余分な文字は目に入れない

 将棋の棋士と言えば、坂田三吉【Wikipedia】に代表されるように、学歴とは無縁の世界である。ところが、最近では、大学卒の棋士も増えており、最年少で棋士となった、現在高校一年生の藤井聡太七段の進路も注目されている。そんな中、最近の大卒棋士を一覧にしたものをネットで見つけた【将棋の居酒屋「遼」】。 

将棋-大学-1

 「四段昇段年齢」という項目があるが、いわゆる「プロ棋士」と認められるのは、四段以上だからだ。では、大学入学前に四段に昇段した棋士は何人いるだろうか。

 当たり前のことだが、右端の列の「入学前」という文字列を数えていくことになる。だが、20行ほど漢字が並んでいるのを数えていくのは、結構、面倒な作業である。

 これに手を加えたのが次の表だが、この表で、同じ作業をしてみてほしい。

将棋-大学-2

 最初の表と比べれば、遙かに楽である。

  「卒業後」「在学中」「入学前」といった漢字3文字の塊の場合、「入学前」を識別するのは、ごく微少な時間とは言え、「読む」という作業が必要であるが、「----卒業後」「--在学中--」「入学前----」であれば、すぐに「入学前----」というのが目に入ってくる。

  「すぐ目に入る」とは言っても、目に入ってくるのは「文字」であり、「その意味を理解する」という作業が必要である。そんな作業すら不要にする表現の仕方も存在する。以下の表だ。

将棋-大学-3


 ここまで来ると、もはや、見ようとしなくても、勝手に向こうから目に飛び込んで来る。




「送信フォーム」への長い道のり

 企業や自治体のウェブサイトでは、問い合わせや意見を受け付けるためのフォームが用意されていることが多い。

 ただ、トップページを見ても、どこから意見を送ればいいのか分からないことも多く、サイトマップを見たり、サイト内検索をしたりして、ようやく、送信フォームにたどり着くことも多い。
 
 これに対して、トップページに、受付のボタンを配置しているサイトもあり、大変、便利である。たとえば、京都市のサイトのトップ頁【京都市情報館】は、次のようになっている。

意見-1


 そこで、右上の「お問い合わせ」というボタンを押すと次の画面になる。

意見-2


 次に、この送信フォームの文字を押してみる。

意見-3

 送信フォームが出てくるわけではなく、何やら注意事項が書かれている。どこに、送信フォームがあるのか、あるいは、また、どこかのボタンを押さなければならないのか、等と思いながら、下の方を見ていくと、次のようになっている。

意見-4


 そこで、今度こそ、と思いながら、「SSL対応をご利用の方は、こちら」の箇所を押してみる。

意見-5

 まだ、送信フォームには辿り着けない。

 結局、ここにある「京都いつでもコール SSL対応送信フォーム」こちらを押して、ようやく、送信フォームが出てきた。

 まるで、役所に行って手続をするときに、あっちの窓口、こっちの窓口と数カ所まわって、ようやく本来の手続きができるのと同じような気分である。落語に、お役所仕事を揶揄した【ぜんざい公社】という話があるのを思い出した。

 ボタンや文字の並びを押す度に出てくる新しい画面の文章を読みながら、次は、どこを押せばいいのかなどと探していると、次第に、意見を述べようと色々と考えていたことが、どこかに行ってしまうような気もしてくる。

 あっちこっちと、たらい回しをして、意見を述べるのを諦めさせようとしているのではないかと勘ぐりたくもなってくる(もちろん、そんなことは、意識していないだろうが・・・)。

 さて、これで、このブログ記事は完了とし、今から、「送信フォーム」を利用して意見を述べることにしよう。

 どんな返事が返ってくることか。まさか、「ご意見ありがとうございます。ご意見は関係部署に伝え、今後の業務の参考にさせていただきます」という返信メールが届いて、それっきり、ということはないだろう。

将棋中継

 将棋の実況中継と言えば、以前は、日曜の朝にNHKで放送されるNHK杯戦くらいだったが、最近では、複数のインターネットテレビに将棋専門チャンネルがあり、様々な棋戦の実況中継を見ることができる。

