24時間営業をやめた店舗の半数が大都市圏に集中

 近所のコンビニの「アルバイト募集中」の貼り紙が色褪せている。

 24時間営業の店は人手の確保に大変なようだ。

 今朝の新聞で、【脱24時間コンビニ400店超 人手不足の都市郊外に集中 チャートは語る 2020.2.23 日経】と言う記事を読んだ。

 記事には、24時間営業をやめた店舗が大都市圏に集中していることを示すデータとして、次のようなグラフが掲載されていた。

 
脱24時間営業

 これを見れば、確かに、24時間営業をやめた店舗の半数が大都市圏に集中していることが分かる。

 だが、そもそも、コンビニ自体が、大都市圏に集中しているのだから、24時間営業をやめた店舗が大都市圏に集中するのは当たり前のことである。

 コンビニ自体の大都市圏への集中度よりも、24時間営業をやめた店舗の大都市圏への集中度が特別に高いのであれば、特筆すべきことであるが、コンビニ自体の集中度を示さなければ、記事としての意味はない。

 何らかの主張に数値が根拠として示されている場合、その数値だけでは主張を裏付けられない、といった論理飛躍は、このブログでも度々取り上げてきた。

 今回の記事とともに、そのような記事を一覧できるようにしたので、【こちら】を、ご覧いただきたい。

「桜を見る会」  美しい日本

 「桜を見る会」に安倍総理の地元の山口4区の後援会員が850人も参加したことが、税金を使った後援会活動ではないかと批判されている【「桜を見る会」に安倍首相の地元から850人  「税金で後援会活動している」と共産が批判 2019.11.9 東京新聞】。

 確かに、山口4区後援会員が850人も参加したとなれば、「税金を使った活動」のようにも思えるが、仮に全国289の小選挙区の各議員の後援会員が平均して1000人ずつ参加していたのであれば、「みんな同じようなもので、安倍総理だけが非難されるいわれはない」ということになる。

 また、山口4区の後援会員が850人が突出した数字だとしても、安倍総理の言うように「自治会やPTAの役員方が後援会員と重複する」【同紙】ことの結果として山口4区からの招待者が多くなったというのであれば、必ずしも不適切とは言えないようにも思える。だが、この場合、山口4区に「自治会やPTAの役員方」が特別に多数、居住しているという事実が示されなければ、やはり、不適切の誹りは免れないだろう。

 ともかく、招待客の選定が「公正」に行われたの否かを、表に出た数値を元に検証するのが第一である。それを抜きに議論しても、意味がない。

 まず、今年の参加者は、1万8200人で【桜を見る会 首相の私物化許されぬ 2019.11.13 朝日新聞】、そのうち、850人が山口4区の後援会員である【東京新聞】。

 また、日本の総人口は、1億2709万4745人、山口4区の人口は、30万236人である【平成27年国勢調査人口(確定値)に基づく計算結果の概要 総務省】。

桜を見る会参加者

 以上のとおり、各選挙区からの参加者の数が、その選挙区の人口に比例すると仮定すると、山口4区からは、43人が参加するのが自然である。

 ところが、山口4区からの実際の参加者は850人であり、人口比例の場合の43人の約20倍である。

 招待客の選定を公正に行ったとしても、多少の地域差が出るのは当然であり、2,3倍程度なら、「そういうこともあるのかな」と思われるが、20倍となると、招待基準とされる「各界で功績、功労のあった方々」【東京新聞】に該当する人々が、山口4区には、それだけいたのか、ということになる。

 だが、文化、学術、芸能、スポーツどれをとっても山口4区が、それだけ傑出した人材を輩出しているなど聞いたことがない。
  
 山口4区と言えば、旧長州藩であり、ひょっとすると、「功労」というのは、「尊皇倒幕」「明治維新」に功労のあったということかも知れない。
 
 しかも、功績のあった人一代限りの顕彰で終わりにするのではなく、その恩を忘れず、子々孫々、功績を讃えて「桜を見る会」に招待しているということであり、これぞ、安倍総理の言う「美しい国」なのかも知れない。

 東京新聞には、ぜひ、真相の解明を期待したいものである。

----- 追記 2019.11.15 -------------------------------------------------------------------

 「桜を見る会」については、【安倍政権になってから4500人増加  比較すべきは、安倍政権の前の数字】にも書いた。

合併した町村の方が人口減が加速? 過去の数字も視野に入れて考える

 【合併した町村、加速する過疎 日弁連、旧町村と隣接自治体比較 2019.11.7 朝日新聞デジタル  】という記事があり、具体例として、次のような図が載っていた。

人口減少率-1


 2005年から2015年にかけての人口減少率が、2005年に長野市に合併した旧大岡村地域は、30.9%、合併しなかった生坂村は、14.7%であることを根拠に、合併した旧大岡村の方が人口減少が加速している、と結論づけているのである。

 確かに、合併後の人口減少率を比べれば、旧大岡村の方が大きいが、それだけで「人口減少が加速」と言えるのだろうか。

 「人口減少が加速」というためには、それ以前の人口減少の状況を見なければならないはずだ。

 たとえば、こんなふうになっていたら、どうだろう。

人口減少率-2

 旧大岡村は、人口減少率は、10ポイント少なくなって、人口減少は「鈍化」しているのに対し、生坂村は、人口減少が約3倍に「加速」しているのである。

 似たような話はいくらでも考えられる。

 A塾の生徒は、点数が20点伸びたが、B塾の生徒は、点数が15点しか伸びなかったとする。

 この場合も、A塾がB塾よりも優れていると結論づけるのは早計である。

 仮に、A塾の生徒は、A塾に入る前には、30点伸びていたが、B塾の生徒は、B塾に入る前には、逆に30点、点数が落ちていたとしたら、どうだろう。

 比較する場合は、現時点の数字だけ比べるのではなく、過去の数字も比べなければならないということである。

 それにしても、マスコミの検証能力の低さには目を覆いたくなる。


「理想的な気候」を売りに東京五輪を招致した猪瀬元知事の弁明  マスコミの検証能力

 先日の【温暖で理想的な気候の8月の東京  根拠を精査する必要】で、東京がオリンピックの開催都市に立候補した際にIOCに提出したファイルの中に8月の東京が「温暖」で「理想的な気候」だと書かれていたことを紹介した。

 そこで、【立候補ファイル】の該当部分を再掲する。

 東京での2020年オリンピック競技大会は7月24日(金曜日)の開会式に続いて、7月25日(土曜日)から8月9日(日曜日)までの16日間で開催し、閉会式は8月9日(日曜日)に予定する。また、パラリンピック競技大会は8月25日(火曜日)から9月6日(日曜日)までの開催を予定する。
 この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である。

 これに関連して、【「理想的な気候」のはずが札幌へ…掲げた猪瀬元知事は 朝日新聞デジタル 2019.11.4】という、オリンピック招致委員会の会長で都知事だった猪瀬直樹へのインタビュー記事が掲載されていた。

 その中に、こんな記述がある。

7月中旬までは雨期、9月からは台風シーズン。夏が最適というのは間違いない。


 確かに、二百十日とか二百二十日といった言葉からは、「9月からは台風シーズン」というのは妥当なようにも思える【暮らし歳時記】。

 けれども、私の子どもの頃からの記憶では、「9月からは台風シーズン」というより、「8月も9月も台風シーズン」なのだが、インタビュー記事では、その点についての検証がなされていないので、自分で調べてみた。

 そうすると、気象庁に【台風の平年値】というサイトがあり、そこに、こんな表が載っていた。

東京気候-3

 やはり「8月も9月も台風シーズン」であり、しかも、台風の発生数、接近数、上陸数、どれをとっても、8月の方が9月よりも多い。

 ただ、上記の接近数、上陸数は、日本全体の数字なので、念のため、オリンピック会場となる関東地方への接近数を調べてみた。

東京気候-4

 これを見ると、9月より8月の方が若干ましとは言えるが、「9月からは台風シーズン」と言って、8月が台風と無縁のごとく印象づけるのは、どう考えても無理がある。加えて、「温暖」と書かれたことについては何ら言及されていない。

 インタビュー記事は対象者の一方的な弁明、宣伝の場ではないのだから、そこで語られたことの真偽について、その場で問いただすなり、後で調べるなりして、その真偽を可能な限り、読者に伝えるべきであるし、本来そこで語られるべきことについて語らなかった場合には、その点を指摘すべきであろう。

 インタビューの相手の語った情報を右から左に伝えるだけでジャーナリストだと思っているのだろうか。

「私大は2000万、医大はそれ以上」?

