Wikipedia【村山聖】の添削

 今日も将棋に関する話題だが、羽生と並び称され、映画にもなった早逝の棋士、村山聖についての記事【Wikipedia 村山聖】 からの引用だ。

村山はかなりの「負けず嫌い」な性格で、将棋以外でも、特に囲碁や麻雀をやって、負けるとすごく悔しがっていた。生前、徹夜で麻雀に付き合った当時奨励会三段だった瀬川晶司は「なんて子供っぽい人だろう」と思い、「A級がそんな事を言うんじゃないでしょ」と言われたことがきっかけで、亡くなるまで瀬川と友好関係になった。


 意味をとれなくはないのだが、主語述語の対応が混乱するなど、色々と問題がある。【書き換え後のwikipediaの記載】がこれだ。

村山はかなりの「負けず嫌い」な性格で、将棋以外でも、特に囲碁や麻雀をやって、負けるとすごく悔しがっていた。生前、徹夜で麻雀に付き合った当時奨励会三段だった瀬川晶司は「なんて子供っぽい人だろう」と思い、「A級がそんな事を言うんじゃないでしょ」と言ったことがある。それがきっかけで、村山は亡くなるまで瀬川と親交をもった。


 改善点は、以下の点だ。

● 第2文を二つに分けた。 

● 「言われた」を「言った」にした。   (受動態 → 能動態

● 友好関係 →親交
    「友好関係」   国家、組織、これらを代表する人物などの関係
    「親交」 関係 個人の私的な関係
  それぞれの用例は、「友好関係」の用例 「親交」の用例 を参照されたい。

---- 追記 --------------------------------------------------------------------

 村山聖と瀬川昌司は、二人とも、その人生が小説や映画になっている。
 映画の解説は、
聖の青春】【泣き虫しょったんの奇跡】にある。


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前置きはいらない! 「フェルミ算」と「さくらんぼ計算」

 以下の文章は、昨日の【「さくらんぼ計算」って知ってますか?】で取り上げた記事の著者が書いた別の記事【AI時代の一流人材を作る「さくらんぼ種抜き検算」】からの引用だが、大変「分かりにくい」。とはいえ、「分かりやすさが第一」の素材としては最適なものなので、辛抱して読んでほしい。

今日の物理学は理論家と実験家が完全に分業していますが、最後の「大理論家かつ大実験家」であった物理屋として、エンリコ・フェルミ(1901-54)の名を挙げても、いささかでもまともな物理に関わる人なら、誰も否定しないでしょう。

 「原子の火」をつけた張本人でもありますが、何も知られぬ時代にゼロからそれを実現したので、被曝したいだけ被曝して、最期は凄惨な闘病生活であったことを、最も若いフェルミ教授の博士学生だったジェローム・フリードマン博士から直接伺ったことがあります。

 チャンドラセカール、南部、ヤンといったそうそうたる物理学者が、看病や心のケアに奔走した経緯を直接当事者からうかがったのは、私にとって一生の宝ものになっています。2004-05年にかけて、国連「世界物理年」の日本委員会幹事を務めたときにうかがいました。

 このフェルミ教授が、直観的に整合した計算であるかをざっくりと見積もる計算の達人中の達人であったのは、人も知る事実で「フェルミ算」といった言葉が現在でも使われています。

 AI時代に子供たちに求められる、最も重要な「計算能力」は、鶴亀算でもバブルソートでもなく、この「フェルミ算」だと断言して構わないと私は思っており、その原点が「さくらんぼ検算」にあると言えるかと考えます。


 お疲れ様でした。では、こんなふうに書かれていたら、どうだろう。

AI時代の子供たちに必要な計算方法は、もちろん「鶴亀算」ではありません。コンピューターのプログラミングの基礎で習う「バブルソート」でもありません。必要なのは、「フェルミ推定」です。

 「フェルミ推定」とは、厳密な数字はさておき、ざっくりとした数字を見積もる計算です。たとえば、「東京から大阪まで昼夜を問わず早足で歩き続けた場合、何日かかるか」という問題に対して、「早足だと時速5キロ、東京大阪間は500キロだから、100時間。1日は24時間だから、約4日」というふうに見積もる計算です。

