老舗企業は小規模企業? 全体を見なければ意味がない

 以下に引用するのは、「逆接の法則」56頁で、老舗企業と企業規模との関係について書かれた一節だ(読みやすくするために、若干の整形を施している)。

・ 100年以上続く老舗企業の売上高を見てみよう。・・(中略)・・5億円未満の中小・零細企業が全体の約7割を占めていたのだ。
・ 従業員数別では ・・(中略)・・ 「300人以上」は全体の3.4%にとどまった。
・ 東証など国内証券取引所に上場する老舗企業は・・(中略)・・長寿企業全体の2%弱しかなかった。
これらのことから、規模を大きくしない方が実は長続きするのではないか、という推測も生まれてくる。


 要するに、売上高、従業員数、上場企業か否かという指標から、老舗企業には小規模のものが多い、従って、規模を大きくしない方が企業は長続きする、という「推測」をしているのだが、論理として飛躍している。

 老舗企業中における、売上高5億円未満の企業の割合、従業員「300人以上」の企業の割合、上場企業の割合が、それぞれ数値で示されているが、全企業中における割合も同時に示されなければ、割合の多寡を論じることは不可能である。

 ちなみに、全企業数は400万弱【転職グッド 大企業・中小企業の定義と企業数、従業者数】、上場企業数は4000弱【日本取引所グループ 上場会社数・上場株式数】であり、全企業に占める上場企業の割合は、約0.1%である。そうすると、老舗企業中の上場企業の割合が2%というのは、その20倍であり、むしろ、老舗企業の方が一般に規模が大きいという、正反対の結論が導かれる。

 ここで述べた論理の飛躍は、【オーケストラは理系のサークル活動?】【なぜ、一部の数字だけで納得できるのか】【割合の単純比較は、危険 シートベルト不着用の危険性】で述べたのと全く同質のものである。

 この本の著者である西成活裕氏は、数理物理学の専門家で、道路の渋滞や企業の生産活動などの領域に数理物理的手法を導入して社会実験を行うなど、様々な社会問題を論理的かつ実証的に解決しようと取り組んでいる気鋭の学者である。

 同氏の「渋滞学」「誤解学」「逆接の法則」などを読んだが、書店に溢れているビジネス書を100册読むよりも、この3册を読む方が遙かに有意義であり、もっと、こういった人が出てくればいいと思っている。

 それだけに、上記の論理の飛躍を目にしたときは、少し、がっかりしたのだが、優れた研究者でも、規模が小さい方が企業は長続きするという思い込みが強いと、「論理」ではなく、その思い込みを強く印象づける数字にのみ目を奪われて、論理の飛躍をしてしまうのだ。

 文章を書くときには、自分の思い込みで書いていないか、論理的に飛躍がないか、常に検証しなければならないということを、再認識した次第である。

----- 追記 2019.2.13 -------------------------------------------------------------------
 
 素材を提供していただいた著者の方に、この記事のことをお知らせしたところ、1時間もしないうちに、誤りを率直に認められて、今後は気を付けたい旨の、お返事をいただいた。

 なかなかできないことであるが、こうありたいものである。

 先日亡くなった梅原猛氏は、古代史に関する自説に対する批判を徹底的に検証した上で、自説の誤りを認めて、『葬られた王朝』という本まで書いたことで、一層、評価を高めた。

 けれども、自説の誤りが分かったら、それを改めるというのは、当たり前のことである。とはいえ、当たり前のことでも、当たり前にできないのが大多数の凡人であり、だからこそ、当たり前のことを当たり前にする人が評価されるのである。

 なお、昨日の記事に若干の字句の訂正や文字の修飾を施している。

 


「師弟戦」についての将棋連盟対局規定  「ただし」を安易に使わない

 藤井聡太六段が師匠の杉本昌隆七段に「恩返し」をしてから、もう1年になろうとしている【JCASTニュース 2018.3.9 藤井六段の「恩返し」】。「師弟対決」にいては、将棋連盟は次のように定めている【日本将棋連盟 対局規定 第8条 公式棋戦規約

 トーナメント戦においては、一次予選の1回戦の師弟戦は行わない。
 ただし、二次予選や本戦の1回戦はこれには該当しない。


 2行目に「ただし」とあるので、「一次予選の1回戦」でも、例外的に師弟戦が行われる場合があるのかと思ったのだが、よく読めば、そうではない。

 「二次予選や本戦の1回戦はこれには該当しない。」と書かれており、新たな情報は、何も付け加えられていない。

 「ただし」というのは、通常は、「原則に対する例外」を示す場合に用いられるものである。

 他には、たとえば、「コート内に落ちた場合は・・・。ただし、白線にかかる場合は、コート内とします。」のように、概念の境界で、その概念に含むか否かが一義的には決められない場合に、補足的に説明する場合に用いられることもある。