 今日は、名人戦第6局が行われているが、その画面が、以下のようになっている【AbemaTV】。

盤面-1

 画面の右下部分には、将棋盤の真上から撮影した画像が表示され、拡大すると、以下のようになっている。

盤面-2

 番組を最初から見ていれば、どちらが先手(下側から上側に攻めて行く)なのかは分かるのだが、途中から見た場合は、すぐには分からない。

 こんなふうに、画面に棋士の名前を表示してくれれば、途中から見ても、すぐにわかるのだが。

盤面-3


 番組の運営者は、当然のことだが、視聴者が理解できるようにと色々考えているはずである。ところが、途中から見る視聴者がいる、ということまで、気が回らなかったのだろう。



色使いは、こうする

 昨日の朝の震度5の地震に続いて、震度3前後の地震が何度か起きている。

 過去の大地震のことをネットで調べたのだが、比較的わかりやすいのが次のサイト【マグニチュード7クラスの大地震は昭和・平成で何度起きたか?【地震歴史まとめ】】で、各地域に色を割り当て、各地震の見出し部分の背景に、その色を使っている。こんな具合だ。

 
大規模-1


 「比較的わかりやすい」といったものの、この色使いは分かりにくい。

 地域を色で分けて、文字を読まなくても直感的に、どの辺りの地震か、ということを理解してもらおうという意図なのだろうが、色使いに法則性がなく、色を見て、だいたい、どの辺りか、という見当を付けることは、到底、不可能だ。
 
 こんな色使いではなく、寒冷地の北海道、東北から、温暖地の九州、南海に向けて、寒色から暖色へと変化させていけば、直感に馴染み、ずっと理解しやすい。こんな具合だ。
 
大規模-2




気象庁の地震情報

 今朝8時前に地震があった。すぐにテレビを付けると同時に、ネットで気象庁の地震情報を見ようとした。

 サイトを開くと、メニューのボタンが、以下のように、ずらっと並んでいる【気象庁・地震情報】。

地震-0

 ところが、ぱっと見ただけでは、左から3番目と4番目が、「震源・震度に関する情報」「各地の震度に関する情報」となっており、「震源」に関する情報の有無の違いだけなのか、「震度」と「各地の震度」は違うのか、文字を見ただけでは、よく分からない。

 結局、それぞれのボタンを押して行くと、次のようになっていた。

地震-2

 ご覧のように、どちらも、「震源」は×で記されている。

 震度については、一方は、都道府県を2、3の地域に分けた地域ごとの震度を表しているのに対して、他方は、ピンポイントの観測地点ごとの震度を表しているようだ。ただ、より詳細な地図を表示して行くと、最終的には、③のように、どちらも、観測地点ごとの震度が表示されるようになっていた。

 この結果を踏まえて、ボタンを「分かりやすく」するとしたら、以下のようにするのがいいだろう。
地震-4

 あと、冒頭に並んでいたボタンの5番目「遠地地震に関する情報」というのも分かりにくい。

 「遠地」というのが、北海道とか沖縄を指すのかと思ったのだが、そうではなく、「外国」ということだった。
 
 考えてみれば、日本語のサイトなのだから、当然、北海道や沖縄の人も見るわけで、「遠地」というのは、日本の外、と理解するのが合理的なのだが、つい、自分の住んでいる京都を中心に考えて、「遠地」を、上記のように理解していた私が悪い、ということになるだろう。

 とはいえ、サイトを見る人は様々なのだから、絶対に誤解のないように、「外国の地震に関する情報」とすればよかったのだ。



「データバー」の活用

 少し長くなるが、不動産業界に関する記事を引用する【NEWSポストセブン 不動産「御三家」を猛追 ヒューリックとはどんな会社なのか】。

 売上高でいえば、2017年12月期の予想が2800億円というそのヒューリックが、不動産業界で御三家といえる三井不動産、三菱地所、住友不動産の財閥系3社を追いかける、4番手に浮上しようとしている。