 この「フェルミ推定」の原点が「さくらんぼ計算」にあります。


冒頭に引用した文章は、核心に至るまでに、周辺的なことを延々と述べている。具体的には、以下の諸点だ。

 ● フェルミ教授は物理学の大家であった。
 ● フェルミは、「原子の火」をつけた。
 ● その結果、被爆により凄惨な闘病生活を送ることになった。
 ● フェルミの看護のために、錚々たる物理学者が奔走した。
 ● 自分は、そのことを、国連のイベントの幹事を務めたときに、彼らから直接に聞いた。
 ● フェルミは、後に「フェルミ算」と呼ばれる計算の達人だった。

 一番最後は、「フェルミ算」の名前の由来を示すもので書いてもいいが、その前に書かれたことは、本筋とは何の関係もなく、有害無益である。

 ひょっとしたら、自分が、「錚々たる物理学者から直接に話を聞ける人物」であり、「国連のイベントの幹事を務める人物」であることをアピールしたかったのではないかと思ってしまう。

 もちろん、前置きが必要な場合もある。走り幅跳びでも、走り高跳びでも、適度な助走は不可欠である。だが、必要だからといって、100メートルも「助走」したら、まともな記録を出せるわけはない。文章も同じだろう。

 ところで、私が聞き直した文章は、不要な「前置き」を削除しただけでなく、若干の修正、補足を加えている。以下の諸点だ。

 ● 「バブルソート」について説明を加えた。 (一般に知られていない用語には説明を加える)
 ● 「フェルミ算」を「フェルミ推定」にした。 (一般的な名称を用いる)
 ● 「フェルミ推定」の具体例を示した。 (内容を理解してもらうには具体例で説明する)
 ● 「と断言して構わないと私は思っており」とか「にあると言えるかと考えます」といった回りくどい表現を、「です」「あります」という簡潔な表現に変えた。

 ところで、「分かりにくい文章」でも、「読む価値のない文章」なら、読まずに放っておけばいいのだが、この著者の文章のように「それなりに読む価値のある文章」の場合は、「分かりにくさ」は罪である。この著者こそ、「時間泥棒」の称号に相応しい。

 せっかくの「価値ある文章」である。著者には、立派に更生して、「分かりやすい」文章を書いてほしいものだ。多才な、この人の能力をもってすれば、決して不可能なことではない、と断言しても過言ではないのではないかと私は考えているのである。




「さくらんぼ計算」って知ってますか?

 「さくらんぼ計算」なるものが、話題になっているそうだ。
 
 「6+8」といった、繰り上がりのある、一桁の数の足し算に関し、小学1年生にも分かりやすくという趣旨で考案された計算方法で、こんな方法だ。

 【1】 10から8を引く。    (8に何を足せば10になるかを考える)    
 【2】 6を、4と2に分ける。  (2は、上記の答えの2)    
 【3】 2と8を足して、10にする。
 【4】 これに、残りの4を足すと、14。これが答え。

さくらんぼ-1


 6を4と2に分けるところが、上の図のように「さくらんぼ」のように見えるところから「さくらんぼ計算」という名が付いたようだ。

 「さくらんぼ計算」の存在を知ったのは、【「さくらんぼ計算」をけしからんと言う親の大問題】という記事を読んだからなのだが、この記事が、すこぶる分かりにくい。

 7頁わたって書かれているのだが、肝腎の「さくらんぼ計算」の説明は、2頁目の半ばになって、やっと登場するのだ。

 そこに辿り着くまでに、「さくらんぼ計算」について批判的な意見やあることや、その批判が的外れであることが書かれているのだが、対象となる「さくらんぼ計算」が何なのか分からないうちに、そんなことを読まされるのは、ストレスが増すだけである。

 こういった持って回った書き方は、ネット上の情報商材(英会話、投資、自己啓発等の電子書籍など)の販売サイトで目にすることが多いのだが、私なんかは、核心部分に到達するまでに、読む気をなくしてしまう。

 ただ、実際、そういった書き方が蔓延しているということは、それなりに集客効果があるのだろう。

 けれども、上記の記事は、そんな販売サイトの記事ではない。純粋に、「さくらんぼ計算」に関する批判を糸口に算数教育の方法論について真面目に論じているのである。持って回った書き方などする必要はない。むしろ、せっかくの記事を最後まで読んでもらえないというデメリットさえある。