 他の用法としては、「心臓を切り取ってもよい。ただし、血を流してはならない。」のように、条件を付加する場合もある。

 ところが、対局規定の「ただし」は、ここで説明した3つの用法の、いずれにも該当しない。

  ● 原則に対する例外
  ● 曖昧な概念の明確化
  ● 条件の付加

 対局規定中の「ただし」で始まる一文は、何の意味もなく、読者には余分な負担をかけるだけであり、削除すべきである。

 どうしても、本戦や二次予選のことを書きたければ、こう書くべきである。

 トーナメント戦においては、一次予選の1回戦の師弟戦は行わない。
 従って、二次予選や本戦の1回戦では、師弟戦が行われることもある。



----- 追記 2019.2.13 -------------------------------------------------------------------
 
 記事に書いた改善案だが、少し問題がある。
 

 トーナメント戦においては、一次予選の1回戦の師弟戦は行わない。
 従って、二次予選や本戦の1回戦では、師弟戦が行われることもある。


「従って」というのは、順接の接続詞であり、前に書いたことの帰結として、次に何かを書く場合に使う言葉である。

 ここでは、2行目に書かれたことは1行目の帰結とは言いがたい。1行目の反対解釈の帰結としてなら、2行目のことが言えるのだが、その場合に「従って」という接続詞を用いるのは、違和感がある。

 ここは、「従って」ではなく、「なお」とか、「念のために述べるが」というのが適切なように思う。









最新号は貸出しできません

 近所の図書館では、雑誌の貸出しも行っている。

最新号-1

 ただ、雑誌のカバーを見ると、最新号の貸出しはできないとのことだ。

最新号-2

 似たような記載なのだが、こんなのもある。

最新号-3

 最初の「あまから手帖」の方は、「最新号です」と書かれており、最新号であることは明白だ。

 ところが、次の「アサヒカメラ」の方は、「最新号は貸出しできません」となっており、あくまでも、一般原則だけを述べているのだ。「あまから手帖」に「最新号です」と書かれていることからすると、その反対解釈で、「アサヒカメラ」は最新号ではないのかも知れない。
 
 ここからは、私の推測なのだが、一方にはフリガナがあり、他方にはないことからすると、元々はフリガナがなかったのだが、その後、小さな子どもにも分かるようにとの配慮から、フリガナ付きの改良版が作成されたように思える。

 そして、それと同時に、「最新号です」から「最新号は」に変更されたのだが、それは、なぜか。

 おそらく、初めの記載は、断定的な口調で高圧的な感じを与えることから、「親しみやすさ」を演出するために、「最新号は」と一般論を述べることによって、その号も結局は最新号であり貸出しできないことを悟ってもらおうと考えたのではないだろうか。

 考えてみれば、「夢のある人が好き」とか「夢ばかり追いかけている人は嫌い」とか言う場合、普通は一般論に止まるものではなく、「夢のあるあなたが好き」とか「夢ばかり追いかけているあなたが嫌い」ということである。

 仮に、文字通り一般論として受け止めてしまう人がいるとすれば、誤解する方が悪い、と言うことになるだろう。

 けれども、公共の図書館では、やはり、「分かりやすさが第一」である。「最新号は貸出しできません」といった、誤解の可能性のある表現は避けた方がいいと思う。そうすると、次のいずれかということになる。

 「最新号です 貸出しできません」
 「旧刊です  貸出しできます」

呼び出しボタンは、どこにある?  情報の引き算

 郵便受に書留郵便の不在配達通知が入っていたので、郵便局の夜間窓口に行った。誰も人がいないので何度も声を掛けたのだが、ようやく出てきた職員から、呼び出しボタンを押してもらったら、すぐに分かると言われた。

 そこで、ボタンはどこかと、改めて窓口の横の壁を見渡した。

呼び出し-2

 赤、青、緑、黄色と雑多な色が目に飛び込んできて、ボタンがどこにあるのか、すぐには分からない。よく見ると、右下に大きな矢印と「呼び出しボタン」という記載があり、その矢印の先に、実際にボタンがあった。