 ラグビーワールドカップの対スコットランド戦で大活躍の福岡堅樹選手は、ワールドカップを最後に引退して、高校生の頃からの夢だった医師を目指すそうだが、同じく東京五輪を期に引退して医師を目指す柔道選手との対談が掲載されていた【五輪で引退、医師の道へ 柔道朝比奈とラグビー福岡 日刊スポーツ 2018.9.27】。

 その中の中で、医師になる道についての解説がある。

◆医師になるまで◆
 大学の医学部で6年間の教育を受け、医師国家試験に合格し、さらに2年以上研修医として経験を積む必要がある。国家試験の合格率は90%だが、大学の入学試験が難関で、偏差値は65を超える学校が多い。倍率も高く、私大では20~30倍の狭き門となっている。私大は学費も高額で、6年間で2000万~4000万円程度、医大はそれ以上が必要とされる。


 理解しがたいのが、この部分だ。

私大は学費も高額で、6年間で2000万~4000万円程度医大それ以上が必要とされる。


 単に「私大」とあり、言葉の上では何の限定もしていないので、「私大一般」を指すとも考えられなくはないのだが、医師になるための大学のことについて書いているのだから、この「私大」というのは、「私立の医大」のことだと受け取るのが普通である。

 そこで読み進めると,今度は、「医大」と出てくるのだから、何のことか訳が分からなくなった。

 とりあえず、「分かりやすく」、図解してみる。

医大の学費


 私大と比較すべきなのは、国公立大であり、医大と比較すべきなのは、その他の大学である。
 
 最初の「私大」というのは、私は、Aのことだと考えたのだが、実は、A+Bを指しているのか?
 次の「医大」というのは、A+Cをさしているのか?
 いくら考えても分からない。
 
 あれこれ考えているうちに、幼稚園の頃、「あいうえお」を覚えかけた頃のことを思い出した。

 大人から、「あいうえお」がちゃんと言えるか尋ねられたときのことだ。完璧に覚えたという自信はなかったのだが、とにかく覚えたということを言いたくて、あいうえお、かきくけこ、・・・と思い出しつつ、声に出して行った。

 途中で、つかえながらも、なんとか、「まみむめも」まで出てきたのだが、次が出て来ない。しばらく沈黙の時間があり、苦し紛れに、こう言った。
 

   あかさたな  


 このように、「あ行」「か行」「さ行」等と「あ段」「い段」等が、交差する概念であることが幼稚園児には理解ができず、並列的なものと誤って捉えていたわけである。
 
あいうえお

 そんな私であったが、小学校に入る頃には、何の苦もなく、「わいうえを」まで言えるようになっていたのは、もちろんである。

 なお、上の五十音表だが、や行や、わ行の書き方は色々あるようだ【五十音表の画像検索結果】。

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原発マネーの行方 マスコミの能力

 関西電力のトップが原発のある高浜町の助役から金品を受け取っていたことが発覚した。事件を報じる記事【関電会長ら6人に1億8000万円 福井・高浜町元助役から 原発マネー還流か 毎日新聞 2019.9.27 12:39】に、以下のような分かりやすい図が載っている。 

関電資金提供

 事件を受けて、社長の記者会見が行われたので、会見での質疑応答【関電金品受領問題会見詳報(1)受領は20人、計3億2千万円「社会の皆様に多大なご迷惑」岩根社長謝罪 産経新聞 2019.9.27】を読んでみた。

 全体として、以下の繰り返しである。

 ・ 聞かれたことに答えない。
 ・ 答えがなくても、再度、質問をすることなく、次の質問をする。

 責任者である社長の不誠実さは、今さら言うまでもないが、責任者が不誠実であればあるほど、記者の厳しい追及が求められる。ところが、回答がなくても、それ以上の追及をしていないのである。こんなことを繰り返していれば、不祥事の度に開かれる記者会見で、不祥事の当事者に、ますます舐められることだろう。

 ともかく、具体的な質疑内容を挙げて、どこが問題かを明らかにしていこう。

--個人口座への振り込みはないのか。岩根社長自身は

 岩根社長「私のところにはない」


質問は、以下の2点である。

 ・ 個人口座への振込の有無
 ・ 社長の個人口座への振込の有無

ところが、社長は、社長の個人口座への振込を否定しただけで、他の役員の個人口座への振込の有無を語っていない。つまり、初めの質問には答えていないのである。

 こういう中途半端な回答がなされた以上、こう聞くべきである。

 「社長以外の役員の個人口座への振込はなかったか」

--返金されているというが、国税の調査がなければ、返金はなかったのか

 岩根社長「儀礼の範囲内でないものは受け取ってはならないということを、継続している。メモをつけて、どれくらいのものを預かっているかを記録していた。返却したものもある。そういう対応していました」


 質問自体が不適切である。少なくとも、次のように、二段階で質問すべきである。

  ・ 国税の調査の前に返金したものはあるのか
  ・ (「ない」ということを確認した上で)国税の調査がなかったら、返金は行われなかったのか

 また、より具体的に、こう聞くべきだろう。
  ・ 国税の調査の前に、何件、いくら返金したのか、調査の後は、どうか。
 
 さらに、より具体的に、いつ、いくら返金したのかを尋ねるべきだろう。 

 --背広券を使用していたケースもあったというが

 岩根社長「基本的に、儀礼的な範囲のもの以外は返却したが、儀礼的であれば、そうでないものもあった」


 質問された背広券の使用の有無は答えていないのに、それ以上の追及はない。

 背広券の中で「儀礼的な範囲」のものと範囲外のものがあり、範囲内のものは使用した、と言っているようにも解される。

 だが、「儀礼の範囲」とういのは、当事者の従前の関係によって異なる。「背広券」といっても役員クラスが相手なのだから、2万、3万といったレベルではなく、少なくとも、5万、10万だろうが、それを「儀礼的」と考えたのか否かも追及すべきである。

 質疑応答は延々と続くのだが、一事が万事この調子だ。

 1対1の記者会見ではない。新聞、テレビ、通信社と少なくとも十数社の記者が会場にいるのである。それなのに、この体たらくだ。

 取材の第一線は若手記者が多いとは言え、こんないい加減な記者会見を終えて帰ってきた記者に対して、デスクや先輩記者は何も言わないのだろうか。

 テレビドラマで、エリートを自称する社員が駄目社員の頭を指で小突きながら、こう言ったシーンを想い出した。

   「お前のここに入っているのは、カニ味噌か?

