と記載されていた。

 こんな書面を前提に考えようとしても、とても考える気力が湧いてこない。そこで、私の方で、エクセルで一覧表を作り直して、裁判所に提出した。こんな表だ。

遺産


 不動産評価の違いは、横一列に並んでおり、一目瞭然だし、結果としての、妻の相続分の違いも、一番下の行に並んでおり、これも一目瞭然だ。

 他方、最初の書面だと、いちいち、頁をめくって該当部分を探さなければ、上記のことは分からない。私には、こんな効率の悪いことは耐えられないのだが、こういった書面が書ける人は、並外れた忍耐力の持ち主なのだろう。

 遺産分割にせよ、交通事故にせよ、弁護士業務において、各種の数字を扱わなければならないことが多いのだが、そんなとき、表にするかしないかで、一覧性に大きな違いが出てくる。

 30年前ならいざしらず、エクセルのような便利な表計算ソフトがある今の時代に表にできるものを敢えて表にしない、ということは、許されない。民事訴訟規則を改正して、表にできるものは表にするように義務づけてほしいものである。

 文章でだらだら書くのではなく、表にすべきだということは、これまでも繰り返し書いてきたが、それだけ、重要だということである。

   【期限内に提出されたものが・・・
   【表にするしかない!
   【営業時間の表示は、こうする



「乱れ」を可視化する

 書棚に「○○全集」が並んでいる。最初は番号順に並んでいても、長い間に、少しずつ順番が乱れて来る。こんな具合だ。

本-1

 ときおり思い立って、番号順に並べ替えるのだが、背表紙の数字を一つずつ見て直して行くのは、面倒といえば面倒な作業だ。

 では、数字が、こんなふうになっていたら、どうだろう。

本-2

 一目で、7、8、11が定位置からずれているのが分かり、すぐに正しい順に直すことができる。

 番号が斜めに振られていることの効用は、これだけではない。

 正しい番号が左上から右下にかけて一直線に並んでいれば、取り出した本を元の位置と違うところに戻せば、この一直線の列を乱すことになるので、嫌でも、元の位置に戻そうという意識が働き、その結果、順番が乱れることはなくなる。

 つまり、「番号の乱れ」が、いちいち数字を見なくても、図形的に「直線の乱れ」として印象づけられるため、そうならないようにと気をつけることになるのだ。

 もともとの番号が斜めに一直線になっていなくても、自分でシールを貼って、整列したときに、シールの並びを斜め一直線にすることはできる。こんな具合だ。

本-3

 この方式は、学生時代に、ある図書館で見かけたものだ。最初は、「この斜めのシールは何だろう?」と思ったのだが、実際に職員が本を元に戻すのを見て、妙に納得したのだった。

 40年も前の話だが、その後、こういった並べ方を目にする機会は、数えるほどしかなかった。

覚えるための工夫 違いを際立たせ、視覚的に印象づける

  ここ1、2年のことだが、セスキ炭酸ナトリウム(セスキ炭酸ソーダ)という物質が、安価で、べとつかず、手軽に洗剤として利用できると話題になっており、我が家でも、台所周りや、テーブル、床などの、ちょっとした汚れを取るの利用している。

 どんな物質か、ネットで、あれこれ調べてみたのだが、似たような言葉が出てきて、すぐに、どれがどれだったか分からなくなってしまう。そこで、自分で整理してみたのが、次の図だ。

セスキ炭酸ソーダ


 ここでの「分かりやすさ」の工夫は、①②③に共通の「炭酸ナトリウム」の部分は、普通の黒い文字で、異なる部分「セスキ」「水素」「重」を、赤い太文字で記したことだ。

 単に見たり聞いたりしただけだと、「炭酸ナトリウム」の部分に注意が行ってしまい、それぞれの物質で異なる「セキス」「水素」「重」などの印象が薄くなる。そこで、その部分を視覚的に印象づけようとしたのである。

 あと、覚えにくいのが、「セスキ」だ。いくら覚えたつもりになっても、しばらく経つと、「セキス」だったか「セスキ」だったか、怪しくなる。こんな場合も、視覚に訴えるのが有効だ。次の図を見てほしい。
 
覚え方

 要するに、五十音の表の「セ」から「ス」を通って、右上の「キ」に達する流れを一度、印象づけてしまえば、もう忘れようはない。

 記憶のために五十音の表を利用できる例は、他にもある。

 最近、総理が訪問して話題になった「バルト3国」と言われても、3か国の名前は言えても、その位置関係まで言える人は、少ないだろう。

 北から順に、エストニア、ラトビア、リトアニア、となっているのだが、最初の一文字が「エ」「ラ」「リ」で、五十音の順に並んでいる。そのことに一度、気づいてしまえば、もう忘れることはない。