呼び出し-1

 わざわざ張り紙をして、ボタンの場所を大きな矢印で示すということは、郵便局の側も、ボタンの場所が分かりにくいことを認識していたのだろう。

 けれども、その解決策として、矢印と注意書きを加えるのは、方向性を間違えている。解決策は、こうだ。

呼び出し-4


 均一なグレーの壁に、大きさは控えめだが、赤地に黄色の下向きの矢印、その下に黒いボタンがある。これなら、嫌でも目に飛び込んでくる。

 机の上に置いたはずの携帯電話を捜すにしても、本や書類や郵便物の散乱した机の上だと大変だが、整理整頓された机の上なら一瞬であるのと同じである。

 情報過多の結果として分かりにくくなってしまう例については、これまでも書いたことがある。

 【地図の描き方
 【実務に理解の深い教員・・・

 なお、少し飛躍するが、この記事で書いた「理屈」は、視覚的なものに限らない。

 町の将棋道場では、誰もが知る天才少年であっても、奨励会に入れば、ただの一会員である。

A級順位戦の行方  必要最小限の情報をシンプルに

 将棋の佐藤天彦名人への挑戦権をかけたA級順位戦が佳境に入っており、将棋連盟のウェブサイトに解説がある【豊島が7勝1敗で首位に、羽生、広瀬が6勝2敗で追いかける A級順位戦 8回戦】。

 その解説の中に、最終戦(9回戦)の勝敗によって誰が挑戦者になるかについての表がある。

順位戦-1

 だが、せっかく表になっているのに、書かれていることを順に読んでいかなければ、理解することができない。

 では、こんな表なら、どうだろうか。

順位戦-2
 
 一目瞭然である。

 文章で書けば、暫定一位の豊島は、久保に勝てば無条件に挑戦者になり、負ければ、羽生広瀬戦の勝者とのプレーオフになる、ということであり、そのことだけを表にしたのが、上の表である。

 これに対して、将棋連盟の表は、3名の肩書き、最終戦の結果に基づく最終の勝敗なども書かれており、丁寧であることは間違いない。だが、読者がとりあえず知りたいのは、最終戦の結果によって誰が挑戦者になるのか、といった情報であり、肩書きなどは余分な情報である。

 余分な情報があると、読者の側で、必要な情報を選別しなければならず、その分、理解するまでに時間を要するのである。


孫や息子の嫁を養子にする話し

弁護士ドットコム40号14頁に、こんな記載がある。
 

孫や息子の嫁を養子にすると相続税が減らせるという話しを聞きましたが、それはほんとうなのでしょうか。



【1】 孫や息子の嫁

 「孫や息子の嫁」というのは、次の、どっちだろうか?
   「孫」や「息子の嫁」
   「孫や息子」の「嫁」

 おそらく、前者だと思われるが、そうなら、こう書けばいい。
   息子の嫁や孫

 もちろん、このように書いても、
   息子の「嫁や孫」と読む余地もあるのだが、「息子の孫」は、普通は「曾孫」と表現するので、このような読み方はされにくい。

 完璧を期すなら、数式のように、文章にも括弧を多用すべきことになるが、それは、それで分かりにくくなるので、要は、バランスの問題である。


【2】 話し

 送り仮名の付け方については、【内閣告示・訓令】によって、一応の基準が示されている。

 そして、名詞としての「はなし」は、「話」と書き、送り仮名「し」は付けないものとされている【送り仮名の付け方 単独の語 2 活用のない語 通則4】。

 「話」の送り仮名については、小学校の1年生の頃に、先生が一生懸命に話していたのを記憶しており、子供の頃から常に気を付けて来たし、たまに、「話し」と送り仮名「し」を付けているのを見ると、「なんと教養のない人だ」と思ってきた。

 ところが、ここ10年くらいのことであるが、手書きの文章ではなく、ちゃんとした活字になった文章でも「話し」と記載されているのを見かけることが多くなった。

 誤用であっても多数になれば、いつしか、それが正しい用法となってしまうのは、言葉の宿命のようなものではあるが、半世紀後はいざ知らず、今のところ、「話し」は、単なる誤りに過ぎない。



図書館の本の予約状況の確認 情報のワンストップサービス

 私が利用している公共図書館では、借りたい本をネットで予約すれば、自分で指定した分館で本を受け取れるようになっている。

 指定した分館に本が届けばメールで通知が来るし、その前でも、予約した本の状況をネットで確認すると、「確保待ち●位」とか「搬送中」といった表示が出て、あと、どれくらいで本が届くか分かるようになっている。

 たとえば、こんな具合だ。

予約状況-3

 「確保待ち29位」となっているが、1回の貸出期間の上限は2週間なので、単純に考えると、2×29=58 (週間)ということで、本が届くまで1年もかかるように見える。