 財閥系3社に続くのは野村不動産ホールディングス、東急不動産ホールディングスで、確かに規模では野村や東急にも及ばない(2018年3月期の両社の売上高予想は、野村が6460億円、東急が8400億円)中堅クラスのヒューリックだが、大事なのは収益。この収益面での比較となると、一気に野村や東急と肩を並べるのだ。

 2018年3月期予想で営業利益、経常利益、純利益の順に数字を並べてみると、野村は760億円、670億円、440億円。東急は735億円、640億円、345億円。そして2017年12月期のヒューリックの予想が630億円、600億円、400億円。売上高比から見たヒューリックの高収益性が際立っているのがわかる。


 不動産業界の中でのヒューリックという会社の特徴が具体的な数字で理解できただろうか。理解できたとして、どれくらいの時間を要しただろうか。

 上記の記事を表にすると、こうなる。

ヒューリック-4

 記事が最も述べたかった結論「売上高比から見たヒューリックの高収益性が際立っている」ということが、一目で理解できるだろう。

 表の各枠の中の色のついた棒グラフのような図形は、表計算ソフト「エクセル」の「データバー」という機能を用いて表示したものである。この「データバー」によって、単なる数字の羅列でしかない表が、一目で、その意味を理解できる表に一変したことが、おわかりいただけただろうか。

 これほど表現力に優れた[データバー」である。もっと多用されてもいいはずなのに、ネット上でも、見かけることは少ない。もったいないことである。

 他にも表の作成にあたって留意した事項を列挙する。

 ● 企業の名称の一部を大きな太字にした。
     正式名称は「●●不動産ホールディングス」であっても、区別に必要なのは、「●●」の部分だけである。

 ● 収益欄の項目名を右寄せにした。
     3種類の「利益」の共通部分である「利益」が縦一列に並ぶ結果、「営業」「経常」「純」の違いに注目されるようになる。
     この効果を得るためであれば、「ホールディングス」を小さくしたように、「利益」を小さくしても、よかった。

表の作成は、こうする

 下の表は、ある法科大学院の修了生の直近3年間の司法試験の受験結果を表にしたものである。

合格-1


 これを、私が「分かりやすく」したものが、次の表である。

合格-2


 どこを変えたかというと、以下のとおりだ。

 ● 文字を大きくした (表全体の大きさは、変わりない)。
     ある程度の余白は必要だが、元の表では、空白部分が広すぎるし、文字を読みにくい。

 ● 数字の後ろの「名」を省略した。
     「名」というのは分かりきったことだし、21箇所にも付けると煩雑な感じがする。
     他方、「年」は3箇所だけなので、付けても煩雑には感じない。     

 ● 既習・未習、法学部・他学部を、それぞれ行で分けるのではなく、列で分けた。

     本来、年を行で分けているのだから、時の流れと異質なもので更に行を分けると、思考が混乱する。
     仮に、年を前期・後期というふうに細分化するのであれば、行で分けるのが適切である。

 ● 既習・未習、法学部・他学部の文字は項目名に記載し、表の中身には記載しなかった。

 こうすることによって、格段に分かりやすくなった。たとえば、他学部出身の最終合格者は一人もいないことが、一瞬で分かる。元の表だと、1行おきに、「他学部」という文字を確認しながら見て行く必要があったのだが、新しい表だと、右端の列を見るだけで、他学部出身者の合格者数が分かるのだ。

 ところで、表計算ソフトの「エクセル」には便利な機能があり、数字の大きさを視覚的に表現してくれるので、直感的に数字の大きさを把握できるようになっている。次のようになる。
 
合格-3


 この表だと、2017年に短答合格者が激減したことが、一瞬で読み取れるのだが、元の表だと、そのことに気づくのに数秒はかかる。

 エクセルが出始めた頃から、「こんな機能があったら、いいのにな」と思っていた機能なのだが、Excel 2007 で、この機能が追加されて感激したものだ。

 情報は、「正確さ」という点では、デジタルの数字が優れているのだが、「直感的な分かりやすさ」という点では、アナログの図形の方が遙かに優れているのである。

 腕時計の表示でも、デジタル時計が出始めた頃は、アナログ時計よりも正確に時刻が分かるということで、私も乗り換えたのだが、使っているうちに、ストレスを感じるようになった。