 そう言えば、高浜の名産は、「越前がに」だ【日本の郷文化 高浜町の名産物】。

 なお、「カニ味噌」発言は、発言者の側は気の利いた冗談のつもりであったとしても、客観的にはパワハラ発言であることは言うまでもない。

 最後に、マスコミの能力に疑問を持っている人も、マスコミを全面的に信頼している人も、【マスコミの能力に関する、これまでの記事】を、ぜひ、読んでほしい。

----- 追記 2019.9.28 -------------------------------------------------------------------

 冒頭の図では、関電幹部が受け取ったのは、1.8億円となっている【関電会長ら6人に1億8000万円 福井・高浜町元助役から 原発マネー還流か 毎日新聞 2019.9.27 01:07 最終更新 12:39】。

 他方、昨日11時からの記者会見で明らかにされた金額は、3.2億円である【【速報】関電会長らに3億2000万円 「深くおわび」FNN PRIME 2019.9.27 11:51】。

 時系列を見ると、こうなる。

  01:07 毎日新聞   独自取材に基づき、1.8億円の図を掲載
  11:51 FNN PRIME 記者会見に基づき、3.2億円と報道
  12:39 毎日新聞   内容を更新したが、記者会見で発表された 3.2億円の情報は、反映されなかった。 

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長谷川君は中学3年から会計事務所に勤めて・・・

 今日は趣を変えて、岐阜新聞の【史上最年少16歳で公認会計士合格 岐阜市の長谷川君 2010年11月16日】という記事を私が読んだときに考えたことを追体験していただこう。

長谷川君は中学3年から会計事務所に勤めて


 中学3年から会計事務所に勤めるというのは、どういうことなんだろう?父親か親戚の会計事務所を手伝っていたのか?

 こんな疑問を抱きながら、次を読む。

長谷川君は中学3年から会計事務所に勤めていた父親


 なんだ、会計事務所に勤めていたのは父親か。でも、じゃあ、「中学3年から」というのは、父親が中学3年から会計事務所に勤めていたということなのか?

 新たな疑問を抱きながら、次を読む。

長谷川君は中学3年から会計事務所に勤めていた父親の勧めで簿記の勉強を始めた。


 なんだ、「中学3年から」というのは、「勉強を始めた」時期のことなのか。
 
 では、途中で上記のような疑問を抱かせないような文にするには、どうすればいいだろう。 

長谷川君は、中学3年から会計事務所に勤めていた父親の勧めで簿記の勉強を始めた。


 長谷川君が会計事務所に勤めていた、という誤解を防止するには、「長谷川君は」のあとに読点「、」を入れればよい。そうすれば、「長谷川君は」に対応する述語は、「勤めていた」ではなく、もっと後ろにあることが分かる。

 けれども、こんなふうに「長谷川君は」に対応する述語が後ろにあることを予測しつつ読み進めるのは、結構なストレスになる。

 また、これでも、「中学3年から」というのは、父親が会計事務所に勤め始めた時期を指すようにも読める。

 では、こうすれば、どうだろう。
 

会計事務所に勤めていた父親の勧めで長谷川君は中学3年から簿記の勉強を始めた。


 誤読の余地はなくった。

 けれども、主語がなかなか出てこないのは、落ち着きが悪い。

 誤読の余地をなくし、かつ、落ち着きの悪さも解消するには、こうするしかない。
 

長谷川君は中学3年から簿記の勉強を始めた。というのも、会計事務所に勤めていた父親の勧めがあったからだ。


 元の文を二つの単文に分ければ、このように、自ずと分かりやすくなる。

 ★ 主語述語に関連した記事は、こちら

「個人間融資」の説明  

 小学館の『NEWSポストセブン』というサイトに、【SNSでの「個人間融資」に騙された被害者たちの証言】という記事があった。

 引用が長くなるが、しっかり読んでほしい。

「無知だったんです。そもそも、お金がなければサークルを辞めたり親に相談すればよかった。でも焦ってしまい“ツイッターでならこっそり融資してもらえる”と思い込んでしまった。10万円借りようとしたところ、身分証を送れ、バイト先を教えろなど言われて、言われるがままに従ってしまい…」(みずほさん)

 結論から言うと、みずほさんは金を借りることができなかった。みずほさんが接触した“融資アカウント”は、そもそも他人に金を貸したり融資するふりをして、女性たちに身分を全てあかさせた上で、裸の写真を送るよう要求したりして、最後は肉体関係を持たないと知人や学校、親にバラすとまで脅迫されたのである。


 問題なのは、一番最後の文だ。

みずほさんが接触した“融資アカウント”は、そもそも他人に金を貸したり融資するふりをして、女性たちに身分を全てあかさせた上で、裸の写真を送るよう要求したりして、最後は肉体関係を持たないと知人や学校、親にバラすとまで脅迫されたのである


 「“融資アカウント”は」という主語に対応する述語が、3箇所に出てくるのだが、その後に一転して「脅迫された」と受動態がでてくる。

 「脅迫された」というのは、「みずほさんは」が主語にならないと辻褄が合わない。

 元々のL主語「“融資アカウント”は」に合わせるなら、「脅迫された」ではなく、「脅迫した」でなければならない。

 貴社が、「脅迫された」と受動態を用いたのは、被害者側の視点を入れようとしてためだろうが、被害者側の視点を入れるなら、「脅迫して来た」とすればよい。

 これなら、主語と述語の対応の乱れもなく、かつ、記者の意図したであろう被害者側の視点も表現できる。

 いずれにせよ、一文が長くなり、その中に何箇所も述語が登場すると、書いているうちに主語が何だったかを忘れてしまい、このような混乱した表現になり勝ちである。これを確実に防ぐには、一文を短くするほかはない。

 最後の文の分かりにくさは、ここだけではない。

みずほさんが接触した“融資アカウント”は、そもそも他人に金を貸したり融資するふりをして、女性たちに身分を全てあかさせた上で、裸の写真を送るよう要求したりして、最後は肉体関係を持たないと知人や学校、親にバラすとまで脅迫されたのである。


 「金を貸したり融資するふりをして」とは、次のどちらの意味だろうか。

 【1】   【金を貸したり融資する】ふりをして

 【2】   金を貸したり【融資するふりをして】


 【1】であれば、金は貸さないのであり、【2】であれば、金を貸すこともある、ということになる。

 そもそも、「金を貸す」のも「融資する」のも法的には消費貸借であり、同じことである。ただ、「金を貸す」と言えば、個人間の少額の貸し借りが想起されるのに対して、「融資する」と言えば、銀行と企業の間の多額の貸し借りが想起される。

 【1】の意味なら、単に、「金を貸すふりをして」と書けば足りる。

 【2】の意味なら、「金を貸すふりをしたり、実際に貸したりして」と書けば紛れがない。

----- 追記 2019.7.17 -------------------------------------------------------------------

 最近はカラフルなグラフを載せることが多いため、今回のような文字だけの記事は、少し寂しく感じてしまう。

法科大学院か予備試験か  比較させないための「工夫」

 法科大学院離れを食い止めるため、大学院在学中の司法試験受験を認めることになりそうだ【朝日新聞 2019.3.13 法曹養成を2年短縮 法科大学院反発も 法案閣議決定】。

 記事の中で、制度を図解して対比している。

資格取得


 法科大学院経由で法曹資格を取得するには、現行で8年かかるところが、新制度だと6年になると書かれている。

 他方、法科大学院を経由せず、予備試験ルートを取る場合は、「人によって期間が変わる」と書かれている。

 法科大学院ルートでも、浪人、留年などがあるのだから、「人によって期間が変わる」のだが、予備試験ルートの場合にだけ、あえて、「人によって期間が変わる」と書いているのだ。狙いは、何だろうか。

 予備試験ルートの場合、予備試験は大卒でなくても受けられるため、大学の1年生から予備試験を受け、合格すれば、翌年は司法試験を受け、その後、1年の司法修習を受ければ法曹資格を得ることができる。