 だが、仮に同じ本が例えば30册あるとしたら、「確保待ち29位」であれば、2週間もしないうちに自分の番が回ってくるはずである。

 そこで、「所蔵一覧」という頁で、その本が何冊あるのかを確認するのだが、次のようになっている。

予約状況-2

 ざっと見て、20冊くらいあるようだ。ということは、2×29÷20≒3 と言う計算で、おおよそ3週間待てばよいと言うことがわかる。

 とはいえ、こんなふうに、予約状況確認の画面には、「確保待ち(29位)」という情報しかないために、改めて、別の頁で蔵書数を確認せざるをえないのであり、面倒な話である。

 「確保待ち(29位)」の後に「蔵書数(20冊)」というふうに書かれていれば、すぐに、どれだけ待てばいいのかを概算できるのである。

 ところで、「所蔵一覧」の頁には、何冊あるのかという情報だけでなく、「請求記号」「資料コード」といった情報が掲載されているが、こんな数字や記号の羅列は、利用者にとっては、どうでもいい情報だ。

 図書館の職員にとっては、蔵書の管理のために必要不可欠な情報なのだろうが、その情報を一般利用者に知らせる必要はない。

 一般利用者にとっては、必要な情報が一箇所にまとまっていることが重要なのであり、不要な情報を目にすることは、ストレス以外の何物でもない。

 「ボーっと生きてんじゃねーよ!」【チコちゃん:流行語大賞トップテン入り】で有名になったNHKの情報番組「チコちゃんに叱られる!」で見たのだが、人は何かを思い出すときに上の方を見るが、それは、目から入ってくる雑多な情報を遮断し、思い出すことに集中するためだそうだ。

 何らかの情報を伝えるに際しては、受け手が必要な情報に神経を集中して的確に理解できるようにするためには、集中の妨げになる不要な情報は極力排除しなければならない、ということである。

 ところで、この公共図書館については、これまでも、何度も記事を書いてきた。

 【図書館で借りれるのは、AV2本まで
 【内部の論理は、内部に留める
 【番号だけでは分からない
 【どこまで利用者に配慮できるか
 【借りている資料=貸出状況 ?

 それだけ、問題が多い、ということである。改めて、自分でも記事を読み返して見て、この図書館のシステムの責任者に向かって心の中で思わず叫んでしまった。

      ボーっと生きてんじゃねーよ!
 

 



核燃料サイクルの図解

 核燃料サイクルの記事を見て、よく分からなかったので、図解したものはないかと探してみた。すると、つぎのような図【時事ドットコムニュース【図解・社会】核燃料サイクルの現状】があり、「分かりやすそう」に見えた。

核燃料-1


 ところが、この図が、「図解の基本」を弁えないもので、むしろ、疑問が深まるばかりの図だった。

 問題点は大きく2点あり、それぞれ、赤の楕円の実線と破線で囲んだので、どう問題なのか考えてほしい。

核燃料-2

【1】 「プルサーマル発電」は「MOX燃料工場」で作られる?

 まず、赤の実線で囲んだ「プルサーマル発電」だが、「MOX燃料工場」と「原発」を結ぶ緑色の矢印の横に書かれている。

 他にも、緑色の矢印は9箇所にあるが、いずれも、ある施設・工場から、別の施設・工場に送られる物質の名前が書かれている。

 ところが、「プルサーマル発電」だけは、物質名ではない。「MOX燃料工場」から出てくるのだから、「MOX燃料」と思われるのが、「MOX燃料」とは書かれていない。

 複雑なものを図解するに際しては、矢印はよく使われ、非常に便利なものである。ところが、便利なだけに、「雰囲気」で使ってしまい、矢印が何を意味するのか曖昧なものが非常に多い。

 ここでは、矢印は、矢印の元に書かれた施設から、矢印の先に書かれた施設に、矢印の横に書かれた物質名が送られる、という意味だということは容易に理解できる。

 ところが、「プルサーマル発電」だけは、その使い方から外れている。図の作成者の認識が「いい加減」なのだろう。

【2】 「行き場なし」の意味

 次に赤の破線の楕円で囲まれた「使用済みMOX燃料」だが、「原発」から出てくるものには「行き場なし」との記載が付け加えられている。

 他方、「高速増殖炉」から出てくるものは、「再処理施設」に送られるようだが、その「再処理施設」が「未定」ということだ。結局は、これも、「行き場なし」ではないのか。

 結局は、どちらも、本来は、再処理施設を作って、そこに送られるはずなのだが、その再処理施設が、どこに建てられるのか未定のため、「行き場なし」ということだろう。

 結局は同じというのであれば、表現も同じにすればよい。たとえば、「原発」からの緑の矢印の行き先を、「再処理施設」にすればいいのだ。異なった表現をするから、分かりにくくなるのである。
 
 同じことは同じ表現にすべきことは、過去の記事【一瞬で分かるようにする】でも触れている。

【3】 「現状」「将来」の意味

 「現状」「将来」と分けているが、「現状」の方も、「MOX燃料工場」「再処理施設」が「未完成」となっており、「サイクル」は完成していない。

 「現状」とは、既に完成している「リサイクル」であり、「将来」とは、今後に完成が予定されている「リサイクル」のことだと思っていたのだが、そうではない、ということになる。

 だとしたら、「現状」と「将来」は、どういう意味で使っているのだろうか?