 アナログ時計なら、例えば、夕方6時の待ち合わせなら、あと、40分、ということが、直感的に分かるのに対して、デジタル時計だと分からないのだ。

 また、アナログ時計なら、時計の文字盤を見ながら、長針の位置を頭に描いて、ここで家を出て、ここで駅に着いて、・・・と、自分の予定を考えられるのだが、数字を見るだけだと、そうは行かない。アナログ時計なら、頭に描いた長針の動いた角度で時間の長さを実感できるのである。


 

色分けに注意

 ある予備校のサイトに、大学進学の状況について1990年と2015年とを比較する表が載っていた【河合塾 大学入試の昔と今】。
 下の左が全体図、右が右半分(2015年)を拡大したものだ。

大学

 見た瞬間、右端のオレンジの長方形が何を指すのかと思ったら、中央付近の凡例のオレンジの正方形の右に「短大」と書かれている。では、4年制大学の青の長方形はどこにあるのかと思ったのだが、そんなものはない。オレンジの正方形は、円グラフのオレンジに対応しているもので、右端の長方形のオレンジとは無関係のようだった。

 「大学数」のところからオレンジの長方形まで、黄緑色の破線が延びていることから、オレンジの長方形は、4年制大学と短大を併せた大学数を表したものだと理解できた。

 そうやって理解したつもりでも、どうしても、短大のオレンジと右端の長方形のオレンジが結びつけられ、見ていて、居心地が悪い。

 しかも、円グラフの上に並んでいる人の図も青とオレンジが使われていて、男子は4年制大学、女子は短大という昔の固定観念にとらわれているようにも見えてしまう。結果的に、予備校が、ジェンダーフリーの時代に逆行しているとの非難を受けるかもしれないし、下手をすると、そういうことに敏感な受験生を遠ざけてしまいかねない。

 こういった誤解を起こさないようにするには、たとえば、こんが具合にすればよいだろう。

大学-2


注意した点は、以下のとおりである。

 ● 凡例を独立に設けるのではなく、円グラフの中に重ねる。
     こうすれば、判例とグラフとの間を視線を行ったり来たりしなくても理解できる。

 ● 男女の色分けと、4年制大学・短大の色分けを、別のものにする。

 ● 大学全体を表す長方形の内部は、4年制大学、短大の各色を組み合わせた格子状にする。


くどすぎてもいいから、分かりやすく

 ある公共施設の集会室の利用料金表である。

料金-1

 どこが分かりにくいのか? という疑問を抱かれた人もいるだろう。

 最大200人くらい入る部屋なのだが、この表を見たとき、最初は、朝10時から夕方5時まで利用して、3000円というのは、えらく安いと思った。

 そんな安いはずはないだろうと思って見直すと、左上に「ご利用時間(1時間単位)」と書かれていた。ただ、これを見たときも、最初に見たときの、朝10時から夕方5時まで利用して3000円、という印象が強く、単に利用時間が1時間単位というだけで、料金の計算は、それとは別で、朝10時から夕方5時までなら、何時間でも3000円なのか、という気がした。

 それにしても、安すぎる。そのうち、利用時間が1時間単位というのだから、利用料金も1時間の料金を表示してあるのだろうという気もしてきてた。

 施設側は、利用時間が1時間単位ということを表示しておけば、料金も1時間ごとに計算されるというのは当然のことだという思いがあったのだろう。

 確かに、常識的にはそういうことになるだろう。

 けれども、自分では常識だと思っていても、100%の人が常識を持ち合わせている、というわけではない。

 たとえば、森友問題の財務省の文書改竄に関する佐川元国税庁長官の証言など、常識的には、こんなので納得できる人がいるのかと思えるのだが、世論調査では、「納得できない」が72・6%で、「納得できる」が19・5%もあるのだ【毎日新聞 佐川証言、世論調査】。