 そうすると、予備試験ルートの場合、「取得まで約3年」と書くべきことになる。

 だが、そんなことをすれば、法科大学院ルートは、予備試験ルートと比べると、圧倒的に無駄な時間を要することが明白になる。

 法科大学院の存続を願う朝日新聞社の意向が、このような解説図になったのだろうか。

 予備試験ルートの優位性を見えなくするための「工夫」は、「取得まで約3年」とすべきところを「人によって期間が変わる」と曖昧にした点だけではない。

 図を見ると、「法曹資格取得」の記載は、予備試験ルートと新制度の法科大学院ルートで、同じ高さのところに書いてある。

 その結果、なんとなく、新制度では、予備試験ルートと同じ年限で法曹資格を取得できるように思ってしまう。実際は、予備試験ルートの倍かかるのだが、こういった誤った印象が植え付けられるのだ。

 なお、現実には、大学の1年生で予備試験に合格するのは相当に困難であり、3年生で予備試験合格、4年生で司法試験合格、その後、1年間の司法修習で、法曹資格取得まで5年というのが、現実的なルートである。それでも、新制度の法科大学院ルートよりも、1年早い。

 もちろん、予備試験ルートでは、制度上は、個人の資質と努力次第で、「取得まで約3年」であることは間違いない。法科大学院ルートの場合、超人的な資質と超人的な努力をもってしても、新制度で「取得まで約6年」である。

 合理的に考えて、こんな回り道を選択する理由はない。

----- 追記 2019.3.15 -------------------------------------------------------------------

 法科大学院ルートが回り道であることが一目で分かるような解説図を書いてみた。

資格取得-2


 これなら、法科大学院ルートが、新制度でも、予備試験ルートの倍の時間がかかる、壮大な回り道であることが、一目で分かるだろう。

 元の解説図と比較できるよう、横に並べてみた。

資格取得  資格取得-2


 「法曹資格取得」の記載の位置が、そのために要する年限の長さに対応しているため、直感的に、予備試験ルートが半分の時間ですむことが見て取れるだろう。

 解説図は、このように、問題の本質を直感的に理解させるものでなければならないということだ。

無駄な装飾は分かりにくさの原因

 先日、NHKの「クローズアップ現代+」で【暴言に土下座! 深刻化するカスタマーハラスメント】という番組をやっていた。

 飲食店やスーパーでのサービスが悪いと言って暴言を吐いたりする「カスタマーハラスメント」が以前と比べて酷くなっているとのことである。

 動画サイトのdailymotionで番組を見ることができるのだが、その中で、店舗などの従業員8万人へのアンケートの結果の集計が掲載されていた。

カスハラ-1


 グラフの表題が「顧客から受けた”カスハラ”の内容別件数」となっているのだが、文字の背景がごちゃごちゃして読みにくく、中央の”カスハラ”が”カスハラー”のように見えてしまう。

 白っぽい縁取りをした文字を、縁取りと同じ明るさの背景と黒っぽいアンケート用紙の跨がったところに配置したのが原因である。

 背景を、全て縁取りと同じ色にしてしまえば、どれだけ見やすくなるのか、上下を比べてみてほしい。

カスハラ-2





根拠として十分かを検証する 「毎年20人前後しか通過できない狭き門」

 史上最年少棋士、藤井聡太四段の誕生以来、将棋関係の記事を目にすることが多くなった。今日も、【ネット将棋「謎の強豪」正体は藤井聡太 感動さえ与えた 朝日 2018.11.8】という記事があり、そこに、こんな一節があった。

日本将棋連盟のプロ棋士養成機関「奨励会」の入会試験は、全国の将棋の秀才が挑んでも、毎年20人前後しか通過できない狭き門だ。


 何の問題もない記事のように見えるだろうか。

 「全国の将棋の秀才が挑んでも、毎年20人前後しか通過できない狭き門だ。」というのだが、入会試験を受けるのが仮に25人程度だとしたら、8割が合格できるのであり、決して「狭き門」ではない。

 調べてみると、今年は、「関東は48人中20人、関西は30人中11人が合格した。」【岩手から2人、成るぞプロ棋士 同時に将棋奨励会合格 岩手日報 2018.8.25】ということで、4割弱の合格率である。

 もともと地元では、みな「天才少年」だったわけで、それでも4割弱しか合格できないということであれば、「狭き門」と言ってもいいかもしれない。

 ここから、話を抽象化する。

 一般に、事実Aと事実Bの双方が認められて初めて結論が導けるという場合があるが、事実Aだけを書いて、直ちに結論を導いている例が多いのである。

命題


 このような論理飛躍をしてしまう原因としては、以下の二とおりが考えられる。

【1】 事実Bは、自分にとっては当たり前のことなので省略してしまう。
     上記の記事

【2】 結論を導くのに事実Bが必要だと言うことを理解していない。
     具体例
       【オーケストラは理系のサークル活動?
       【マグネシウムは、41ミリグラム
       【原因は一つだけとは限らない

 【2】の間違いは、まともな論理的思考力があれば、冒しようのない間違いである。他方、【1】の間違いは、「自分が知っていることは誰でも知っている」と思いがちなため、注意しないと、誰でも、つい冒してしまい勝ちなものである。







 

  

左下から右上へ その2  医学部入試での男女差別

 医学部入試での男女差別が話題になっているが、東京医大だけでなく他の医大でも広く男女差別が行われていることが明らかになりつつある。その記事の中で、次のような図表が使われていた【合格基準に男女差、疑い 他の医学部、一部受験生優遇も 文科省調査 朝日 2018.10.17】。

合格判定-1


 どうも、見にくい。一般的には、左下から右上に行くほど数値が高くなるというのが常識だが、上の表では、そうなっていないのが原因だ。

 そこで、作り替えたのが、下の表だ。

合格判定-2


 【左下から右上へ】にも書いた。

 ところで、表の中に、「男女ともに合格」「男女とも不合格」となっている点で、何か感じるところはないだろうか。

 合格の場合は「ともに」、不合格の場合は「とも」となっているのだ。

 無頓着に不統一な表現になっているような気もしたのだが、考えているうちに、それなりに合理性があるような気がしてきた。

 合格は嬉しいことなので、喜びを分かち合うという点で「ともに」が馴染むし、他方、不合格は、そっけなく「とも」という方が馴染むような気がする。

 どっちにせよ、大差ないのであるが、日頃から、こういった微妙な違いについて自分なりに考える訓練をしておくことによって、より的確な文章が書けるようになるはずだ。


--- 追記 ---------------------------------------------------------------------

 素材にした表は、新聞の紙面に掲載されていたもので、ネットには載っていなかった。


米南部や中部にまたがる米国でも信仰心があつい住民の多い地域 バイブルベルト

 【(トランプの時代 2018中間選挙)「神の国」復興、トランプ氏に託す 支持する理由、福音派は 朝日 2018.10.14】という記事があり、トランプの支持者の多い「バイブルベルト」という地域の解説が載っていた。

バイブルベルト

 下の二行が少し見にくいが、書き出すと、こうなる。

  米南部や中部にまたがる米国でも信仰心があつい住民の多い地域。
    福音派などキリスト教保守派が社会や政治に強い影響力を持つ


 冒頭の「米南部」というのは、後ろに「米国」と出てくるのだから、単に「南部」でいいはずだ。

 また、「南部や中部にまたがる」というのは、直後の「米国」ではなく、もっと後ろの「地域」を修飾しているのだから、「米国」を修飾していると誤読されないよう、「、」を入れるべきである。このように、直後ではなく、離れた場所にある文節を修飾する場合に読点を用いるべきであることは、以前の記事【東京地裁で・・・】にも書いたとおりである。