無料Wi-Fiと携帯充電器 内容と見出しを対応させる

 ある私鉄の無料サービスに関する説明だ。

京阪-1


 一番下に「数に限り」とある。無料Wi-Fiで、「数に限り」とは、どういうことか、と思ったら、すぐ上に、「携帯電話充電器等もご用意しております。」とあった。

 要するに、無料Wi-Fiの話ではなく、携帯電話充電器の数に限りがある、ということのようだ。

 そもそも、見出しは、「無料Wi-Fi」となっている。携帯電話のことを書きたければ、別に、「携帯電話充電器」という見出しを作って、そこに書けばいい。

 無料サービスには、他に「ブランケットの貸し出し」もあるのだが、携帯電話充電器の有無に関心のある閲覧者は、見出しだけ見て、充電器はないものと誤解してしまいかねない。

 そんな誤解のないようにしたのが、次の改善案だ。

京阪-3

 なお、元の説明では、携帯電話充電器「等」となっていたが、「等」の中身の説明はない。無用な疑問を抱かせないよう、改善案では、「等」を削除した。

 また、一番下の行が、「※数に・・・」とあるのを、「※ 数に・・・」と変更した。「※」の後ろにスペースを入れることによって、「※」が目立ち、注意を喚起する機能があるからだ。




土曜は平日か?

 ある施設の駐車場の利用案内だ。

利用時間-1


 利用時間の欄には、土曜日の記載はない。と言うことは、土曜は休みなのか?平日というのは、一般的には土曜を含まないようだが、含んで使われる場合もあるし、この場合は、どうなんだろう?

 そう思いながら、料金のところを見ると、「日祝土」という記載があり、土曜日も営業していることは明らかだ。

 営業していることは分かったものの、土曜の利用時間は、平日と同じなのか、日曜・祝日と同じなのか?

 日曜・祝日に土曜を含まないのは明白だが、平日は土曜を含んで使われる場合もある。そう考えると、ここでは、土曜は平日に含むと考えるのが妥当なようだ。

 この解釈を前提にした改善案を作ってみた。

利用時間-2

 土曜を明記したほか、以下のような変更を加えた。

 ● 火曜日 → 火曜  無駄な「日」は記載しない

     意味が通じる限り、無駄な記載は極力、省くべきである。

 ● 曜日ごとの利用時間・料金を1行に

     元の表では、情報が分散して見にくいが、1行に書かれていれば、一目瞭然である。






 

ローガングラス?  

 今朝、とある役所のカウンターで書類を差し出し、職員の対応を待っているときに、こんな文字が目に飛び込んできた。

  ローガングラス


 いったい、何だ? と思って、そのすぐ下を見ると、今度は、アルファベットで、こう書かれているに気がついた。

  ROUGANGLASS


"rougan" という英単語を頭の中で検索しても私の記憶の中にはない。
そのうち、視野に入って来てたのが、これだ。

老眼鏡

 「老眼鏡」なら「老眼鏡」と書けばいいのに、ことさらに、カタカナ、アルファベットで、英語もどきの表示をするから、分かりにくくなるのだ。

 こんな気持ちの悪い表現を考えた人は、おそらく、こう考えたのだろう。

 老眼鏡というのは、「老」という文字が入っており、否定的なイメージがある。小さな文字が読みにくい人に、「老」を意識させることなく、気軽に「老眼鏡」を手にとってもらうには、そのイメージを払拭すべきだ。とりわけ、役所の窓口では、書類の内容を誤解することのないよう、小さな文字でも、しっかり読んでもらうことが必要だ。そのためには、無理して裸眼で読むのではなく、老眼鏡をかけて読んでもらいたい。

 そこで、「老」のイメージを払拭し、「お洒落」なイメージを持たせて、気軽に手に取ってもらえるには、カタカナ、アルファベットにするしかない。

 その結果として生まれたのが、「ローガングラス」であり"ROUGANGLASS"だろう。

 意味が理解できた後も、この表現の気持ち悪さは拭えない。こんな感覚は私だけではないだろうと思い、ネットで検索してみると、【Go for It! ローガングラス??】という記事が見つかった。