 実際、私も、友人から記事のアドレスを教えられたときには、1頁目を読んで放り出したくなったくらいである。

 ただ、そうしなかったのは、せっかく、友人が教えてくれた記事を読まずに放置するのは申し訳ないという思いがあったからである。


表の作り方

 ある病院で受け取った領収書の一部である。

診察-1

 表になっているのだが、実に分かりにくい。

 一般に、表の一番上の行と左端の列は項目名になっており、それ以外のところに、実質的な内容が記載される。

 たとえば、1番上の行の左から3列目は「入院料」となっており、その列は、入院料に関する情報が記載されているはずなのだが、実際は、そうなっていない。

 また、左端の列に書かれている項目名は、保険点数、区分、保険点数、区分、保険点数、区分と、「保険点数、区分」が3つ繰り返されている。

 そもそも、表にするのは、二次元の情報を、見た目も、二次元にして表現することにより、理解をしやすくすることにある。

 上記の表は、本来は、2行×24列の横長の表にすべきだったのだが、それだと用紙に収まらないので、3つに分けて、それを縦に並べたため、一般的な表とは異なった形式になったのである。

 そういうことなら、本来は2行の表であることを示すために次のように区切り線を入れ、項目名のところは色を変えれば、格段に分かりやすくなる。

診察-3

 こうすれば、1番上の行が項目名であるとの誤解は招かないはずであり、3行目以下とは全く無関係であることも分かるのである。





日産、ルノーの出資関係 矢印の活用

 ゴーン会長の逮捕で、改めて、日産、ルノーの関係が話題となっているが、この問題は経済紙では以前から取り上げられており、記事の中には次のような図が載っている【日産に迫る仏政府の影 ゴーン氏、ルノーCEO続投 日経 2018/2/16】。

日産-1

 「分かりやすく」図解をしたのだろうが、せっかく図解するなら、次のようにすべきだろう。

日産-2

 これなら、日産、ルノーの関係が対等ではなく、ルノーの日産に対する影響力は、その逆の3倍に及ぶことが一目瞭然であり、記憶にしっかり残るはずである。

 せっかく図を用い、その中で資本関係を矢印で表現したにも関わらず、矢印の表現力を利用しないのはもったいない。

 「矢印の表現力」とは、概ね、以下の点である。

 ・ 複数の要素の関係 矢印の両端
 ・ 上記の関係の方向 矢印の方向
 ・ 上記の関係の大小 矢印の太さ
 ・ 上記の関係の中身 矢印の線の種類(実線、破線、二重線)



---- 追記 --------------------------------------------------------------------

「影響力が3倍」と書いたが、実際は、議決権の3分の1を有していれば重要事項の決定のための特別決議を単独で阻止できるなど、単純に「3倍」という以上の力がある。


 

カリフォルニア州の司法試験

 【アメリカのロースクールに行かずに、育休中にカリフォルニア州の司法試験に合格した日本人弁護士がどんな勉強をしてたのか】というブログがあり、その中に、こんな一節があった。

試験内容
毎年2月と7月の最終火曜日と水曜日の2日間に亘って開催される、Essay(論文試験)5問、Performance Test(与えられた資料を基にシチュエーションに沿った書面を作成する試験。以下「PT」)1問及びMultistate Bar Examination(4者択一式の試験。以下「MBE」)200問の試験です。


 落ち着いて読めば分からないことはない。

 けれども、ネットに溢れる玉石混淆の膨大な情報の中から役に立つ情報を瞬時に取捨選択するのが習慣となっている私には、こんな文章を読むのは苦痛である。

 で、分かりやすく書き直してみた。

試験日

  年2回 2月、7月
  最終火曜日と水曜日の2日間


試験内容

  Essay 
     5問
     論文試験

  PT  (Performance Test)
     1問
     与えられた資料を基にシチュエーションに沿った書面を作成する試験 

  MBE (Multistate Bar Examination) 
     200問
     4者択一式の試験 



 冒頭の文章が分かりにくいのは、以下の点が原因だ

 ● 試験の日と、試験の内容という、異なった種類の情報が一文で書かれていること

 ● 試験の名称、略称、内容、問題数という様々な情報が、丸括弧や鍵括弧を多用して、一文に押し込められていること

 ● Essay と PT とで、内容の説明のレベルが異なること
     ( Essay は、「論文試験」と、問題の形式だけの説明だが、 PTは、より具体的な内容を説明している)