 更に、なお、「信仰心があつい」というのは「信仰心が篤い」と書けは゛いいのにと思ったのだが、常用漢字表には「篤」について、「トク」の読みはあるが、「あつ(い)」の読みはなかった【文化庁 常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)】。

 けれども、常用漢字表は「現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安」に過ぎない。

 実際、同じ記事の中には「トランプ氏自身は敬虔(けいけん)ではない」という表現があり、そこでは常用漢字表に載っていない「虔」を使用しており、常用漢字表を「逸脱」しているのである。

 他方、[篤」は、漢字自体は常用漢字表に載っており、「あつ(い)」という読みが載っていないに過ぎないのだから、「虔」を用いるより、「逸脱の程度」は低いと言える。

 なお、常用漢字については、以前の記事【検察官・・・】でも触れている。また、ある漢字が常用漢字か否かを調べるには、【常用漢字チェッカー】という便利なサイトがある。

 結局、こう書くべきことになる。

南部や中部にまたがる、米国でも信仰心が篤い住民の多い地域



--- 追記 ---------------------------------------------------------------------
 上の文章の中に「書けは゛いいのに」という記載があるが、何か間延びした感じがしないだろうか。

 書いたときは気づかなかったのだが、見返してみて、何か変な感じがした。よく見ると、「ば」が「は」+「゛」の2文字になっていたのだ。ローマ字入力をしているので、こういったことは起こりようがないと思うのだが、現実に起きた以上、何か原因があるはずである。
 

もう1社じゃできない

先ほどの日経の見出しだ【日経 2018.8.22】。

原発もう1社じゃできない


 曖昧な表現である。

 【1】 原発、「もう1社」じゃできない 
 【2】 原発、もう、1社じゃできない「」 

 読んだ瞬間、原発事業に参加する企業を増やしたのだが、数が足りず、もう1社増えることになったのだが、それでも足りないので、このままでは事業ができない、ということかと思った。

 そう考えたのは、以前、日立によるイギリスへの原発輸出がリスクが大きすぎて難航しているという記事【テレ朝日news 日立が英への原発輸出で最終調整 撤退の可能性も(2018/05/01 17:16)】を読んだことがあったからだ。
 
 すこし、複雑で長くなるが、辛抱強く、読んでほしい。
 
 私は、日立の原発輸出の、その後の動きは知らなかったので、この記事を読んだ瞬間、私の知らないうちに、
   ・何社かが日立に協力をすることになった
   ・それでも足りず、日立が追加の協力を求めた
   ・そこで、1社が加わることになった
 というところまで、話が進んでいて、
 さらに、今回の報道
   ・日立は、それでも足りないので、事業を継続できないと言った
 ということになったのかと思ったのだ。

 だが、記事の中身を読むと、
 そもそも、日立の原発輸出の話ではなく、原発建設一般の話で、
  「もう1社」じゃできない  
    のではなく、
  もう、一社じゃできない
    という意味だった。

 日経の、見出しではなく、記事の中身での表現では、こういうことだ。
    「今となっては1社では事業を担えない」

 見出しは、「文脈」に頼れない。

 だから、見出しにおいては、文法的に色々と読める可能性を、徹底提起に排除しなければならない。このことは、以前の記事【消費者庁がインスタグラムで注意喚起】に書いた。

 なお、本日の記事の表現方法(改行の多さ)に違和感を持った方は、【意味の塊ごとに改行する -調書方式-】を参照されたい。







 
 

ニューヨーク、イリノイ、パラグアイ、カリフォルニア

 夕方のテレビで、守谷慧氏の納采の儀が行われたというニュースが流れていた。

 納采の儀と言えば、先日は、納采の儀が延期になった小室圭君が国際弁護士の資格をとるためにニューヨークのフォーダム大学ロースクールに入学するためにアメリカに旅立ったというニュースもあった。

 「国際弁護士」という肩書きは、ときおり耳にするが、そのような資格はない。

 日本国内で活動する「国際弁護士」として考えられるのは、次の二種類である。

 【1】日本の弁護士資格を有する者
    ・外国の弁護士資格「も」取得し、
    ・その外国の法律に関わる法律事務「も」行う

 【2】日本の弁護士資格を有しない者
    ・外国の弁護士資格「を」取得し、
    ・一定の条件の下に法務大臣の承認を得て、
    ・「外国法事務弁護士」として登録し、
    ・その外国の法律に関わる法律事務「のみ」を行う

 専ら日本法しか扱わない(扱えない、扱うつもりもない)私には縁のない世界なのだが、「外国法事務弁護士」について興味半分でネット検索したところ、【GOH FOREIGN LAW OFFICE】というサイトを見つけた。

 そのサイトの中で日本で活動する外国法事務弁護士の数について、次のように記されていた。

日本国内に約390名の外国法事務弁護士がいます。もっとも登録が多い国は、アメリカ合衆国、イギリス、中国、オーストラリアです。そして、日本の外国法事務弁護士約390名のうち、約360名(約90%)が東京の弁護士会に所属しています。東京を離れると、その数は一気に減ります。東京に次いで外弁の数が多いのは大阪で、10名の弁護士が大阪弁護士会に外弁として登録しています。


 続いて、原資格国について、こう記されている。

外弁は、自身が弁護士資格を取得し法務経験を積んだ国を指定しなければなりません。日本国内の約390名の外弁のうち、アメリカ合衆国だけを見ると、最も多いのがニューヨーク州(約110名)で、次いで多いのがカリフォルニア州(約50名)です。


 次いで、大阪弁護士会に所属する外国法事務弁護士の内訳についても、説明がある。

大阪弁護士会会員の外弁10名の原資格国の内訳は次のとおりです(中国4名、米国ニューヨーク州3名、米国イリノイ州1名、パラグアイ1名、米国カリフォルニア州1名)。

 
 問題は、国、州の順番だ。米国イリノイ州の次にパラグアイがくれば、米国は、それで終わりだと思う。ところが、次が、米国カリフォルニア州となっており、予測が覆される。

 人数の多い順に書くのなら、それは、それで一応の合理性があるのだが、パラグアイもカリフォルニア州も1名である。パラグアイを先にする理由はない。

 以前の記事【いりこ、ドンコ、鰹節、昆布】【慣習には逆らわない】にも書いたが、事物を列挙する場合には、必然的な順番というものがある。その順番を崩すと、読者はストレスを感じるし、時には誤解することもある。

 ところで、米国の州の名前が続いているのに、パラグアイをカリフォルニア州より先に書くのは極自然な流れである。ことさら、順番を崩したのは、何らかの考えがあってのことではないか。

 そう思いながら、このサイトの管理人のプロフィールが、【GOH FOREIGN LAW OFFICE スタッフ紹介】に書かれていた。
 

米国カリフォルニア州弁護士会登録


 自らの原資格国がカリフォルニア州だからこそ、一番最後にしたのだろう。

 なんという謙虚さか! と思ったのだが、そういえば、英語で自分を含む複数人を列挙する場合は、"○○,○○,○○ and I "と言うと習ったのを思い出した。

 最後に、冒頭のニュースに関して、念のため、ネット上の記事にリンクをしておく。

朝日新聞 2018.8.12 絢子さまと守谷慧さんが「納采の儀」 婚約が正式に成立
朝日 2018.8.7 小室圭さん米国留学へ出発 「いってらっしゃい」に無言


谷川九段と藤井七段の師匠が語る

 今朝のネット記事の見出しである【「将棋界のこれから」朝日 2018.7.28】。

谷川九段と藤井七段の師匠が語る


 谷川九段と藤井七段は兄弟弟子ではないが、そのことを分かっている人なら、何の疑問も抱かない見出しである。

 ところが、将棋の世界について全く知識のない人だと、谷川九段と藤井七段の共通の師匠が、弟子二人について語るのだと、誤解するかもしれない。

 誤解をなくすには、次のいずれかの表現にするしかない。

【1】 谷川九段と藤井七段の師匠とが語る
【2】 藤井七段の師匠と谷川九段が語る


 ただ、【1】だと、「谷川九段と藤井七段の師匠」まで読んだ時点では、谷川九段と藤井七段が兄弟弟子で、二人の共通の師匠」つまり一人の人のことを指しているように思えてしまう。