みずほ銀行本郷支店は、どこにある? 無益な情報は有害だ  【タイトルの変更】

 昨日の記事【無益なものは有害だ みずほ銀行店舗検索の地図】のタイトルを変更した。

 【前】  無益なものは有害だ みずほ銀行店舗検索の地図
 【後】  みずほ銀行本郷支店は、どこにある? 無益な情報は有害だ


変更点は、3点ある。

● 抽象的説明の前に具体例を
 
 おぼろ気な記憶だが、むかし読んだ憲法の教科書に書かれていたことを思いだした。

 憲法第一条「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」の解説に、「人は抽象的なものは観念しにくいので、具体的な存在を象徴とすることにより、抽象的な存在を想起させる」といった趣旨のことが書かれていたのだ。

 確かに、キリスト教の偶像崇拝もそうだろうし、数多くの聖画も、そのような効果を意図したものだろう。

 そういうわけで、まず、具体例をかかげた方が、読者にとっては、とっつきやすいはずだ。

● 具体例は、徹底的に具体的に

 具体的なものに、上記の効果があるのなら、具体性は、徹底的にした方が、より効果的なはずである。

 そこで、「みずほ銀行店舗」という記載を「みずほ銀行本郷支店」にしたのだ。

 「店舗」というだけでは、漠然としているが、「本郷支店」とすることによって、より身近に感じられるのではないだろうか。

 もちろん、国民全体で見れば、「本郷支店」など見たことも聞いたこともない人が多数派だろうが、それでも、具体的な地名を含んだ支店名が書かれていることによって、なんとなく「身近」に感じられるはずである。

● 漢語ではなく、やまとことば

 「検索の地図」を「どこにある?」にした。 

 漢語は、千年以上の歴史があるとは言え、日本人にとっては、やはり「借り物」である。「どこにある?」とすることによって、なんとなく、自分が当事者になっているように感じられるではないか。



みずほ銀行本郷支店は、どこにある? 無益な情報は有害だ 

 みずほ銀行の支店について調べるために、銀行のウェブサイトのトップ頁から、【ATM・店舗のご案内】という頁を開いたところ、真っ先に目に飛び込んできたのが、次の地図だ。

みずほ支店-1


 ここまでは、よくある話で、地図上の地域をクリックしていくと、順次、詳細な地図が表示され、目的の支店に辿り着けるという仕組みだ。

 東京の支店を調べたかったので、早速、地図の「関東」の所をクリックしたのだが、反応がない。マウスの調子が悪いのかと思い何度もクリックしたが同じだった。

 どうも、地図上の「関東」は、どこにもリンクしていないらしい(私の使っているブラウザの設定では、リンクが設定されている所にマウスポインタを移動すると、マウスポインタの形状が、人差し指を突き出した右手のイラストに変化する)。

 ふと地図の右手を見ると、こんな表が表示されている。

みずほ支店-2


 結局、そこにある「東京都」をクリックして、目的の支店を調べることができたのだった。

 冒頭の日本地図は、店舗検索に何ら役立っていないどころか、リンクが設定されていると思わせて無駄なクリックをさせる点において、「有害」である。

 ウェブサイトの作成者が、「店舗検索なら地図を表示」という固定観念で地図を表示したものの、「何のために地図を表示するのか」という点を全く理解していなかったために、有害無益な地図を記載したのだろう。

 その後、みずほ銀行のウェブサイトを色々と見ているうちに、【ATM・店舗検索】という頁に辿り着き、そこには、次のような地図が表示されていた。

みずほ支店-3

 ここで、「東京都」をクリックすると、次の地図が出てくる。

みずほ支店-4

 更に、「文京区」をクリックすると、下記のとおり、文京区内の店舗の一覧が表示される。

みずほ支店-5


 不可解なのは、【ATM・店舗のご案内】と【ATM・店舗検索】が併存していることである。

 ウェブサイトの作成の担当者間での連絡が不徹底なのが原因だろう。

 けれども、外部の人間でも気づくことが、なぜ何年間も放置されているのか、不思議である(詳細は省略するが、上記の店舗検索に関する二つの頁は、遅くとも、2013年から併存している)。