 もう登場して10年にもなり、テレビでも何度となく報道されている「オレオレ詐欺」でさえ、未だに騙される人がいるのだ。

 集会室の利用料金の件でも、トータルで3000円と誤解する人がいないとは言えないだろう。もし誤解したまま申し込んでいたら、当日、料金の支払いを巡ってトラブルにもなりかねない。

 万が一にも、そんなことにならないよう、くどいほど分かりやすい表現にすべきである。たとえば、こんな具合である。

料金-2


お洒落すぎる!

 私が大変気に入っている店があるのだが、昨日、商品の注文に関する留守電が入っていた。

 今朝、折り返しの電話を入れようとしたのだが、まだ営業時間前かも知れないと思い、店のウェブサイトで営業時間を確認したところ、次のようになっていた【アンジェ・河原町本店】。

 
アンジェ


 営業開始時刻の数字が、最初は、ローマ数字の「II」に見えて、昼の2時からしかやっていないのかと思ったのだが、すぐに営業終了時刻の「21:00」というのが目に入ってきたので、営業開始時刻の数字も、ローマ数字ではなく、アラビア数字に違いないと思い見直して、ようやく、11時と言うことが理解できた。

店のコンセプトが、

「上質な暮らし・美しいデザイン」をテーマに、日本・北欧などを中心に世界中から選りすぐりの商品を集めています

と言うだけあって、ウェブサイトのイメージも、それに沿って、大変お洒落な作りで、それはそれで結構なのだが、「営業時間」「電話番号」といった基本的な情報についても、お洒落過ぎるフォントを用いてしまうと、伝えるべき情報を誤って伝えることにもなりかねない。

 以前のブログ【エレベータの開閉ボタン】にも書いたように、表現に際して、「お洒落に」「格好よく」という思いは誰しも抱くものなのだが、「分かりやすさ」を犠牲にしては本末転倒である。

 もちろん、店のウェブサイトなどは、純粋に事務的な文書ではないのだから、「分かりやすさ」に徹するわけにもいかず、「お洒落」を優先させたい気持ちも分からなくはないのだが、それでも「お洒落すぎる」のは、考えものである。

 ところで、冒頭の留守番電話の「商品」というのは、来年のスケジュール帳である。見開き一週間で、時刻が縦に並んでおり、非常に使い勝手がいいため、もう20年以上、同じのを使っている。

 日本製のスケジュール帳は、ほとんどが、時刻が横に並んでおり、使い勝手が悪く、ようやく見つけたのが、そのスケジュール帳【QUO VADIS Weekly Vertical Prenote】なのだ。

 以前のブログ【拘束時間の可視化】に書いたような記載も、時刻が縦に並んでいる方が、ずっと書きやすく、分かりやすい。


「分かりやすさ」だけでは足りない

 日大学長の記者会見が行われている。

 別に日大学長の話が特別に「分かりやすい」という訳ではないのだが、コミュニケーションにおいては、「分かりやすさ」だけでなく、話者の心理状況が聞き手にどのように伝わるかという点について、十分な配慮をしなければならないということを教えてくれる会見である。

 これまでの日大アメリカンフットボール部の対応、記者会見の司会をした日大広報部の担当者の言動などで、世間一般が「誠意がない」と感じていることは百も承知だったはずなのだが、この学長の言葉遣いは、以下のとおり、全く不適切というほかない。
 

本件で学生たちが動揺しているので、学生たちをケアしてあげたい。


 「してあげる」というのは、本来は義務ではないのだが、恩恵的に、何かを行う、という場合に用いられる言葉である。学生たちには何の責任もなく大学の体制、対応が不適切なために学生たちが不安に思っているのであるから、大学として、それをケアすることは、当然の義務である。