 書き直し後の文章は、単に「分かりやすい」だけではない。

 情報が「構造化」されており、記憶にも残りやすいはずである。





自己満足よりも、相手の理解

 京都市では、家庭ゴミなどを直接、市の処理施設に持ち込むことができるのだが、その説明書に、以下のような記載がある【持込ごみの受け入れについて】。

受付-1

● 標題
 標題が「持込ごみの受付時間」となっているが、受付時間に限らず、搬入場所などの説明もある。
 中身に即して「持込ゴミの受付の概要」とすべきである。

 なお、「ごみ」は「もえないごみ」のように平仮名が続く場合があるので、読みやすさを考えると「ゴミ」と書いた方がいいだろう。

● 受付時間
 「午前9時から正午まで」などとなっているが、24時間表記で数字と記号のみの方が、一読して理解しやすいし、記憶にも残りやすい。

● 休所日
 非常に分かりにくい。
 例えば第1土曜日は、どうなるのか? じっくり考えながら読んで、ようやく、第1土曜日は、原則として休業日だが、祝日の場合は受付をしていることを読み取ることができるのだ。

 分かりにくさの原因は、以下の点にある。
  ・ 受付できる日を「休所日」と裏から説明していること
  ・ 例外の説明をする括弧が二重になっていること

 以上の点を踏まえて作り直したのが、次の表だ。

受付-3

 これでも、受付曜日については、まだ、一読して分かるとは言いがたい。

 そんなときは、表にするに限る。

受付-4

 これなら、誤解の余地はない。

 次に、料金については、次のような説明がある。

手数料-1

 これも、非常に分かりにくい。
 
 一番上の表だけでは分かりにくいと思ったのか、250kgと1000kgの場合を例にして、グラフのような図と、黒板に見立てたものに書いた計算式とで説明をしているのだが、これが、輪をかけて分かりにくい。

 作成者が、それなりに工夫をしている跡は窺われるのだが、読み手に理解してもらえなければ意味がない。作成者本人は、「うまく説明することができた」と満足しているのだろうが、作成者の満足と、読み手の理解とは、一致するとは限らない。この点は、私も、常に自戒しなければいけないと考えている。

 そもそも、ゴミを持ち込もうと考えネットで情報を収集する利用者は、持ち込むゴミの量から料金が分かれば、それで足りるのだ。だったら、下のような料金表を載せておけば足りるだろう。
 
手数料-2

 料金表では、全ての場合を尽くすことができないのは当然だが、600kgを超える場合については、上のような説明をしておけば、比較的容易に計算できるはずだ。

 なお、料金表の右上の「ご注意!!」という吹き出し部分は、僅かだが左に傾けてみた。そうすることにより、そこに自然と視線が行き、注意喚起の目的に資するからである。



無駄な装飾は分かりにくさの原因

 先日、NHKの「クローズアップ現代+」で【暴言に土下座! 深刻化するカスタマーハラスメント】という番組をやっていた。

 飲食店やスーパーでのサービスが悪いと言って暴言を吐いたりする「カスタマーハラスメント」が以前と比べて酷くなっているとのことである。

 動画サイトのdailymotionで番組を見ることができるのだが、その中で、店舗などの従業員8万人へのアンケートの結果の集計が掲載されていた。

カスハラ-1


 グラフの表題が「顧客から受けた”カスハラ”の内容別件数」となっているのだが、文字の背景がごちゃごちゃして読みにくく、中央の”カスハラ”が”カスハラー”のように見えてしまう。