 その次の、「とが」を読んで、初めて、実は、「(谷川九段)+(藤井七段の師匠)」の二人を指していることが分かるのであり、②の方が、そのような「途中までの誤解」の余地もない点で優れている。

 将棋界の序列から言えば、谷川九段を先にすべきところなので、記者は、冒頭の表現をしてしまったのかも知れない。けれども、やはり、「分かりやすさが第一」である。

 優先順位は、常に、  分かりやすさ > その他の事情(格式・慣習・厳密さ・お洒落度・・・)  である。

 なお、どうしても谷川九段の名前を先に出したければ、こんな表現もある。

【3】 谷川九段が藤井七段の師匠と語る


 けれども、こうすると、二人が対等に語る、というのではなく、谷川九段が主体のように思われてしまう。

 抽象化すると、こういうことになる。

語る。 ・・ AB対等
語る。 ・・ Aが主体


全体を抽象化して整理すると、以下のようになる。

語る人-2





 

しゅうしょく先は、一つに絞る

セクハラで辞任した福田淳一・財務事務次官の事件に関する朝日の社説だ【2018.4.29 朝日社説】。

女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったと訴えている。


 「そのたびに」という修飾語が、「セクハラ行為があった」にかかるのか、「訴えている」にかかるのか、文法上は、決め手が無い。
 

① 女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったと訴えている。

②女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったと訴えている

  
 ②だと、たとえば、福田氏の部下によるセクハラ行為があったことを、その職員の上司である福田氏に会うたびに訴え、善処を求めた、という意味にもとれる。

 もちろん、真実は、福田氏に会うたびに(福田氏から)セクハラ行為があった、ということを(福田氏以外の誰かに)訴えた、ということであるから、②ではなく①である。

 このように、文法的には多義的でも、背景知識があれば、文脈から正しく読みとることができるのだが、読者の知識、理解力は多様であり、文法的にも、一義的であることが望ましい。本件では、次のようにすべきである。

① 女性社員の訴えによると、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったとのことである。

② 女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、セクハラ行為があったことを、そのたびに訴えている。


読者に「反対解釈」を期待してはならない

 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのに続いて、民法の成人年齢をはじめとして、様々な分野で年齢を引き下げる改正案が検討されているが、下記の図は、その改正案の解説である【朝日新聞 2018.1.7】。
成人-1

 分からないことはないのだが、★をつけた部分の記載が気にかかる。

 まず、最初の、契約に親の同意が必要か、という点だが、「改正案」では、「18歳未満は親の同意が必要」となっているが、現行法でも「18歳未満は親の同意が必要」であることに変わりはない。「18歳以上は親の同意が不要」にするのであれば、端的に、そう書けばいい。

 記者は、「18歳未満は・・・必要」ということは、反対解釈として、「18歳以上は・・・不要」ということだ、という思いで、この表現をしたのだろう。けれども、読者に「反対解釈」を期待してはならない。どう変わるのかということを、端的に表現すればいい。

 「反対解釈」で理解できないはずはない、というのなら、次の欄の「民事裁判を起こせる年齢」も、「18歳未満は代理人が必要」とすればいいのだろうが、そうはなっていない。記者が、あまり頓着していなかったことの証左である。

 次に、飲酒、喫煙ができるようになる年齢だが、改正案も現行法と同じく「20歳以上」となっている。要するに変更はないのだから、これも端的に「変更なし」と書いた方が分かりやすい。

成人-2


「九州、中国、四国、北海道」は「3.98%」

 つい先ほどの朝日放送の「キャスト」という番組で、日本原電が、本来なら廃炉費用として積み立て置くべき資金を原発の新設に流用していたと報じていた。この会社は、全国の電力会社が出資をしているとのことで、その出資割合が以下の図で示されていた。

出資-1

 最後の「九州・中国・四国・北海道」の「3.98%」というのが、4社合計の数字なのか、各社の数字なのか、判然としない。

 他社の数字を見ても、すぐには分からず、他社の数字を概算で合計してみた、すると、おおよそ、85%ということが分かった。結局、「3.98%」というのは、それぞれの会社の数字だということになる。

 そうであれば、最初から、次のように書いておけばいい。
出資-2

 「各」と記載するだけでも理解できるだろうが、元の表では、4社が、同じ青色の四角の中に配置されていたのを、分離することによって、直感的にも、合計ではなく、各社の数字なのだと分かるようにした。
--------------------------------------------------------------------------
 ここまで書いて、改めて、ネットで日本原電の株主構成を調べてみた。すると、私の推測は間違いで、4社併せて、3.98%ということのようだった【Wikipedia 日本原子力発電】。

 なぜ推測を間違ったのか。私の推測の過程を振り返ると、次のようになる。

 ① 「九州、中国、四国、北海道」の4社の合計は、4%弱か16%弱のいずれかである。
 ② 電力会社以外に株主はいない。
 ③ 上記①②から、他の6社の合計は、90%台半ばか、80%台半ばである。
 ④ 6社の合計は概算で、約85%である。
 ⑤ 上記③④から、6社の合計は、80%台半ばである。
 ⑥ ①②⑤から、4社の合計は16%弱、すなわち、3.98%というのは、各社の数字である。

 結局、②が私の思い込みで誤りだったのである。

 もちろん、④の概算を、もう少し精緻にしていたら、6社の合計は、85%強であり、裏を返すと、4社の合計が15%を超えることはないということになり、結果的に、②が誤りであることも自ずと分かったはずである。ところが、②の思い込みがあったが故に、そこまで精緻な概算をすることなく、ざっくりした計算で、誤った推論をしてしまった、というわけである。

「長田近年」裁判官

 今朝の新聞の人事欄である。左が、朝日のデジタルサイト、右が京都新聞である。
人事

 右側の京都新聞を先に読んだのだが、依願退官した裁判官の名前を「長田近年」と読んでしまった。すぐ下に「則」という文字があるので、改めて見直して、「田近年則」ということが分かった。

 私が「長田」と読んだ「長」は、「所長」の「長」だったのである。記事のはじめから順に読んでいけば、こんな誤解はあり得ないのだが、実際には、一字一字読んでいるわけではない。

 漢字かな混じり文の優れている点は、意味の塊が、視覚的にも塊になっているため、一瞬で意味がとれる点にあるのだが、塊として読む習慣が、誤解の原因にもなるのである。

 「長田」というのは、人の苗字として多いため、「長田」と読んでしまったのだ。他方、「田近」という苗字は珍しいため、「田近」が一塊に見えなかったのである。

 もし、最後の行の冒頭が、「長田近」でなく、「長金田」であれば、おそらく、「金田」と読んだことだろう。苗字としては、「金田」は多いが、「長金」という苗字は、お目にかかったことはないからである。

 こんなふうに、同じような書き方でも、誤解しやすい場合と、誤解しにくい場合があるのだが、そもそも、「金沢地、家裁所長」という部分を、朝日のように括弧で括っていれば、名前の部分と明確に分離され、誤解のしようはなかったのである。