 にもかかわらず、「してあげる」という言葉が使われているのであるから、大学としての責任を自覚していないと言わざるを得ない。

今回の騒動につきましては・・・


 思わず耳を疑った。当事者意識の欠如を象徴する言葉である。学長にしてみれば、アメリカンフットボール部の監督の不手際で大学全体が批判され、自分も記者会見まで開かなければならなくなった、という、いわば「被害者意識」が透けて見える表現である。

第三者委員会が発足したか否かは伺っていません。


 第三者委員会の立ち上げの実務を担うのは、大学の事務局であるから、大学の事務局からは話を聞いていないということであろう。であれば、身内である事務局に対して「伺う」という「謙譲語」を使うべきではない。適切な敬語の使い方もできない人が学長をしているのである。

監督は、大学の関連病院のどこかに、おられます。


 これも敬語を使うべきでないところで使っている。特別に難しい言い回しではない。社会人として平均的なレベルの敬語の使い方も習得していない人のようである。

普通は、競技団体の裁定を仰ぐと言う形で片付いてきたところで・・・


 もはや、あきれてものが言えない。学長にとっては、さっさと「片付く」はずのものが、学長である自分が記者会見までしなければならなくなって、大迷惑だ、ということであろう。



学生か生徒か?

 日大アメフト事件の報道の中で、事件についての現役の日大生の声が紹介されている。その際に耳にするのが、「生徒」という言葉である。

 少なくとも私が大学生の頃は、大学生は「学生」と言い、「生徒」というのは高校生以下を指していた。

 大学生ともなれば、親の保護から離れて自律的に行動する、高校生とは違った存在、という共通認識があったように思う。

 その後、80年代のはじめの頃だろうか、高校生たちが、自分たちのことを「学生」と呼ぶのを耳にすることが多くなり、違和感を抱いていた。

 全面的に親の保護下にあるくせに、「学生」とぃうのは烏滸がましい、というのが、当時いだいた感情だ。他方で、高校生たちの「背伸びをしたい」という感覚は理解できなくもなかった。

 ところが、ここ10年くらいのことだが、大学生たちが、自分たちのことを「学生」と言わず、「生徒」と呼ぶのを耳にするようになり、以前とは逆の意味での違和感を抱くようになった。

 平均寿命が延び、「人生50年」という時代から「人生100年」の時代に向かう時代の流れからは、理解できなくもない。とはいえ、他方で、選挙権を取得する年齢が引き下げられているのであり、大学生を「生徒」と呼ぶことに対する違和感は拭えない。

学生-2


 「分かりやすさが第一」という本ブログの趣旨からは、こういうことになる。

 単に「学生」「生徒」という表現をすると、人によっては、高校生以下と大学生を混同しかねない、ということであり、また、「学生」「生徒」という言葉を聞いても、話し手が自分と同じ基準で両者を使い分けているとは限らないということである。



しゅうしょく先は、一つに絞る

セクハラで辞任した福田淳一・財務事務次官の事件に関する朝日の社説だ【2018.4.29 朝日社説】。

女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったと訴えている。


 「そのたびに」という修飾語が、「セクハラ行為があった」にかかるのか、「訴えている」にかかるのか、文法上は、決め手が無い。
 

① 女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったと訴えている。

②女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったと訴えている

  
 ②だと、たとえば、福田氏の部下によるセクハラ行為があったことを、上司である福田氏に合うたびに訴え、善処を求めた、という意味にもとれる。

 もちろん、真実は、福田氏に合うたびに(福田氏から)セクハラ行為があった、ということを(福田氏以外の人に)訴えた、ということであるから、②ではなく①である。

 このように、文法的には多義的でも、背景知識があれば、文脈から正しく読みとることができるのだが、読者の知識、理解力は多様であり、文法的にも、一義的であることが望ましい。本件では、次のようにすべきである。

① 女性社員の訴えによると、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったとのことである。

② 女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、セクハラ行為があったことを、そのたびに訴えている。


「独創性が認められ登録商標されました」??