 白っぽい縁取りをした文字を、縁取りと同じ明るさの背景と黒っぽいアンケート用紙の跨がったところに配置したのが原因である。

 背景を、全て縁取りと同じ色にしてしまえば、どれだけ見やすくなるのか、上下を比べてみてほしい。

カスハラ-2





行為の主体は、主語でなくてもよい 「●●が結婚し」→「●●の結婚」

 以前の記事【タウリン1000ミリグラム】で、 45年前に自殺した天才CMディレクター、杉山登志のことを書いた。

 先ほど、【Wikipedia】 で杉山のことを調べたら、こんな一節があった。

秋川リサが21歳で結婚し、軽妙なスピーチを披露したがその2ヶ月後、自宅マンションで首吊り自殺を遂げた。


 てっきり、結婚の当事者である秋川リサが自分の結婚式で「軽妙なスピーチ」をしたのかと思ったのだが、後ろに自殺のことが書いてあり、「軽妙なスピーチ」をしたのは杉山だと分かった。

 Wikipedia には編集機能があるので、誤解の余地のないように次のような変更をしようと思った。

秋川リサが21歳で結婚し、その式で杉山は軽妙なスピーチを披露したが、その2ヶ月後、自宅マンションで首吊り自殺を遂げた。


 ところが、改めて、その周囲の記述を見ると、「年譜」という表題のもとに、年号と出来事が、主語を抜きに、例えば「1970年(昭和45年)妻と離婚。」のように書かれていた。

 そうすると、一か所だけ「杉山は」という主語を入れるのも、ちぐはぐな感じがして、「杉山は」とは書かずに、なおかつ、「軽妙なスピーチ」をしたのが秋川リサであるとの誤解を生まないような表現をしなければならない。そう考えて、次のように変更した。
 

21歳の秋川リサの結婚式で軽妙なスピーチを披露したが、その2ヶ月後、自宅マンションで首吊り自殺を遂げた。


 原文は「秋川リサが」という主語があったために、[結婚し」だけでなく、「披露し」も秋川リサの行為だと誤解される余地があったのだ。

 そこで、「披露し」の主語として「杉山は」と入れるのではなく、「秋川リサが」という主語を取り除いたのである。とはいえ、秋川リサが結婚したという事実まで取り除くわけにはいかないので、「秋川リサの結婚式」という表現で秋川結婚の事実を表したのである


 なお、冒頭の【Wikipedia】は、インターネットアーカイブに保存されている、私が修正をする前のものであり、現在のWikipediaの記事は、こちらを参照されたい。






「氏名を入力して登録して下さい」

 まず、この二つの文を読み比べてほしい。
 

【1】 赤ペンを購入して、校正をする。
【2】 赤ペンで書き込みをして、校正をする。


 どちらも、「●●をして、▲▲をする」という構造だが、●●と▲▲の関係は異なる。

 どう異なるのかは、下の図を見て考えてほしい。

何何して-1


 では、次の文は、どうだろう。

氏名を入力して、登録をする。


 氏名を入力すれば登録は完了するのか、あるいは、氏名を入力した後に何らかの操作をすることにより登録が完了するのか、分からない。図解すると、こういうことだ。

何何して-2


 結局、「●●をして▲▲をする」という場合、●●と▲▲の関係が不明瞭な場合は、読者をまごつかせることになる、ということだ。

 そんな場合は、こう表現するのがいいだろう。
 

【1】 氏名を入力し、次いで、登録をする。
【2】 氏名を入力することによって、登録を完了する。


 今回と同じ話題については、以前の記事【マウスの細胞を弱酸性液に浸し・・・】にも書いたことがある。


内容が同じなら、表現も同じにする

 弁護士ドットコム38号に労災給付と自賠責保険に関する裁判の解説が載っている。その中に、遅延損害金起算日につき、各裁判所の判断の違いを比較した表がある。

遅延損害金


 ぱっと見た瞬間、3つの裁判所で異なる判断をしたのかと思った。

 だが、第1審と控訴審の各判断を読んでみると、表現上の違いはあるが、起算日を「判決確定日」としている点では、違いがない。だったら、ことさら異なる表現をするべきではない。表現が異なれば、実質的にも違うのだろうという誤解を招きかねないのである。