 京都新聞も、「東京高裁判事」の方は括弧で括っていたのだから、「金沢地、家裁所長」も括弧で括ればよかったのだが、おそらく、前者は、裁判官の身分が二つ並ぶため、元の地位を括弧に入れようという配慮が働いたのに対し、後者は、「依頼退官」ということで、そのような配慮は不要、と考えたのだろう。

 けれども、このような中途半端な「配慮」が、誤解を生む原因になったのである。

 裁判官の身分に止まる場合であれ、身分を失う場合であれ、一律に、元の地位を括弧に括ればよかったのである。

 さらに、京都新聞の場合、「金沢地、家裁所長」の読点「、」が不要である。朝日のように「金沢地家裁所長」で足りるのである。意味の上では、【金沢】【地・家】【裁】【所長】という括りになるのだが、真ん中の【地・家】の中の区切りに「、」を使ってしまったために、【金沢地】【家裁所長】のように読めてしまうのである。

  本日の要点  

   漢字の連続は避ける。 括弧、スペース、かな、記号などを用いる。 

マグネシウムは、41ミリグラム

 先ほどのテレビ【NHK「あさイチ」】で、「この夏のスーパーフード」として、ピタヤ(ドラゴンフルーツ)が紹介されていた。

 番組の冒頭で、マグネシウムや、ビタミンB1といった栄養素が、ピタヤ100グラムに、どれだけ含まれているかという表が画面に映し出され、ピタヤには、こんなに豊富に栄養素が含まれているという説明があった。

 説明のパネルに「マグネシウム 41ミリグラム」と書かれているのを見て、ゲストのタレントは、「本当に凄いですね」と感心していたのだが、私には、何が「凄い」のか、さっぱり分からなかった。

 そもそも、マグネシウム41ミリグラムと言われたところで、栄養士ではない普通の人間には、それが、どの程度のものなのか、皆目、見当がつかないはずである。

 調べてみると、1日当たり300ミリグラムというのが、厚労省が推奨している標準的な摂取量ということだった【マグネシウムの食事摂取基準】。

 また、ピタヤ1個あたりの可食部は約260グラムだそうで、そうすると、1個あたりのマグネシウム含有量は、約100ミリグラムということになる【カロリーSlism ドラゴンフルーツ】。

 結局、ピタヤ1個で、1日のマグネシウム必要量の3分の1を賄える、という計算になる。

 これだけの情報を踏まえて、初めて、「凄い!」と言えるのであって、41ミリグラムという情報だけで「凄い!」と言える人は、日々、感動することばかりで、さぞ精神的に充実した生活を送っているのだろうと羨ましく思えてくる。

 他方で、こんな断片的な情報だけで、さも凄いことのように感動している光景を見ていると、自分だけ感動の渦の中で取り残されているような気がして、少し寂しい気持ちになってくる。

 60年も前に、始まって間もないテレビ放送について、大宅壮一が、「1億総白痴化」と喝破した【Wikipedia「一億総白痴化」】のが、今さらながら的確な指摘であったと実感する。

 朝の忙しい時間帯に家事の合間にテレビを見ている人を相手にしている以上、きちんと論理立てた説明などしていられないというのが番組製作者の言い分なのかも知れない.。けれども、客観的には日々、視聴者から思考力を奪い取る結果となっているのであり、それで本当に心から満足できているのだろうか。

いりこ、ドンコ、鰹節、昆布

 水曜の朝日新聞の夕刊に、「黒木瞳のひみつのHちゃん」というエッセーがある。先日の【結婚生活=食べること】という題名の記事の冒頭に、次の一節があった。

最近、ダシをとるのにハマっている。大きなボウルにたっぷり水を入れて、いりこ、ドンコ、鰹(かつお)節、昆布をどさりと入れる。

 
 いりこ、鰹節という魚を素材とした出汁の材料が出てきたので、その2つに挟まれた「ドンコ」というのも何かの魚に由来するものと考えた。だが、何のことか分からず、ネットで調べてみた。

 【Wikipedia 「ドンコ」】によると、ハゼの仲間に、そういう魚がいることが分かった。だが、記事を読んでいっても、出汁をとるのに使われるということは書かれていない。

 そこで、記事では、何か全く別の「ドンコ」を指しているのではないか、と思いを巡らした。ネットで調べている内に、「かさが開かないうちに採取した椎茸を干して作った干し椎茸」を指すのだと分かった【生活環境研究所ブログ‐食のあれこれ‐】。

 そういえば、干し椎茸のことを「ドンコ」と言うのを聞いた記憶は微かにあった。
 
 ただ、記事を読んだときは、そんな記憶はどこかに行っていたので、いりこ、鰹節に挟まれた「ドンコ」は、魚に違いないと思い込んだのである。

 これが、たとえば、【いりこ】【鰹節】【昆布】【ドンコ】となっていたら、魚が並んで、次に、海草が来たのであるから、次の「ドンコ」も海草か、陸の植物か、という推定が働く。そういう目で読めば、私の微かな「ドンコ」に関する記憶も呼び起こされて、干し椎茸のことだと分かったはずである。

 このように、いくつかの単語を並べて書く場合、無頓着に並べるのではなく、同じ種類のものは、まとめて書き、種として遠いものは離して書く、ということが、誤解を避けるには必要だ、ということである。

 そう考えると、【いりこ】【ドンコ】【鰹節】【昆布】は、【いりこ】【鰹節】【ドンコ】【昆布】でもだめで、【いりこ】【鰹節】【昆布】【ドンコ】でなければならないのである。

 他に具体例を挙げると、出版社系の週刊誌を列挙する場合は、「文春、新潮、現代、ポスト」とすべきであって、「新潮、ポスト、文春、現代」とすべきではない、ということである。

 旧ソ連に属した国を、4つ列挙する場合でも、「ベラルーシ、ウクライナ、キルギスタン、トルクメニスタン」なら分かりやすいが、これが、「ベラルーシ、キルギスタン、トルクメニスタン、ウクライナ」だと、若干の違和感があり、誤解のもととなる。

 いささか寂しくなった家電業界であるが、「松下、サンヨー、シャープ、東芝、日立、日本電気」なら、しっくり来るが、「松下、東芝、日立、サンヨー、日本電気、シャープ」だと、混乱する。

 もちろん、列挙された単語について何の知識もない人が読むのであれば、混乱も何もないのであるが、多少なりとも、知識がある人の受取方を考えれば、列挙の順番には【必然性】があるのである。

グラデーションのフェイント

 今朝の京都新聞の記事だが、去年の国勢調査に基づく都道府県別の人口増減が地図で表示されていた。

人口増減率


 せっかく情報を図解しているのに、分かりにくい。その原因を考えてみよう。
 

【1】グラデーションのフェイント


 人口減の県を3グループにわけ、減少率の大きいものから、順に、濃い灰色、薄い灰色、白に近い灰色と、色分けされている。この流れで来ると、人口増の県は、真っ白、というのが自然であるが、予想に反して、実際は、黒になっている。

 記者の頭の中では、減少率の大小と灰色の濃淡を対応させたものの、人口増は、「人が密集している」というイメージから「黒」を用いてしまったのだろう。

 しかし、人口増の県に「黒」が相応しいのであれば、わずかに減少しただけの県は、「黒」より少し薄く、すなわち、「濃い灰色」にするのが自然だろう。そして、人口減が大きくなるにつれて、その灰色を薄くして行く、というのが自然の流れである。
 
 そのように表示されていれば、地図を見たとき、増加しているのが南関東ほか数県、減少が小幅に止まっているのが瀬戸内海の北側ほか数県という、大きな傾向が、より、理解しやすいのである。