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 上記のように、共通部分が長いために、その部分の印象が強くなり、逆に、違いの部分の印象が薄くなる、ということへの対策としては、共通部分を省略する、という方法もある。

 たとえば、フランチャイザー、フランチャイジーなどは、フランチャイズ業界の人にとっても、煩わしいもののようで、「ザー」「ジー」と省略されている【全国FC加盟店協会 「米国でのフランチャイズ契約期間中におけるザーの行為の規制」】。

 もっとも、「ザー」「ジー」と言ったところで、日本人には馴染みがない言葉であり、根本的な対策としては、「本部」「加盟店」と言い換えるのが適切である【フランチャイザーの・・・】。   【2018.1.22 追記】


ムーミンの舞台より、こちらに注目 部分は全体を表すとは限らない【続編】

 大学入試センター試験の地理の出題に疑問が呈されている【地理Bのムーミン設問に疑問 阪大大学院 毎日新聞2018.1.15】。

 その疑問というのは、試験問題は、ムーミンの舞台がフィンランドであることを前提にしているが、この前提が正しいとは言い切れない、というものである。

 私自身、地理が大好きで、大学受験では、ほとんどの生徒が世界史、日本史を選択する中で、世界史と地理を選択した。そんなこともあって、早速、どんな問題が見てみると、上記の疑問とは直接の関係はないのだが、こんなグラフがあった【大学入試センター試験 解答速報2018 東進ハイスクール】。

  
地理問題

 このグラフで問題なのは、グラフの下に並んでいる凡例の「キ」の前の長方形の図形である。長方形の上辺と下辺が二重線になっており、この図形が円グラフの中の橫縞を付した部分に対応しているということは、直感的には分からない。

 この問題については、つい先日の記事【部分は全体を表すとは限らない】にも書いたので、そちらを見てほしい。

 大学入試センター試験という、何十万人という若者の人生を左右しかねない試験において、ここまで「分かりやすさ」への配慮がなされていないことに唖然とした。

 ただ、翻って考えると、試験問題を作成したのは、大学の先生であり、日常的に学会などで研究発表を行っている人々なのだが、そんな人々の多くが「分かりやすさ」に何の配慮もしていないことは、以前にも紹介した【伝わるデザインの基本】を見ればよく分かる。
 

研究者を相手にする研究発表や研究者でない人を相手にするアウトリーチ活動などの科学コミュニケーションにおいて、研究者や学生は、自身の成果やアイデアを正確にかつ効果的に聞き手(聴衆や審査員)へ伝える必要があります。これらのことを意識せず、ただ闇雲に発表するだけでは、コミュニケーションは成立しません。    (ラインマーカーは、引用者が付加)


 上記のサイトの作者は、自らも自然科学の研究者なのだが、冒頭で、このように訴えているということは、日常的に目にする研究発表の多くが、「分かりやすさ」に関して無頓着に、「闇雲に」なされている、ということであろう。


パスワードは、 20180118 です。

 今日は、2018年1月18日だが、先ほど、こんなメールが届いた。 

ご依頼の資料を添付しました。
パスワードは、 20180118 です。


 私の方は「秘密」でなくとも構わないのだが、先方は、おそらく社の方針で、メールに資料を添付する際には一律に暗号化することになっているのだろう。

 暗号化された文書のパスワードというのは、大抵、p5wEQ45owD と言った、それ自体は全く意味のない、とても覚えられそうにない英数字の組み合わせというのが相場である。

 ところが、ときおり、今回のように、その日の年月日を、そのままパスワードにしたものが送られてくる。大変「分かりやすい」のだが、誰にとっても「分かりやすい」わけであり、不正に添付資料を入手した者でも容易に資料の中身を見ることができる。

 さらに、このメールの問題は、資料を添付したメールの本文に、パスワードが記されていることである。金庫と鍵をセットで送るようなものであり、暗号化した意味はない。

 こういったことが起きてしまうのは、ただ、社内で「添付ファイルは暗号化する」ということだけが一人歩きして、その意味が全然、理解されていないからである。上記のメールを送ってきたのは、誰もが知っている大企業なのだが、毎日、膨大な数の、無駄に暗号化された資料が発信されているのだろう。

 ところで、パスワードの送り方なのだが、別のメールで送れば安心か、というと、そうでもない。資料を添付したメールが誤って他人に送付されたり、悪意の第三者によって、意図せぬアドレスに送られたりした場合、パスワードを記したメールも、同じ運命を辿る可能性が高い。