 次に問題なのが、「第1審」「控訴審」「最高裁」という表現だ。どう問題なのかは、下の表を見てほしい。

審級

 左の列は末尾が「審」、右の列は末尾が「裁」となっている。

 つまり、事件の進行状況を、事件の進行段階から見たのが左の列であり、事件が係属し判断を下す裁判所から見たのが右の列である。

 記事のように異なる観点からの分類を混在させるのは、読者の思考を混乱させるだけである。

 どちらかの分類で統一する場合、私は、「裁」の方で統一するのがいいと思う。

 というのは、「審」は抽象的な概念であるのに対し、「裁」は、具体的な裁判所の場所、建物、あるいは、裁判官を意識させるものであり、より、理解しやすいからである。

 同じものを指す場合でも、できる限り、抽象的な概念を避け、具体的な実態をイメージできる言葉を用いるべきことは、以前のブログ、【フランチャイザーの・・・】の 【5】「加盟店」か「加盟者」か  にも書いたとおりである。









なぜ、一部の数字だけで納得できるのか

 本庶教授のノーベル賞をきっかけに、癌の治療薬オプジーボが脚光を浴びているが、癌の種類によって、オプジーボが効くものもあれば効かないものもある。

 実際に治療に使用するには、癌の種類ごとに国の承認を受けなければならないが、これに関連して、少し古いが、次のような記事があった【「オプジーボ」登場3年 がん免疫薬、見えてきた実像 日経 2017.7.17】。 

オプジーボはすでに5種類のがんで承認を得た。20種類以上で効果が期待されている。


  5種類、20種類と言われても、癌全体で何種類あるかが示されなければ、その意味するところは、分からない。

 ネットで調べても、80種類くらい列挙されているもの【国立がんセンター がん情報サービス】もあれば、20種類くらいのもの【がん治療.com がんの種類一覧】もある。

 さらに言えば、「5種類」といっても、胃がん、大腸がんなど、患者数の多いがんを含んでいる場合と、逆に、極めて症例の少ないがんのみである場合とでは、全然、意味が異なってくる。

 様々な事象について、数字を示されると、客観的な情報であり、何となく説得力があるように思えるのだが、実際は、上記のように、前提となった数字も同時に示されないと、何の意味もないということが、結構ある。

 これまでも、何度も書いたことであるが、残念ながら、こんな例が山ほどあるのが現状だ。

  【数字は、過去と比較してこそ意味がある
  【オーケストラは理系のサークル活動?
  【割合の単純比較は、危険 シートベルト不着用の危険性


 
 

棒グラフ、折れ線グラフ

 私自身、自ら「分かりやすさが第一」というブログを書いていることもあって、ネット上で、似たような記事がないか気を付けているのだが、今日、【ANA社員が解説"プレゼンの極意"】という記事を見つけた。

プレゼン-1

 中には参考になる指摘もあるので、ぜひ、目を通してほしいのだが、問題点もある。
 
 まず、この部分を読んでほしい。

プレゼン-2

 私は、最初、 「数値の増減=棒グラフ」を強調 と読んでしまい、意味が分からなかった。実際は、 「数値の増減を強調」=棒グラフ ということだった。

 そういうことなら、以下のように、意味のまとまりを視覚的にもひとまとまりにするのがよい。

プレゼン-3

変更点は、以下の点である。
 ● 「数値の増減を強調」を白の枠で囲った。
 ● 「=棒グラフ」を0.5行分だけ下に移動し、「数値の増減」「を強調」の丁度、中間に置いた。
 ● 「=」を右向きの矢印「」にした。 

 「数値の増減を強調」→「棒グラフ」
 「数値の推移を強調」→「折れ線グラフ」
 ということで、何となく分かったような気になるのだが、数値の「増減」と「推移」は、どう違うのか、私には理解できない。

 そこで、その具体例として挙げられているグラフを見ると、こうなっている。

プレゼン-4  プレゼン-5


 どう違うのか。どうやら、左は、時間的には2017年と2018年の二つの期間の数字の比較であるのに対し、右は、多数の期間の数字の比較という点で違い、前者は棒グラフ、後者は折れ線グラフを用いるべき、ということのようだ。

 つまり、どちらも、「増減」には違いなのだが、比較する時点が多い場合を「推移」という特別に別の言葉で表現しているようなのである。

 けれども、どちらも、「増減」であり「推移」であることには変わりなく、この言葉だけからは、作者の意図は理解できない。

 言葉だけで意図を伝えようとすれば、「二つの期間の増減」は棒グラフ、「多数の期間にわたる増減」は折れ線グラフ、と表現するほかない。

 それは、さておき、左側の、2017年と2018年の増減のグラフそのもにも、問題がある。

プレゼン-4

 ご覧のとおり、2017年の左に2018年が描かれているのだ。

 普通のグラフでは、時間が左から右へと経過していくように描かれている。実際、上の折れ線グラフは、そうなっている。ところが、この棒グラフだけは、それが逆行しているのだ。