 こんな広告を見ると、「誤解」を生じさせることを目的としているのではないかと思ってしまう。

シンプル英語


 右下に、「特許庁より独創性が認められ登録商標されました」と書かれており、この広告記載の英語学習法に「独創性」のあることを特許庁が認めたように思えてくる。

 けれども、少し考えれば分かることだが、「独創性」が認められたのは、「商標」であって、その「商標」を利用しているサービスの内容ではない。

 さらに言えば、商標法では、商標そのもについても、「独創性」があることが必要とされているわけではない。

 第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
      (略)
  五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
      (略)

 
 要するに、商標登録が認められたからといって、「ありふれた」とは判断されなかったに過ぎず、「独創性がある」と判断されたわけでは決してないのである。

ちなみに、特許権、著作権に関しては、次のように規定されている。

特許法
  第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

著作権法
  第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
    一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。


 なお、「登録商標されました」というのも可笑しな表現である。

 「登録する」という動詞はあるが、「商標する」という動詞はない。また、複合動詞としても、「商標登録する」はあるが、「登録商標する」はない。従って、「商標登録されました」というのが正しい表現である。

直感に頼らない説明

 野球の中継は滅多に見ないのだが、たまに見ると、解説者が 「いい球は見逃してはいけません」「悪い球は、絶対、打ってはいけません」などと言っている。

 間違ってはいないが、全く無内容である。どうすれば、いい球を見分けることができるのか、それを語らなければ意味がない。

 似たような話だが、今日、詰将棋の解説で、こんな説明を目にした【実戦型詰め将棋三手五手七手詰め 中原 誠/著   日東書院本社】。
 
中原

 要するに、5手詰めでは1手目と3手目が急所で、それが分かれば、解けたも同然、ということらしい。けれども、そのことを教えてもらったからと言って、どれだけ、詰将棋が強くなると言うのだろう。

 「急所」とされる、1手目をどうやって見つけるのか、その方法についての説明がなければ、何の力にもならない。

 中原永世名人のような人になれば、直感的に急所の1手目が見えてしまうために、素人が、どうやって1手目を見つけるのか、ということが説明できないのかも知れない。

 そういう点では、解説者、指導者としては、天才的な棋士は不向きなのかも知れない。

 もちろん、人間が解く以上、ある程度の直感に頼らざるを得ないのは確かであるが、その直感は、素人レベルでも働くような直感でなければならず、天才レベルの直感を前提にされても、素人には、まねのしようがないのである。

 この問題に即して言えば、私のような素人(多分、2、3級)でも持てる直感としては、「4一」から玉が逃げ出しそうなので、それを止めなければならない、という程度の直感である。

 その直感を前提に解き方を解説すると、次のようになる。

 ① 「4一」からの脱出を防ぐ攻め方の手は、「4一」に効き、かつ、王手になる手でなければならない。

 ② 玉は、「3二」にいるので、結局、「4一」と「3二」の両方に効く手でなければならない。

 ③ 「4一」と「3二」のような斜め2箇所に同時に効く駒は、金と角しかない。

 ④ すると、結局、「3一金」「2三角」「1四角」の3とおりしかない。

 ⑤ 「3一金」の場合、玉方の手は、「2三玉」しかない。

 この先は、延々と場合分けをして、玉を詰ますことが出来る手順を見つけるしかなく、解説としては、結構、長くなってしまう。

 もちろん、⑤から先でも、直感により検討するまでもない手もでてくるだろうが、それは、人それぞれである。

 人それぞれである以上、解説者が直感を前提とした「解説」をしてしまったら、置いてけぼりを食わされる読者も出てくるはずである。

 とは言っても、まったくの初心者を想定した解説だと、ある程度の棋力の読者にとっては、冗長に過ぎるという不満も出てくるのは確かであり、どこかで、「直感」に頼った解説をせざるを得ないのも事実であり、解説者も悩むところであろう。

 けれども、冒頭の中原永世名人の解説では、誰に役にも立たないことは間違いない。

検索フォーム
プロフィール

「時間泥棒」仕置人

Author:「時間泥棒」仕置人
.

 弁護士として、どうすれば、効率よく、的確に、情報を取得・提供できるか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
リンク
QRコード
QR