 ところが、この地図ような色分けだと、南関東と瀬戸内沿岸とが人口増減に関して対称的な動きをしているかのような誤ったイメージを植え付けてしまうのである。
 

【2】減少が大きいものが上になっている


 この図の凡例(人口増減の区分と色分けの対応を示した表)では、人口減少が大きいものを上に、人口増のものを下に表示しているが、これは直感的な上下関係と相反している。「増加」の方が肯定的なイメージがあるのだから、「増加」を上に持ってくるのが自然なのである。
 

【3】グラデーションの範囲が狭い


 この図で、人口増の県は「黒」と書いたが、厳密には、「黒」よりも若干薄い。分かりやすく、真っ黒を、100、真っ白を、0(ゼロ)とした場合、この図で使われている黒の濃さを数値で表せば、80、60、40、20といったところである。他方、両極を真っ黒と真っ白にすれば、100、67、33、0、となり、それぞれの色の数値の差は、20だったのが33となり、見た目で、容易に区別できるようになる。

 特に、香川県のように面積が狭い県だと、色の濃さを的確に認識することは困難なので、40か60か、という判断は困難であるが、33か67かということであれば、面積が狭くても、識別は、さほど困難ではない。

 同じく、東京都の場合も、80か60かという識別は困難だが、100か67かということは、容易に判断できる。

以上で指摘した問題点を解消したのが、次の図で、人口増加県が真っ黒で、減少率が大きくなるほど、色が薄くなり、減少率が最大の県は真っ白になっており、上の図と比べて、各段に理解しやすくなっている。

人口増減率-改善2


 くどいようだが、元の図と改善例とを並べて表示するので、どれだけ分かりやすくなったのかを比較してみてほしい。

増減-比較-2


「酒類と外食を除く食品全般」に酒類は含まれる?

 昨日の新聞記事である。

自民、公明両党は12日、消費税率を10%に引き上げる際、現在の8%に据え置く軽減税率の対象品目について、酒類と外食を除く食品全般にすることで合意した。
                               【朝日 2015.12.13


 この表現だと、軽減税率の対象は、次の①、②のどちらなのかは、分からない。

 ① 酒類と「外食を除く食品全般」
 ② 「酒類と外食」を除く食品全般


 記事を読み進めていけば、②であることは分かる。②であることを明確にしたければ、たとえば、こんな表現なら誤解の余地はないだろう。

 ③ 酒類・外食を除く食品全般
 ④ 食品全般(酒類・外食を除く)


こうしてみると、結局、

 AとBを除くC

という構造が、意味をとりにくくしているようである。

では、同じ構造を持つ次の文は、どうだろうか。 

 ⑤ イギリス人と日本人を除く東洋人
 ⑥ 中国人と日本人を除く東洋人


 ⑤の場合、イギリス人は東洋人に含まれず、⑥の場合は、中国人は東洋人に含まれることは、明らかである。

 同じ「AとBを除くC」という構造を持つ上記2例であるが、意味が明確にとれるのは、イギリス人は、東洋人には含まれず、中国人は東洋人に含まれる、ということが、明白だからである。

 これに対して、冒頭の例の場合は、「酒類」というのが、言葉の意味から、「食品全般」に「含まれる」とも「含まれない」とも、どちらとも解されるため、「酒類と外食を除く食品全般」の意味が一義的に確定しないのである。

酒類と外食

 これを抽象化すると、こういうことになる。

AとBを除くC
 AがCに含まれるか含まれないかが明白な場合は、この表現で問題ない。
 AがCに含まれるか含まれないかが明白でない場合は、この表現では、理解できない。


 なお、冒頭の記事だが、讀賣新聞も、まったく同じ表現を用いていた【讀賣 2015.12.12】。

夫は妻のように歌が上手でない・・・括弧をつけても解消できない曖昧さ

 朝日新聞に「言葉の食感」というに連載があるが、そこに掲載されていた文例だ。

夫は妻のように歌が上手でない
           【言葉の食感 誤解の「予防注射」 2015.8.1


 筆者は、この文は3とおりに理解できるとして、意味を明確にするには、次のようにすればいいと解説している。
 

【1】 夫は妻と違って歌が下手だ。
【2】 夫は妻ほど歌が上手ではない
【3】 夫は妻と同じで歌が上手でない


 数式の場合、計算順序を一義的に明確にするため、括弧が用いられるが、文の場合も、修飾、被修飾の関係を一義的に明確にするために、括弧をつけることも考えられる。上記の【1】~【3】の意味になるように括弧をつけると、次のようになる。


【1】 夫は【妻のように歌が上手】でない
【2】 夫は【妻のように歌が上手】でない
【3】 夫は【妻のように】歌が上手でない


 括弧をつけて修飾・被修飾の関係が明確になると【3】の意味は明確になるのだが、【1】【2】は、修飾・被修飾の同関係では区別できない。

 つまり、この文が多義的なのは、修飾・被修飾といった文の構造の問題だけではないということだ。

 この文では、「のように」の意味が多義的なことに原因がある。

 否定の【ない】を除いた【妻のように歌が上手】の部分は、次の二とおりに意味がとれる。

【A】 妻と同じく、歌が上手
【B】 妻と同じ程度、歌が上手

 
 【A】においては、「のように」というのは、「上手か下手か」の二者択一において、妻と同じ、と言っているのに対し、【B】においては、「上手」にも何段階かあり、その「上手」さの「程度」において、妻と同じ、と言っているのである。
 
のように

「□」は、ロシアの「ロ」ではない

 ギリシャの国民投票で財政緊縮策の受入に反対するとの結果が出て、ギリシャがEUを離脱するのではないか話題になっているが、以下の図は、今朝の朝日新聞に載っていた図で、これまでのEUおよびユーロ圏の拡大を示したものである。
 
ユーロ拡大

 この図で引っかかったのは、右上の「ユーロ導入国」のしたの丸括弧の中の□である。たまたま、地図上では、ロシアの場所にあるので「ロシア」の「ロ」かとも思ったのだが、そんなはずはない。ついで、記号としての四角形かと思ったのだが、各国の地図には、そのような四角形は存在しない。そのうち、□の辺が微妙に太くなっていることに気づき、改めて地図に目をやると、国の境界が太く記されているのに気づいた。
 
 ここまで来て、ようやく、□は、ユーロ導入国と非導入国の境界を太い黒の線で区切るということを示すものだということが分かった。

 私が、そのことをすぐに理解できなかった原因は、次の2点である。
 ①口の線の色が黒で、海岸線を示す灰色との対比が明確でなかったこと
 ②形が、正方形で、実際の境界のような細かな出入りのある曲線とは結びつかなかったこと

 だとすると、改善案は、必然的に、以下のとおりとなる
 ①□の線、ユーロ圏の境界の線を、ともに、赤にする。
 ②□ではなく、歪んだ曲線で囲まれた形を用いる。

 おそらく、①だけで、十分と思われる。

水産物の輸出額が特産のリンゴと並ぶほど盛んな青森県

水産物の輸出額が特産のリンゴと並ぶほど盛んな青森県
                                           【朝日新聞2013.9.6


 一見、どこが分かりにくいのか、と言われそうだが、じっくり読んでほしい。

 「盛んな」の主語は何だろう。「輸出額」ではないはずだ。主語として相応しいのは「水産業」である。

 では、どう書き直せばいいのか。

 水産物の輸出額が特産のリンゴと並ぶほど水産業が盛んな青森県

文法的には主語述語が対応して完璧なのだが、何となく、くどく感じてしまう。日本は英語と違って主語がない文も通常、使われているのだから、原文のままでもいいではないか、という意見も傾聴に値する。

 
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 玉石混淆の情報が溢れる社会の中で、効率よく、的確に、情報を取得し、提供するには、どうすればいいのか、ということを常に考えています。

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 このブログは、「時間泥棒」を立派に更生させることを目的として開設したものです。

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