 意味をとれない訳ではないのだが、見る側には、大きなストレスとなるので、よほど特別な理由のない限り、一般的な時間の流れと逆の表現は避けるべきである。




根拠として十分かを検証する 「毎年20人前後しか通過できない狭き門」

 史上最年少棋士、藤井聡太四段の誕生以来、将棋関係の記事を目にすることが多くなった。今日も、【ネット将棋「謎の強豪」正体は藤井聡太 感動さえ与えた 朝日 2018.11.8】という記事があり、そこに、こんな一節があった。

日本将棋連盟のプロ棋士養成機関「奨励会」の入会試験は、全国の将棋の秀才が挑んでも、毎年20人前後しか通過できない狭き門だ。


 何の問題もない記事のように見えるだろうか。

 「全国の将棋の秀才が挑んでも、毎年20人前後しか通過できない狭き門だ。」というのだが、入会試験を受けるのが仮に25人程度だとしたら、8割が合格できるのであり、決して「狭き門」ではない。

 調べてみると、今年は、「関東は48人中20人、関西は30人中11人が合格した。」【岩手から2人、成るぞプロ棋士 同時に将棋奨励会合格 岩手日報 2018.8.25】ということで、4割弱の合格率である。

 もともと地元では、みな「天才少年」だったわけで、それでも4割弱しか合格できないということであれば、「狭き門」と言ってもいいかもしれない。

 ここから、話を抽象化する。

 一般に、事実Aと事実Bの双方が認められて初めて結論が導けるという場合があるが、事実Aだけを書いて、直ちに結論を導いている例が多いのである。

命題


 このような論理飛躍をしてしまう原因としては、以下の二とおりが考えられる。

【1】 事実Bは、自分にとっては当たり前のことなので省略してしまう。
     上記の記事

【2】 結論を導くのに事実Bが必要だと言うことを理解していない。
     具体例
       【オーケストラは理系のサークル活動?
       【マグネシウムは、41ミリグラム
       【原因は一つだけとは限らない

 【2】の間違いは、まともな論理的思考力があれば、冒しようのない間違いである。他方、【1】の間違いは、「自分が知っていることは誰でも知っている」と思いがちなため、注意しないと、誰でも、つい冒してしまい勝ちなものである。







 

  

グラデーションは、こうする その2 米中間選挙の開票結果の判明時間

 今朝の羽鳥慎一モーニングショーで、アメリカの中間選挙の開票の話題が取り上げられていたが、その中で、各州の開票結果の判明する時間が地図で示されていた。

結果判明-1


 東から西へと順に判明していく過程を色のグラデーションで表現しているのだが、何とも分かりにくい。

 そこで、青から赤へのグラデーションで作り直したのが、次の地図だ。

結果判明-3


 グラデーションで表現する場合には、以下の点に気を付けないといけない。

  ● 凡例を見ずに地図を見ただけで順番がわかるように、色相の差を小さくする。
  ● 目に負担がかからないように、二色の間のグラデーションにする。

 グラデーションについては、以前の記事にも書いたとおりである。

 【グラデーションは、こうする 風雨の予想図
 【赤い州、青い州
 【グラデーションのフェイント


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「時間泥棒」仕置人

Author:「時間泥棒」仕置人
.

 玉石混淆の情報が溢れる社会の中で、効率よく、的確に、情報を取得し、提供するには、どうすればいいのか、ということを常に考えています。

 ところが、そんなことには無頓着な人も多いようで、読者に対する配慮の一欠片もない文章を目にすることがあります。

 難解な文章で読者の貴重な時間を奪ってしまう人達のことを、「時間泥棒」と名付けました。

 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

 記事を読んで、自分も「時間泥棒」かな、と思ったら、早速、改めて下さい。また、あなたの廻りに「時間泥棒」がいたら、あなたの力で立派に更生させてあげて下さい。

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