なお、素材の提供をしていただいた、」みずほ銀行には、「ご意見・苦情」のフォームから、メールでお知らせをしておいた。







「新人王戦」の参加資格 条件を列挙する場合は、「または」か「かつ」かを明示する

 新しい年を迎えたが、今日の記事も将棋の話題だ。

 昨年、藤井聡太七段が、最後のチャンスとなった「新人王戦」で優勝し、元日の今日、豊島将之2冠(棋聖・王位)と「記念対局」を行った。

 対局の模様は、インターネットテレビ(ニコニコ生放送、Abema テレビ)で放映されたのだが、それぞれのサイトで、「新人王戦」の参加資格について解説をしている。

 今日の「素材」は、その解説なのだが、これまでと違って、最初に「改善案」を見てもらおう。

新人王-4

 藤井七段は、新人王戦を戦っているうちに、四段から、あっという間に七段になったため、棋士に課された3つの条件のうちの一つ「六段以下」の条件を満たさなくなったために、新人王戦は今回で「卒業」となったのだ。

 次に、ニコニコ生放送の解説だ。

新人王-2

 最初の二行をみてほしい。

 「26歳以下」「六段以下」が並んでおり、この条件が、「かつ」なのか「または」なのか、判然としない。

 下の3行は、「または」であることは明らかであるから、上の2行も、「または」と解するのが自然である。

 けれども、「または」と解すると、16歳の藤井七段は、あと10年間も参加できることになり、「または」と解するのは明らかに誤りである。

 条件がいくつか並んでいる場合、「または」なのか「かつ」なのか判然としない例は、しばしば見かける。

 次は、Abema テレビ。

新人王-3


 問題なのは、丸括弧内の「年齢26歳以下でタイトル挑戦挑戦経験者を除く」の記載だ。

 文法上は、次のいずれとも解釈可能だ。
 

● 「年齢26歳以下」で「タイトル挑戦挑戦経験者を除く」
● 「年齢26歳以下でタイトル挑戦挑戦経験者」を除く


 「新人」を対象とした棋戦なのだから、前者の意味であることは明らかなのだが、文法上の曖昧さを文脈で補うのではなく、文法上も文脈上も「一義的」な文章こそ、分かりやすい文章である。

----- 追記 -------------------------------------------------------------------

 いつもは、「素材」→「改善案」というパターンが多いが、今回は、初めての試みだ。

 推理小説でも、冒頭から犯人を明らかにする「倒叙式」とうのがあるそうだが、果たして、今回の試みは、成功しただろうか。



日本語教育研究者の資質

 文化庁の【日本語教育研究協議会 第5分科会】の議事録の一部だ。

 読むのは大変だろうから、ざっと眺めるだけでいい。

どういうことかと言いますと,表現の中には非常に汎用性が高い便利な表現がたくさんあります。例えば「どうぞ」という言い方がありますね。「どうぞ」はいろいろな場面で使えます。ドアをあけて迎え入れるとき,それから,飲み物や食べ物を振る舞うとき,物を渡すとき,それから,「いいですか」と聞かれて,許可を求められて「はい,どうぞ」というような,そういう,一つ覚えればいろいろに使える表現,最初のテーマで自己紹介の練習をします。そこで「よろしくお願いします」とせっかく練習したわけですから,今度は「お願いします」が言えればいろいろなふうに使えるということを伝えます。お店で物を買うときには,「これ,お願いします」と言えばいいわけです。「先生,はさみ,お願いします」は,「はさみを貸してください」という意味にもなります。それから,「書いてください」だったら,動作プラス(書くまねをして)「お願いします」と言えば,それは「〜てください」が使えなくても人にものを依頼する表現になります。そういうように,一つ覚えればいろいろに使える,そういう汎用性の高い表現をぜひたくさん覚えていただきたいと思いまして,ハンドアウトの資料3で,表現一覧表(発話目標)として書き出しましたものを,それこそ「しみ込むように」繰り返し繰り返し扱っています。これは予定にかかわらず,ある表現が使えそうな状況が生まれたら,機を逸さないように即その場で練習をするようにしています。
教師は5人で1クラスを担当しておりますが,教師間で申し合わせていますのは,全員が参加できる教室活動を目指すということです。先ほど申しましたように,耳が遠かったり,目が余り見えないという方もいらっしゃいます。どうやってそういう方が日本語を覚えていくんだとお思いになるかもしれませんが,そういう方でもあっても,私たちはクラスからはじき出さないように,みんな一緒に活動ができるということを目指しています。もちろん一緒にやるといっても無理はさせないように,そこのところを本当にすごく気をつけて,十分注意しながら,それでもともかく全員で力をあわせて一つのコミュニケーションが成り立つということを目指しています。
そういう場合に,教師の発話というのは,とにかく分かりやすさが第一だと思っています。ですから,学習者に正確な文法を要求しないのはもちろんのことですが,教師の方も,例えば助詞抜け文もありということで,分かりやすさ第一の話し方をしています。