 電話なりファックスなり、全く別のルートで送る方が、ずっとリスクは軽減されるはずである。「メールがあるのに、今さら・・・」と思われるかも知れないが、より適切な方法があるとは思われない。

ビットコインの「現物」

 先日のブログ【ビットコインの画像】で、ビットコインの「現物」を売りつける詐欺が起きるのではないかと書いた。

 「詐欺」と決めつけるのは早計かもしれないが、実際、ビットコインの「現物」がヤフーオークションに出品されていた【ヤフオク ビットコイン ハード通貨 三種類セット】。

 
ビットコイン-ヤフオク


 ビットコインの価格は乱高下しているが、現時点で、1ビットコインは、100万円以上する【日経新聞 ビットコイン下げ加速 5日で4割超 】。その「現物」が1万円程度でヤフオクで買えるのである。

 といっても、その「現物」を、「本物の仮想通貨」としてのビットコインに換金できる保証は、全くない。

 こんなものを買ってどうするのだろうと思ってしまう。何か用途があるのだろうか。せいぜい、宴会の余興か何かで使うぐらいのものだろう。

 ひょっとしたら、ビットコインは、100万円以上する、という断片的な情報を耳にした人が、「お買い得」と思って落札するのかもしれない。

ビットコインの画像

 古くからの読者の方は気づいておられるだろうが、このブログの最初の頃の記事は、画像(図表、写真など)はなかった【2014年3月の記事・9本】。

 ところが、次第に画像が増えて、ここ1年くらいは、画像のない記事の方が珍しいくらいだ。

 法律書でも、私が学生の頃は、文字だけというのが普通だったが、30年くらい前から、簡単な図解が取り入れられるようになってきた。

 国会中継でも、質問に立った議員が問題点を図解したパネルを示すというのは、日常的な光景になってきている。

 こういった画像を用いるのは、「分かりやすさ」、「記憶に残りやさ」の点で、単なる文字情報より遙かに優れているからである。実際、自分で過去の記事を見返すときも、画像をみれば、一瞬にして内容が思い出せるのに対して、画像がなければ、冒頭の数行を読まなければ、思い出せないのである。

 ただ、分かりやすく、記憶に残りやすいということは、誤った理解、印象を、広く、長く与えてしまう危険があるということであり、そのことは、常に意識しておかなければならない。

 たとえば、ネット上の仮想通貨「ビットコイン」だが、ネット上には、次のような画像があふれている【グーグルでの画像検索】。

ビットコイン

 こういう画像を何度も見せられていると、「仮想通貨」のはずなのに、物理的に存在するような気がしてくる。

 私自身、4年前、ビットコイン取扱業者のマウントゴックスが破綻した際に相談を受けたことがあり、いろいろ仕組みを調べたこともあって、「仮想通貨」であることは百も承知しているのだが、それでも、こういった画像を見る度に、物理的に存在するような気がしてくるのである。

 ビットコインという言葉は、ここ1年ほど、テレビでも結構、取り上げられるようになって、耳にしたことのある人も多いとは思うが、こういった画像がすり込まれていけば、一方で「仮想通貨」という説明を聞いてはいても、なにか物理的に実在するもののように記憶に定着していくのではないだろうか。

 そのうち、真鍮か何かで作った「ビットコイン」を売りつけるという、新手の詐欺が出てくるのではないか、心配である。「そんな馬鹿な?」と思われるかも知れないが、あれほど、「振り込め詐欺」がテレビや新聞で取り上げられているにも関わらず、未だに被害が後を絶たないことを考えれば、決して杞憂ではない。

 ところで、ビットコインとは違って、こちらは実在の硬貨なのだが、誤った印象を与えかねない画像がある。

8パーセント

 消費税が5%から8%に引き上げられたとき、NHKのニュースで、こんな画像をよく見かけた。

 そのとき思ったのは、なぜ、5円玉と1円玉なのか、ということだ。100円の物を買うのなら、消費税は8円だが、年間消費支出は、ほとんどの国民が100万円を超えているだろう。だとすれば、ニュースの画像は5円玉や1円玉ではなく1万円札というのが実態に即している。

 税抜き金額で100万円の支出をしていた人にとっては、消費税が5万円から8万円になるわけで、結構高額な負担なのだが、5円が8円になるだけなら、微々たる金額、という印象を持ってしまう。

 「印象操作」というのは、こうするものだ、ということを教えてくれる好例である。



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「時間泥棒」仕置人

Author:「時間泥棒」仕置人
.

 弁護士として、どうすれば、効率よく、的確に、情報を取得・提供できるか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

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