 何行にもわたって文字がびっしりと並んでいる。

 一目見ただけで読む気が萎えてしまう。

 意を決して読み進めて行っても、右端まで行って次の行を読もうとすると、どの行を読めばいいのか戸惑ってしまう。

 一文ごとに改行し、空白行を挿入すれば、それだけで、ずっと読みやすくなる。

どういうことかと言いますと,表現の中には非常に汎用性が高い便利な表現がたくさんあります。

例えば「どうぞ」という言い方がありますね。

「どうぞ」はいろいろな場面で使えます。

ドアをあけて迎え入れるとき,それから,飲み物や食べ物を振る舞うとき,物を渡すとき,それから,「いいですか」と聞かれて,許可を求められて「はい,どうぞ」というような,そういう,一つ覚えればいろいろに使える表現,最初のテーマで自己紹介の練習をします。

そこで「よろしくお願いします」とせっかく練習したわけですから,今度は「お願いします」が言えればいろいろなふうに使えるということを伝えます。

お店で物を買うときには,「これ,お願いします」と言えばいいわけです。

「先生,はさみ,お願いします」は,「はさみを貸してください」という意味にもなります。

それから,「書いてください」だったら,動作プラス(書くまねをして)「お願いします」と言えば,それは「〜てください」が使えなくても人にものを依頼する表現になります。

そういうように,一つ覚えればいろいろに使える,そういう汎用性の高い表現をぜひたくさん覚えていただきたいと思いまして,ハンドアウトの資料3で,表現一覧表(発話目標)として書き出しましたものを,それこそ「しみ込むように」繰り返し繰り返し扱っています。

これは予定にかかわらず,ある表現が使えそうな状況が生まれたら,機を逸さないように即その場で練習をするようにしています。

教師は5人で1クラスを担当しておりますが,教師間で申し合わせていますのは,全員が参加できる教室活動を目指すということです。

先ほど申しましたように,耳が遠かったり,目が余り見えないという方もいらっしゃいます。

どうやってそういう方が日本語を覚えていくんだとお思いになるかもしれませんが,そういう方でもあっても,私たちはクラスからはじき出さないように,みんな一緒に活動ができるということを目指しています。

もちろん一緒にやるといっても無理はさせないように,そこのところを本当にすごく気をつけて,十分注意しながら,それでもともかく全員で力をあわせて一つのコミュニケーションが成り立つということを目指しています。

そういう場合に,教師の発話というのは,とにかく分かりやすさが第一だと思っています。

ですから,学習者に正確な文法を要求しないのはもちろんのことですが,教師の方も,例えば助詞抜け文もありということで,分かりやすさ第一の話し方をしています。


 単に読みやすくなっただけではない。

 一文ごとに、「ここは、こういう意味だな」と頭の中で反芻しながら読み進めることができ、文章全体の理解も容易になる。

 また、読み終わった後に、ざっと眺めれば、1~4行の塊ごとに、それぞれの要旨を思い出すことができ、記憶にも残りやすくなる。

 ところで、上記の議事録には、もっと驚くような「分かりにくさ」が潜んでいる。

西尾センターを退所してから,そのグループで,あるいはそのクラスで続くということはあり得ないわけです。


 「西尾センター」という施設があるのかと思ったら、そうではない。「西尾」というのは、発言者の名前なのだ。

 だったら、発言者は発言者と分かるように書けばいい。こんな感じである。

【西尾】 センターを退所してから,そのグループで,あるいはそのクラスで続くということはあり得ないわけです。


 こうしておけば、特定の発言者の発言だけを確認する場合にも、すぐに見つけることが可能になる。

 今回の記事の素材は、個人が趣味でやっているブログではない。文化庁の日本語教育研究協議会の議事録である。

 議事録を作成した文化庁の職員の意識の低さも問題だが、日本語教育の研究者は、こんな議事録を見て何も思わなかったのだろうか。思ったけれども、口を噤んでいるのか。声を上げたが、そのまま放置されているのか。

 いずれにせよ、私が文化庁に指摘して、改めてもらうほかはない。

 というわけで、文化庁のウェブサイトから「御意見」を送信した。

日本語教育-3

 ところで、注意深い読者は、冒頭に引用した議事録の中に「分かりやすさが第一」という記載があったのに気がついたかも知れない。こういうのを、ブラックユーモアというのだろう。

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「時間泥棒」仕置人

Author:「時間泥棒」仕置人
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 玉石混淆の情報が溢れる社会の中で、効率よく、的確に、情報を取得し、提供するには、どうすればいいのか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

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